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「えーそもそもアルコール依存症とは不治の病気です。一生治りません。ぬか漬けきゅうりが生のきゅうりに戻れないのと同じです」(吾妻ひでお作『失踪日記』より)


概略編集

依存症の1つでアルコール)を飲まずにはいられなくなるもの。

一般には「アル中」という(「アルコール中毒」は少し意味が異なる)。


酒(アルコール)がもたらす効果により脳は快感や安定感を憶え、快感物質を放出する様になる。

キッチンドリンカー『現代病シリーズ』文芸思潮 一コマ漫画部門入選


酩酊による高揚感や浮遊感は、こうしたことから発せられるが、同時に脳機能も低下を起こし、それが日常的になると脳や内臓へのダメージが蓄積して行く。


その結果……

酒ッ!飲まずにはいられないッ!

酒!飲まずにはいられないッ!」が、脳髄に現われる「症状」として本人の精神力を容易く覆す形で延々と現われる状態に至る。元発言者・DIOの場合「身から出た錆とはいえ、家庭の事情から疎んでさえいた飲酒に手を伸ばす程追詰められる」という外因による所が大きいが、彼の場合もまた、1歩間違えば「辛いから飲む」から「病気故に飲む」というアルコール依存症段階に進む可能性があったといえる。


アルコール依存症はれっきとした病であり精神論でどうにかなるものではない。加えて1度かかってしまったら、心身が比較的安定するという意味での回復はしても完治はしない


解説編集

酒の飲み過ぎで最もダメージを負うのはアルコールを直接受けるや、消化の際にアルコール分解物質を解毒する肝臓であるが、依存状態まで来ると脳や心臓、腎臓へのダメージも深刻となる。


アルコールそのものの害だけでなく、酒に耽溺して栄養バランスが悪くなることでのビタミン欠乏による栄養失調もしばしばみられ、糖分の多い酒だと糖尿病などを併発することもある。さらに過度の飲酒は脳卒中系や心筋梗塞など循環器系の病気のリスクも上げる。手が震える、アルコールが切れると情緒不安定となるなど、重篤な状態になると日常生活さえ危うくなる。


そして違法薬物に手を出すなど、依存症を複数併発する場合も少なくない。


その他に鬱病などの精神の病に罹るリスクも高くなり、これらの病気で死亡したり自殺しやすくなる。また、周囲に暴力暴言を働く様になることも多く、家族の精神的負担も大きい。特に子供のいる家庭であると子供の情緒にも大きな悪影響を及ぼす。こうした被害にあった子供が成長して、トラウマから親同様の依存症となってしまう悪循環がしばしばである。


アルコール中毒の最も恐ろしいところは、酒を飲める人なら、誰でも直ぐなり得るというこの点に尽きる。


日本人を含む多くの民族文化において、酒は切っても切れない縁で結ばれた存在であり、多くの人は成人する前後から「付合い」で飲み始めることが多いが、アルコール依存症は飲酒開始年齢が若いほど短期間で発症するケースが多いという。明治 - 大正期の日本(1922年に未成年者飲酒禁止法が施行される前)は子供も飲酒する風習が蔓延しており、アルコール依存は現代より遥かに深刻な社会問題だった。


なお、全く酒を飲めない下戸の人の場合は、一口でも酒を口にすると途端に悪酔いするためアルコール依存にはならないが、下戸でも少しお酒を飲める人の場合は、アルコール依存となることがある(それでも少し飲み過ぎると悪酔いするので酒に強い人よりは依存症になりにくいが)。


予防編集

セルフコントロールが効かない状態が依存症であるため、陥らないようにすることは簡単ではない。しかし、「酒量が多いな」「自分は依存体質かもしれない」という自覚が多少なりともあるなら、飲み過ぎの癖をつけないよう、飲酒量の記録をつけたり肝臓の検査値を気にする習慣をつけたい(沖縄県が制作したスマホアプリもある。県外の人も利用可能)。


健康リスクを増やさないアルコール摂取量目安としては「1日20gまで、週に2日は休肝日」とされる。また、酒は手元に置かず、面倒でも「今日飲む分だけ」を購入したい。この量では物足りない、というのなら酒は他人と飲みに行くだけとして、家では飲まない様にするか、いっそのことアルコール依存になる前に断酒してしまうのも1つの手である。


もしなってしまったら編集

当事者本人は勿論、「家族や身近な人が依存症患者となってしまった」「毎日飲んでいて、暴言も酷くなり依存症かもしれない」という場合はくれぐれも自分達で抱え込まず、専門病院診断を速やかに仰ぎ、1日も早く治療に掛かること。


依存症の診断は基本的に精神科か心療内科で出す為、他科の病院では「依存症」の診断を出してくれないところも多くある(専門外のことに断定的な診断を出すことに躊躇するのが医師の考えでもあるので)。精神科でも病院により得意分野がまるきり異なる為、依存症問題に詳しい精神科病院をあたり相談することが大切。


入院しても治療は長期戦となり、本人にも相当の努力が必要となる。専門病院では依存症患者同士のミーティングなども行われ、酒に手を出してしまう己の弱さと向き合うプログラムも実施される。


治療プログラムを受けて退院してきてもまた酒に手を出してしまう「スリップ」も多くそれだけに素人判断は厳禁である。基本的には一度依存症になったら断酒を目指すしかなく、一生ものの戦いである。


かつて夫がアルコール依存症になりDVやモラハラの被害にあった西原理恵子も「子供とその家族は、この問題を決して自分達で抱えてはいけません。医者と専門家しか対応してはいけないんだという知識を身に付けて下さい」と断言している。


また、お笑い芸人・カンニング竹山は、アルコール依存症に陥った後輩を更生すべく自分の弟子に付け、「2年アルコールを我慢出来たらうちの事務所(サンミュージック)で雇って貰うよう掛け合う」と宣言する。そして折を見て監視しつつ、遂に約束通り2年の我慢を実現させ、事務所との契約に漕ぎつけさせた。


しかし竹山始め、歓迎ムードの事務所の面の前で後輩が突然号泣し始め、実はコッソリ酒を飲んでいたと告白。結局、契約は白紙化し、竹山も「止めようと思っても簡単に止められないものだ」とアルコール依存症の厄介さを痛感したという。


関連作品編集

自伝的小説編集

  • 酔いがさめたら、うちへ帰ろう。鴨志田穣
    • 映画化もされた。
  • 失点・イン・ザ・パーク ECD

エッセイ漫画編集


小説編集



アルコール依存症患者の著名人編集

芸能人や作家は付き合いで酒を飲む機会も多く、業界風土的にも過度の飲酒を容認する風土が強いため依存症になった患者は多い。


ミュージシャン系も昔は「打ち上げで酒の付合いをするのが当たり前」という風土が強かった(近年ではそれほどでもないが)ため依存症になった者が多い。依存症をようやく克服しても既に体がボロボロになってガンなどで死去に至った者もまた多い。


  • フレデリック・トランプ(実業家)/フレッド・トランプ・ジュニア(パイロット)
    • フレデリックはドナルド・トランプの祖父、フレッドは兄。2人ともアルコール依存症が原因の病気で死んだのを目の当たりにしたため、ドナルドは頑強な禁酒主義者となった。
  • ウィリアム・ホールデン(俳優)
    • 事業の不振、1950年代から続いた呼吸器疾患、若い恋人との関係などと悩みも多く、晩年に重度のアルコール依存症に悩まされ、1981年、自宅で泥酔状態で転倒し、家具に頭をぶつけ、出血したことが原因で63歳で失血死。遺体の発見も遅く、不慮の孤独死を遂げた。
  • 鴨志田穣
  • 遠野なぎこ(女優)
    • TV番組の企画で受診して診断が下った。
  • 三船敏郎
  • 福田充徳(お笑い芸人・チュートリアル
  • 横山やすし(お笑い芸人)
    • 依存症を悪化させて肝硬変を起こし51歳で死亡した。息子・木村一八も未成年時代に酒で暴行事件を起こしている。
  • 春一番(ものまねタレント)
    • 腎不全や肝硬変を起こし死亡。
  • 志村けん(コメディアン)
    • 30代の頃から毎晩酔い潰れるまで飲み続け晩年となってからも毎晩焼酎を空になるまで飲み続けていた。それに加えて毎日タバコを2箱吸うほどのヘビースモーカーでもあり、最終的にコロナウイルスに感染時には上記の不摂生が原因で免疫機能が低下し肺炎を発症、その翌日に死去。
  • 美空ひばり(歌手)
  • 尾崎豊(歌手)
    • 違法薬物摂取にも手を出し26歳の若さで死亡。
  • 石原裕次郎(俳優)
  • 吾妻ひでお(漫画家)
  • 赤塚不二夫(漫画家)
  • まんしゅうきつこ(漫画家)
  • 高浜寛(漫画家)
    • 同じく依存症だった元夫の回復を見て奮起し、治療を受けて克服。
  • 風間やんわり(漫画家)
    • 深酒をしては吐血を繰り返し、36歳の若さで急逝。
  • 4代目三遊亭小圓遊(落語家)
    • 1970年代後半辺りから笑点でのキザなキャラを演じ続けることに強いプレッシャーを感じるようになってからアルコール依存症に陥り、1980年に43歳の若さで他界。
  • 2代目春風亭梅橋(落語家)
    • 1970年代半ばからさらに酒量が増え、1984年に49歳で他界。
  • アダム・クレイトン(ミュージシャン、U2
  • エイミー・ワインハウス(R&B歌手)
    • 急性アルコール中毒で死亡。
  • 月乃光司(作家)
  • 中島らも(作家)
  • 葛西善蔵(小説家)
  • リッチー・サンボラ(ギタリスト、元ボン・ジョヴィ
  • ジェイムス・ヘットフィールド(メタリカ)
  • ダニエル・ラドクリフ(俳優)
  • スティーブン・キング(作家)
  • コリィ・テイラーSlipknot
  • イアン・ソープ(水泳選手)
  • デミ・ロヴァート(歌手)
  • 宮路オサム(演歌歌手)
  • USU(ラッパー)
  • TAIJI(元・XJAPAN
    • 酒でボロボロになり問題行動を頻発した末に自殺してしまう。
  • ECD(ラッパー)
    • 入院してアルコール依存症を克服したが十数年後に癌で他界。
  • エミネム(ラッパー)
    • 断酒、断薬物に成功し断酒会に参加しており、持ち曲「Not Afraid」で断酒の決意を表明している。
  • 森重樹一ZIGGY
    • 入院して依存症を克服し断酒。
  • 勝谷誠彦(コラムニスト)
  • 山口達也TOKIO
    • 2018年4月に起こした不祥事(未成年への強制わいせつ)と2020年9月の飲酒運転に関連して極めて可能性が高いと指摘されており、後に彼の実兄により診断を受けたことを公式に認めるコメントが出た。
  • 𠮷澤ひとみ
    • 正式な診断は不明であるが、2018年に起こした飲酒運転状況から可能性が指摘されている。
  • 寬仁親王(皇族)
    • 自著などで酒豪を自称しており、後に依存症に陥ったことを講演などで公表している。同病に貴賤は関係なしという好例といえる。1991年以降癌の発生と転移にも悩まされており、これらの健康障害から2012年、多臓器不全のため66歳で薨去。長命であった父に先立つ形となってしまった。
  • 永田カビ
    • 著書にて、寂しさを誤魔化すため1日中酒を飲んでいたら劇症肝炎を発症。その後も電車内で酒を飲んだり飲み歩きを止められない、飲み過ぎて何度もおねしょという典型的なアルコール依存症。
  • 清水泰次(ベーシスト、元怒髪天)
    • 長年に渡る酒癖とそれに纏わる素行不良により、怒髪天メンバーから再三再四説得を受けたものの生活を改められなかったため「これからも共にやって行くことは出来ない」として解雇される。
  • 潤(ギタリスト、DARELL
    • 依存症によりバンドの練習をサボるなどの問題行動が頻発し、メンバーにも虚言を繰り返した挙句連絡がつかなくなったためリーダーの藍により解雇が決断された。



フィクションにおける関連キャラ編集

創作においては演出や展開状の都合であったり、超人的な能力を持つものであったりするため改心してあっさりと寛解するケースも多い。勿論全く改心しない悪役や駄目人間のままであることも多い。




関連タグ編集

 飲酒 アルコール 依存症 依存 中毒 アルコール中毒 病気

アダルトチルドレン 禁酒法



外部リンク編集

新日本製薬運営サイト。依存症セルフチェックや対応する病院検索が可能。

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