曖昧さ回避
- もしかして→いかりやビオランテ
概要
(花獣形態)
体 長:85m
体 重:6~10万t
(植獣形態)
体 長:120m
体 重:20万t
遺伝子工学の権威とされる白神博士によって生み出された植物怪獣。
博士はG細胞を巡るテロによって失った愛娘の英理加(えりか)の細胞を生前に彼女が育てていた薔薇に組み込んで保存していたのだが、そのケージがゴジラ復活の影響で起こった地震で破損、薔薇が枯死の危機に陥ったことから「永遠の命を持つ植物」を生み出そうと考え、博士は政府にかねてから要請されていた核反応を無力化する抗核エネルギーバクテリア製造の条件として不死身の生命力を持つG細胞を借り受け、その薔薇の細胞とG細胞を融合させた。しかし、次第にG細胞は薔薇の遺伝子を侵食して急激な自己進化を始め、その結果誕生したのがこのビオランテである。
博士曰く「ビオランテには人間の魂も宿っている」とし、最初こそ英理加の心を保って比較的穏やかであったが、次第に心を失い凶暴化してしまう。
大きさ・重量ともにそれまでに登場したゴジラ怪獣の中では最大級を誇る。
巨大な薔薇の花そのもののような外観をした花獣形態(かじゅうけいたい)と動物的な要素が強くなった植獣形態(しょくじゅうけいたい)という二通りの姿を持ち、花獣形態が芦ノ湖でゴジラの放射能熱線に粉砕されたのち、そのエネルギーを吸収して植獣形態へと自己進化を遂げた。
植獣形態は頭足類の脚のような複数の触手(これを用いる事で植物の姿でありながら走ることができる)と、ゴジラに似た鰐を思わせる大顎を備えた姿をしており、既に英理加の意思は殆ど掻き消えてしまっている。
劇中では「両者は同じ生物だ。片方が動物、片方が植物というだけだ」と言及されており、いわば植物版ゴジラと言ってよい。もし分類があるのなら「バラ科バラ属亜種(薔薇)・爬虫類単弓もしくは非鳥類型恐竜系(ゴジラ)・哺乳類霊長目亜種(英理加)」とでもいうべきか(劇中ではキメラの一言で済ませている)。
主な武器は体から伸びている無数の蔓。
この蔓を器用に使ってムチのように打ちすえたり、相手の体を貫いたり、絡み付けて締め上げるなどの攻撃を行う。中には先端がハエトリグサにも似た顎になっているものもあり、これによって相手に噛み付くこともできるほか、その口から黄色い消化液を吐きかけることもでき、多彩な攻撃を仕掛けてゴジラを手こずらせた。
また、植獣形態ではこの消化液に似た「放射樹液」なる武器を獲得しており、その巨大な口からゴジラ目掛けて噴射、ゴジラの強固な皮膚から白煙を立ち昇らせた。
植獣形態への変態後は防御力もかなりの向上を果たしていたようで、花獣形態時ではゴジラの熱線を受けて劣勢に追い込まれていたのに比べ、ゴジラの熱線を何発受けても怯むことなく戦闘を続けており、明確にダメージを受けたのは大きく口を開いたところを狙われ、体内に撃ち込まれた一発のみであった(そのためか、公開当時の出版物の中には「ゴジラの熱線に耐える身体を持つ」と紹介されたものがある)。
※ただしゴジラの側にも対植獣形態時には伊豆大島の三原山から目覚めてから一切の放射性物質を摂取出来ていない上に花獣形態との戦闘による消耗+抗核エネルギーバクテリアを活性化させるためのメーサー部隊とTC(サンダー・コントロール)システムの影響を受けた直後という事情があり、人間に置き換えるなら空腹+高熱を伴う重度の体調不良の状態で大きく熱線の威力が削がれていたことも要因の一つである。
東宝特撮史上、一匹で最も多くの操演スタッフを要した怪獣(移動シーンの撮影時はその巨体を引っ張るために20人ものスタッフを必要とした)。メイキング映像で、その巨体が動き回る様を見たスタッフも驚きの声を上げていたほど。
作中での活躍
白神の研究所で覚醒し、抗核エネルギーバクテリアを狙って侵入してきたテロリスト達を殺害して逃亡。芦ノ湖湖底で成長し、やがて巨大な薔薇の姿をした花獣形態として湖上に屹立する。小説版では接近してきた自衛隊のボートを蔓で襲う場面もあった(映画では蔓で桟橋の先端部分を破壊、駆けつけた自衛官を威嚇するのみに留まっている)。
その体を形成するG細胞に惹かれるかのようにゴジラが襲来し、一戦目に突入する。ゴジラに対しては多数の蔓で応戦するも、動くことができなかったことに加えて火に弱かったことが災いして放射能熱線を喰らって爆散するが、それで死ぬことはなく無数の金色の粒子となって空へと消えた(この時、すでに植獣形態への進化を示唆するような描写がある)。
その後、若狭湾にゴジラが進撃すると粒子のままで再び地上へと降り注ぎ、植獣形態へと姿を変えて復活する。その巨体と意外な器用さで今度はゴジラに対して一歩も引かず、互角に戦う強さを見せつけるが、最後には口腔内に撃ち込まれた熱線によって後頭部から背中にかけての部分を吹き飛ばされて大ダメージを蒙る。しかし、それと同時に抗核エネルギーバクテリアの効果によってゴジラもまた活動を停止。その間に英理加の細胞に宿っていた彼女の意思が目覚め、自ら金色の粒子として霧散して宇宙へと消えていった。
ゴジラに決定打を与えることは出来なかったものの、活動が抑制されたゴジラは覚醒した後そのまま海へと消えていった。
アニメ映画シリーズでの活躍
地球連合の欧州奪還部隊が海から揚陸した隙を突いて地中・海中から奇襲し、艦艇や戦車、戦闘機に大きな被害を与えた。発する酸も、ウォータージェットの様な高圧水流になっており、危険な怪獣であった。
最初は花獣形態で出現したが、マーカライトファープの光線攻撃で焼かれると即座に植獣形態に変態し、なおも暴れまわるも最期は爆薬を満載した地中戦車MOGERAの特攻により「薬は注射に限るぜ!」の捨て台詞と共に地下の弱点部位を貫かれ、最後は四方から火炎放射を受けて丸焼きにされ絶命した。
- パイロットは強化装甲服ジャガーJを着ていたため脱出・生還した。
同シリーズのゴジラはそもそもが“植物起源の怪獣”とされ、その形態と能力からこのビオランテもまたゴジラの近縁種ではないかという推測が立っている。
余談
- 3代目ゴジラは次回作にて即4代目に代替わりしてしまった為、ビオランテは3代目と戦った唯一の怪獣となった。
- 博士曰く「ビオランテとは北欧の神話に出てくる植物の精霊」と語っていたが、北欧神話にそんな名前の精霊は存在せず、実際の名前の由来は“秋の歌”というフランスの詩の一説にある“ヴィオロンのためいき”から来ているらしい。北欧神話ではなく「北欧"の"神話」と解釈すれば問題ないと言えなくもない。ちなみにヴィオロンの綴りは「Violon」だが、ビオランテの綴りは「Biollante」とされており、英語圏では「バイオランテ」と発音される。
- ちなみに“秋の歌”は第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦で使われた暗号としても有名だが、前述の『怪獣黙示録』で欧州奪還部隊が上陸しビオランテと戦闘を繰り広げたのがノルマンディーというオマージュともとれる一致がある。
- 原案の小林晋一郎の談によると、当初は「ハイブリドーマ (hybridoma) 」という名称を予定していた。これは「複数の細胞が融合してできた融合細胞」を指す医学用語だが、「医学用語をそのまま怪獣の名称にするのはどうか」と考えを改め、ビオランテと命名した。
- なお、その命名に関しては上記ヴィオロン=ヴィオラ=ビオラに、怪獣にはあまり使われない「テ」という文字を語尾に付け、「ビオランテ」とした、との事。綴りの「Biollante」から、生体工学を表す「Biotechnology」も連想させるが、こちらは偶然だったらしい。
- ビオランテがゴジラの前に現れたのは『ゴジラと融合しようとした』とのこと。(監督談)
- ファンの二次創作においてビオランテは女性として扱われる事が多いが、脚本を担当した小林の著作『形態学的怪獣論』の解説によれば「両性具有」とのことである。
- ゴジラシリーズで初めて細胞の調達から誕生まで完全に人工管理下の元で誕生している怪獣である(他にはドラット系キングギドラが該当。似た話としてデストロイアがあるが、あれはあくまで先カンブリア時代に生きていた微小生物が偶然オキシジェンデストロイヤーと接触したのであって人工管理下では無い)。
- 後のシリーズにおいては宇宙へと霧散したビオランテの細胞が元となり、スペースゴジラが誕生したという説が存在する。スペースゴジラの顔の造形はビオランテに近いものがあるため可能性は高い。ただ、それでは辻褄が合わないという見方もあり、劇中では『ゴジラvsモスラ』のラストでモスラが宇宙へと去っていった際に、付着していたG細胞が剥がれ落ちたものが元になったとも考えられている(もっとも、その辻褄の合わなささを突っ込むとビオランテの話題が劇中でもあることにツッコむ必要が出てきてしまうが)。
- 夜の嵐の中での両者の姿もはっきりとしない中での凄絶な最終決戦はマニアからの評価が非常に高い……が、リアルすぎる造形のためか子供受けはすこぶる悪かったようだ。
- ゴジラとの戦いは2回とも夜だったが、小説版では花獣形態は基本的に植物であるため夜間は光合成ができず、昼間に光合成で作ったエネルギーを使い果たしてしまい次第に劣勢になっていくという描写があった。一方植獣形態は映画以上にゴジラ細胞の特徴が強く出ており、ゴジラに負けじと放射熱線を吐くまでになっていた。
- 細胞の元になった娘の英理加の役者が沢口靖子のためか、一部では沢口がテレビに出る度にビオランテの名前が上がるなど役者ネタにされる事も多い(当然これを不快に思う人もいるのでネタの使用にはTPOを考える事)。ゴジラ列島震撼ではなぜかビオランテを作成した博士の娘の名前が沢口靖子を意識した見好靖子となっている。
- 没ネタとして、倒れたゴジラをツタが飲み込んで、そのまま光となって消えるという最期が考えられていた。ツタはアニメで描写する予定で、その一部始終はDVDの特典映像になっている。川北特技監督曰く、スタッフが唖然としているのを見てボツにしたそう(そのままではゴジラが負けてしまうからとも言っている)。また、植獣形態で口元にある膜の素材はコンドームなのだとか。
- 商品化に関して、バンダイよりS.H.MonsterArtsや、ムービーモンスターシリーズといった製品が発売されている。
- それ以前に、1990年代にアメリカのトレンドマスター社からもフィギュアが発売されていた。同社からはゴジラを初めとして、東宝怪獣のフィギュアを新規造詣で製造・販売していたが、ラインナップの中にビオランテも含まれていた。ただし、同シリーズのビオランテはアレンジが施され、両足が存在し直立している。このフィギュアを実際に見た東宝のビオランテ造形スタッフは、思わず唸ったとか(なお、トレンドマスター社は他にも「生頼範義ポスターバージョンのメカゴジラに、オリジナルの武装や装甲を付属させたフィギュア」など、独特の製品を数多く発売していた)。
- 原案の小林晋一郎のイメージしていたビオランテは、「花弁が広がった巨大な花で、中心部に人面が浮かんでいる」というもので、小林自身によるデザインも残されている。後にこれは、花弁の中にむき出しの歯が覗いているという形で花獣形態に取り入れられる。
- なお、「(動かない植物怪獣では)ゴジラと戦わせづらい」という点から、原案にはもう一体の怪獣「デューテリオス」が設定されていた。
※上記がデューテリオス。設定上は「ビオランテを作り出すにあたり、テストケースとして魚とネズミを合成し作り出された実験体が巨大化」したというもの。
- 「デューテリオス」の名は、「重水素」を意味する単語「デューテリウム」と、別の動物の細胞同士を「重ね合わせ製造した」事から命名。動けないビオランテの分、ゴジラと直接戦闘を繰り広げる予定だった。詳細はデューテリオスの項目を参照。
ゲームでの扱い
ゴジラ関連のゲームにおいても幾つか参戦している。
基本的にVSシリーズ初の怪獣であるため、ステージクリア型のゲームでは序盤に登場することが多く、敵としてはあまり強くないことがある。
特に『ゴジラ 怪獣大決戦』では当り判定が大きい、ほとんど移動できない、最強技の放射性樹液が飛び技でなく射程も短い等高い攻撃力を(悪い意味で)補って余りあるハンデを抱えており、間合いの外から飛び技で固められると手が出ず、事実上の最弱キャラクターという不遇を受けている。
『ゴジラ列島震撼』では体力は高いが攻撃、防御、自然回復能力が低いためあまり強くない。人間の理性が残っているらしいがGフォースにも攻撃してくる。
『ゴジラジェネレーションズ:マキシマムインパクト』では、芦ノ湖に植獣形態で出現しゴジラと戦うが、鈍い上に攻撃も地味で、いい的であった。
『ゴジラ-GODZILLA-』ではハードルートのステージ6で現れる。他の怪獣同様、楽にハメれる。
ただし、中には強いゲームもある。
『超ゴジラ』では中盤で登場しそこそこの強敵。体当たりを受けた場合に自動反撃する。
そして悪名高い「じゅえき攻撃」とかいうチート技で多くのプレイヤーに地獄を見せた。
『ゴジラ爆闘列伝』では花獣形態、植獣形態の両方が登場。どちらもNPCのため対戦で使用できない。避けにくい技やガードの削りとしても強い攻撃があったりと強敵として設定されている。さらに死亡時には原作再現の凝った演出になっている。
『ゴジラトレーディングバトル』でも花獣と植獣の両形態が登場。回復量が高く使用後に移動が可能な高性能な回復技を持つ。植獣形態では必殺技が増えステータスも強怪獣と並ぶため、さながら動く要塞になる。
『怪獣大乱闘』シリーズ、『GODZILLA UNLEASHED(Wii)』(日本未発売)では当たり判定が大きくスピードも遅いためCPUだと弱い方。しかし、体力が高く攻撃力も全怪獣中最高値であり、使い勝手のいい広範囲攻撃もあるためプレイヤーが使う分には割と強い。余談だが当ゲームのビオランテはジャンプができる。ちなみに『GODZILLA SAVE THE EARTH(邦題:地球最終決戦)』にも没データとして存在している。ライセンスの取得が間に合わず未登場になった模様。
PS4用ソフト『ゴジラvs』でもプレイアブルキャラクターとして参戦。長大な触手を活かした非常に長いリーチが持ち味であり、360度全周に対して広範囲多段攻撃を繰り出す突進が強力。街を素早く破壊し尽くすことができる。
pixivでの扱い
ゴジラや同シリーズの怪獣以外では極稀にだが、花または植物関連からか風見幽香や初春飾利との絡みが見かけられる。
その一方十六夜アキとは薔薇繋がりながら、2011年現在コラボ系の作品は見られない。
と、思いきや意外な展開が。
このキャプションから
これがイメレスされ
ファンからの希望
極稀にいかりやビオランテ側の作品がビオランテタグを単体で付けられ混同してます。
人によっては混同が迷惑または不快に感じることもありますので、作者さんの方にはこまめなタグ確認を、いかりや側の作品がビオランテタグに混じってることに気づいた方も、よろしければタグの削除、編集をお願いいたします。
関連イラスト
関連タグ
レオゴン…『帰ってきたウルトラマン』第34話に登場する怪獣。ビオランテと同じ植物と動物の融合怪獣であり、芦ノ湖に出現したという点が共通する。双方の作品の原案は、ともに同一人物が手掛けたという共通点もある。