廣井きくり
ひろいきくり
「一応言っておくけど 今 目の前にいる人は 君の闘う相手じゃないからね」
「敵を見誤るなよ」
ライブハウス「新宿FOLT」を活動拠点とするインディーズバンド「SICK HACK」のリーダーで、ベースボーカルを務めるカリスマバンドマン。物語の開始時点で年齢は25歳。
スピンオフ作品『廣井きくりの深酒日記』では主役を務める。
肩に流した三つ編みに大きなリボンを結んだガーリーなヘアスタイルと、常に酔いの回ったぐるぐる目の飄々(ひょうひょう)とした女性。キャミワンピースの上にスカジャンを羽織り、素足に下駄履きとパンチのある出で立ち。マニキュア・ペディキュアは黒で統一され、右手の甲には曼荼羅のようなタトゥーを入れている(※1)。
大学時代から交流のある伊地知星歌を「先輩」と呼び慕っている。
伊地知姉妹の家にはシャワーを借りに行くことも多いらしく、絡むたびに星歌はもちろん妹の伊地知虹夏からも辛辣な言葉をかけられている。
岩下志麻とは大学時代からの付き合いで、きくりが志麻をバンドに誘ったことが「SICK HACK結成」のきっかけである。
無類の酒好きで瓶・パック問わず何本もの酒をあおっているため常に陽気に酔っ払っており、当然に酒臭い。素面でいると襲ってくる将来の不安を酒で忘れることを「幸せスパイラル」と呼んでいる(※2)。
そんな酒浸りの生活を送っている影響もあって、普段は以下のように清々しいほどのダメ人間。言うまでもなく人望は底をついており、バンドメンバーからは困ったときも無視されることが多い。
- 「お酒とベースは私の命よりも大事」と言いながら、酒だけ抱えて愛用のベースを居酒屋に置き忘れる(どこの飲み屋に置き忘れたかを思い出せなかったことすらある)。
- 泥酔してライブハウスの機材などをブッ壊してはチケット代や物販での稼ぎを弁償に費やす。
- 風呂無しのボロアパート(名前は芳文荘)暮らしで他人の家にシャワーを借りに行く。サイクルが組まれており
志麻→イライザ→SIDEROSの誰か→銭湯(以下ループ)
となっている。(後に伊地知家も追加)
- 知り合ったばかりの高校生から電車賃を借り、しばらく返さない。
- 酔っ払った挙げ句に路上で寝込み、警察に保護される(日常茶飯事らしく、作中では警察官から「お前これで何度目だよ」と呆れられる場面も)。
- 高校の敷地内にカップ酒を持ち込み悪酔いする(見かねた星歌にシメられた)。
スピンオフ『廣井きくりの深酒日記』では以下のクズ及び貧乏エピソードも追加された。
- 泥酔して、意識が戻った時にどこか知らない土地で目覚める。
- 金欠で、酒どころか飯を調達する金がない際は新宿歌舞伎町に赴いて只酒を敢行する。(常連店では彼女の言動でそれを察した上で黙認。銀次郎も只酒中に彼女と交流した人が後日ライブに赴くからと黙認)
- 諸事情で財布がない。持ち合わせがない場合は銀次郎に泣いて詫びてたかる。
- バンドの経費を借りている節がある。
- 「税金は払っている」と言っているが、自宅の玄関にはお札に混じって『催促状』が張られている。
- バンドの経費で競艇にハマってしまう(最終的には大負けしたがきくり自身は身銭を切っていない)
- イライザ発案で山キャンした際、志麻とイライザはテントを立てたが、きくりだけ段ボールとブルーシート。(これには二人共ドン引き)
などが追加されている。
元々は根暗な陰キャだったらしく、自分を変えるためにバンドを始めたとのこと。
現在でも素面だと別人のように暗くおとなしくなり、周囲から本当に同一人物か疑われるほど。
特徴的なぐるぐる目も素面だと普通になっている。
あまりにもレアな状態のため、作者からも「SSR」呼ばわりされている。
スピンオフでは、「元々は星歌の所属していたバンドに憧れて大学の軽音部に入部したが、入部した時にはすでに星歌のバンドは解散していた」という経緯が掘り下げられ、「何なんすか、人を音楽の道に引っ張っといて」と星歌本人に向かって愚痴っている。
アル中だが運転免許は一応持っている。ただし本人が色々とアレなので車を運転する機会はほぼ皆無。
※1:タトゥーの描き込みはあったりなかったりで、タトゥーシール説もある。アニメ版では全面的に省略されているものの、OPアニメに同じモチーフが登場している。
※2:ひとりいわく「悲しい幸せ」「それ絶対身体に悪い」。アニメでは「○○依存の悪循環」のパロディで表現され、見た目のヤバさに拍車がかかっている。
バンドマンとして
愛機はYAMAHA TRB1004J。「スーパーウルトラ酒呑童子EX」と命名しており、三味線のバチのようなピックを操る独特の演奏スタイルで魅せる。
初対面かつオリジナル曲を演奏する後藤ひとりの演奏に完璧に合わせられるなど、ベーシストとしての確かな実力を持つ。溢れ出るカリスマ性でファンを魅了しているものの、緊張を紛らわせようと始めた本番前の飲酒が常態化した結果の泥酔ライブを基本としており、しばしば過激なパフォーマンスに走るため、FOLTの吉田店長にはしょっちゅう何かしらの設備を弁償している。また他のライブハウスでも行っているが、上述のせいで出禁になっている所がチラホラある。
星歌からは「洗練されたファンしかいない」「あんなのが売れたら世も末」と評されており、結束バンドのベーシスト・山田リョウも洗練されたファンの一人。リョウの証言ではステージから顔面を踏まれたらしい。もっとも、星歌からは「何が憧れてだよ……私らよりすげーバンドになりやがって」と内心認められてもいる。
とある日のライブを終え、打ち上げ後の曖昧な記憶の中でなぜか金沢八景へと辿り着いた彼女は(この辺りは『深酒日記』にて、横浜でのライブ後に花火大会の噂を聞いてノリでやって来た経緯が補完されている)、チケットノルマを抱えて途方に暮れていたギター少女・ひとりに介抱される。
自己紹介もそこそこに忘れてきたベースを回収しにひとりを連れ回しつつ、駆け出しバンドマンの苦労に共感したきくりは、恩返しも兼ねて客寄せに路上ライブを提案。
戸惑うひとりに「客は敵じゃない」と諭しながら、硬さの残るひとりのギターをリードし、予期せぬ観客の声援をきっかけに演奏へと没頭し始めた彼女の実力の片鱗を目にすると、「この子は絶対上がってくる」と確信する。
その後、ノルマの最後の1枚を買い取って颯爽と去る………かと思いきや、電車賃が足りずひとりから借金をして好印象を台無しにしていった。この時に「今度ライブ行った時返します」とは言ったものの結局返しておらず、後日星歌にバレて強制的に返済させられた。
とはいえ、ひとりにとってはある種の恩人であり、陰から支えてくれる人物でもある。
以降は結束バンドの初ライブに台風の中を駆けつけたり、文化祭でのライブ出演に怯えるひとりをメンバーもろともFOLTでのライブに招待したりと、目を掛けるように。
ちなみに、初登場回では初対面のひとりのことを一貫して「ひとりちゃん」と呼んでいたが、次の登場回でひとりとSTARRYで再会した時は「ぼっちちゃん」呼びになっている(原作・アニメとも)。この時までひとりと星歌はきくりが共通の知り合いであることを知らなかった(星歌は「お前ぼっちちゃん目当てで来たの?」と尋ねている)ため、きくりがどのような経緯でひとりのあだ名を知ったのかは不明。
元ネタは実在のバンドグループ「八十八ヶ所巡礼」のベースボーカル、マーガレット廣井。
SICK HACKの他のメンバーも八十八ヶ所巡礼のメンバーにちなんだネーミングとなっている。
きくりの酒乱キャラは彼の実話が元ネタであり、ライブ中一升瓶をラッパ飲みし「酒が残ってる状態でやるのがちょうどいいんですよ。」と発言している。
また酒カスエピソードとしての元ネタは原作担当編集の瀬古口氏であることが、担当が同じSAN値直葬!闇バイト 2巻あとがきにて明かされている。
初めて苗字が明らかになった13話の雑誌掲載時に限り「廣瀬」となっていた。
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