概要
ジョセフ・ロビネット・バイデン・ジュニア(英語:Joseph Robinette Biden Jr.、1942年11月20日 – )は、アメリカ合衆国の政治家。第46代アメリカ合衆国大統領(任期:2021年1月20日 – 在任中)。ニューキャッスル郡議会議員、デラウェア州選出連邦上院議員、副大統領を歴任した。
経歴
1942年11月20日にペンシルべニア州スクラントンに誕生した。デラウェア大学で学んだ後、シラキュース大学で法務博士号を取得した。ロースクールを経て1969年に弁護士となり、1970年11月にデラウェア州のニューキャッスル郡議会議員に選出された。
1973年1月にデラウェア州選出の連邦上院議員に当選し、アメリカ史上5番目に若い上院議員となった。2009年1月まで連続6期も連邦上院議員を務め、外交・刑事司法・薬物問題などに取り組み、上院の司法委員会委員長、外交委員会委員長などを歴任した。
2009年1月にオバマ政権で副大統領を務めた後、2021年1月に大統領に就任した。
副大統領
2008年アメリカ合衆国大統領選挙で、民主党内での予備選挙撤退後、バラク・オバマ大統領候補から副大統領候補の指名を受ける。共和党のジョン・マケイン大統領候補が副大統領へ指名したサラ・ペイリンと比べて地味であると批判された人選だったが、黒人で若く、経験値の低いオバマに対して白人中産階級出身で、大ベテランのバイデンはその欠点を埋めることができると期待されての指名だったという。この人選は概ね成功と評価されており、ペイリンが重職に就く者としての資質を疑われるような言動を繰り返す中で無難に選挙戦をこなして勝利した。
2012年アメリカ合衆国大統領選挙では、オバマ大統領と共に再選して2期8年に渡って政権を支えることとなった。なお1回目の出馬の時、もしもの時のために上院議員選挙にも出馬していたが、結局当選したため、規定によってすぐに辞職している。
2020年アメリカ合衆国大統領選挙では、再選を目指すドナルド・トランプ大統領と争い、選挙において建国以来史上最多得票を記録した上で、選挙人の過半数を獲得する勝利を収めた。しかし、当のトランプが不正選挙であるとして敗北を一切認めなかったため、そのままバイデン陣営が勝利宣言を行うという異例の事態となった。勝者も敗者も互いの健闘を称え、融和ムードの中で勝利宣言が行われるという、それまでの慣例が破られた形である。
大統領
選挙の混乱が消えきらない中ではあったが、2021年1月20日に正式に大統領に就任した。閣僚は副大統領・長官ポスト16のうち女性(6人)や人種的マイノリティが11を占め、「アメリカ史上多様性に最も富んだ政権」を自称する。
ただし、カマラ・ハリス副大統領、ジェン・サキ大統領報道官、ピート・プティジェッジ運輸長官を除くと、ジャネット・イエレン財務長官を筆頭に60代から70代の実績あるベテランを中心とした安定感重視の顔ぶれとなり、閣僚の平均年齢は60歳を超える。
2020年より続く新型コロナウイルスに対しては科学的見地に基づいた対応を打ち出し、前任者のトランプとは一線を画す政策を採用。2兆2500億ドル規模の大規模な公共投資・大企業や超富裕層への増税・気候変動対策など、歴代でも最も左派色の強い国内政策を打ち出している。一方で政府調達でアメリカ製品を優先する「バイ・アメリカン」法については前政権と同様に運用を強化する方針である。
連邦上院議員時代より民主党右派"リベラル穏健派・中道左派の政治家とみなされていたが、大統領選挙での勝利が確定した後には同盟国である民主主義国家との連帯を重視。各諸問題に取り組む価値観外交を表明しており、覇権争いが続く中華人民共和国との対立姿勢を明確にしている。
2021年8月15日、アフガニスタンからのアメリカ軍の撤退を命じ実行されたことにより、9.11のテロに関わっていたアルカイダとビンラディンを庇っていたタリバンが支配地域を広め、遂にアフガニスタン全土を掌握した。
その結果、危惧されていた通り女性が仕事の場から追放され、空港の利用もままならなくなりパラリンピックに出場予定だった選手は出国できず開会式に間に合わなくなるなど混沌とした状況となっている。
必死に脱出しようとする国民達が飛行機に無理に乗り込もうとして、命を落としてしまう事故も発生し、更には撤収の目的の一つが「若い米兵の犠牲を防ぐ」という名目であったにも関わらず、撤収を強行したことによりその混乱を狙った26日のテロによって複数の米軍兵士が殺害される事態となった。
バイデン大統領は米軍撤退は正しいと主張しているが、これには「タリバンを野放しにした」と共和党はもちろんのこと民主党からでさえ批判が続出し、成功したと言い張る彼にアメリカ国民は冷淡な反応を示し支持率が急落する結果となった。
宗教への態度
中絶容認派(プロチョイス派)であり、この立場が理由でカトリック司祭からミサにおける聖体拝領を断られた事がある(CNN記事)。
枢機卿クラスの高位聖職者もこの聖餐の儀式にバイデンが受け入れられるべきで無いと主張している(ソース)。
2012年に同性婚肯定と合法化推進の立場を表明(ガーディアン紙記事)、2016年にはホワイトハウス職員の二人の男性の同性結婚式の立会人をつとめた(ハフポスト紙記事)。当選した暁には、LGBTQの権利を国際的にも拡大すると明言している(LGBTQ「平等法」、就任100日以内に成立目指す=バイデン氏)。
カトリックの公式見解においては、信徒である政治家はヴァチカンの公式見解に反する政策を支持してはならず(バチカン教理省『同性愛者間の結び付きに法的認知を与える提案についての諸考察』)、バイデンはこれに従っていない事になる。
しかし、個別の聖職者や保守派信徒の反発はともかく、ヴァチカン側やトップのローマ教皇が彼を名指しで直接制止しようとしたことは無い。
第266代ローマ教皇フランシスコの就任式(2013年)の際に行われたミサにはバイデンも参加している(ソース)。
また、カトリック教会も一枚岩ではなく、イエズス会などは人工妊娠中絶については一定の理解を示す立場をとっている。
余談
- 一家揃ってカトリック教徒である。カマラ・ハリスが黒人初・南アジア系初・女性初と、初めて尽くしの副大統領であるため隠れがちであるが、彼もまた史上最高齢かつジョン・F・ケネディ以来2人目のカトリック教徒・史上初のデラウェア州出身者の大統領でもある
- 良く言えばフランク、悪く言えば野暮で軽率なところがあり、トランプほどではないが失言癖や言い間違いが多い。重要法案が通った際、喜びのあまり公の場で思わず"This is a big fucking deal!(こいつぁクソでけぇ仕事だ!)"と極めて下品な単語を用いてしまったり、トランプとの討論会で発言を遮り続けるトランプに対して"Will you shut up, man?(兄ちゃん、黙ったらどうだ?)"と悪態をついたことも。また、トランプと同じくアルコール依存症で道を誤った近親者がいるという理由で全く酒を飲まないと公言している。
家族
1977年6月に結婚した妻のジル・バイデンは大学教授で、夫の大統領就任後も仕事を継続するとしている。なお2人の間に3人の子供がいる。