概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品「ドラえもん」のエピソードの一つ。TCプラス1巻収録。
「ドラえもんだらけ」ののび太版といえるエピソードであり、同時に「ドラえもん」の作中でよく見られる「過去改変」をテーマにしたエピソードでもある。
ストーリー
道端でジャイアンとスネ夫がポルシェ935ターボのラジコンで遊んでいた。しかしのび太はいつもとは違いそんなことはお構いなしに、「カップラーメン10個を一気に完食する」という夢を実現させようとしていた。
しかし5個目に差し掛かったところで満腹になってしまい、「こんなことになるならプラモデルを購入すればよかった」と後悔するのび太。
その様子を見ていたドラえもんが事情を聴くと、のび太曰く運よく親戚の叔父さんから小遣いとして1000円をもらい、これまでの所持金と合わせて1300円になったので、思いっきり使い果たそうとプラモデルとカップラーメン10個のどちらを購入するかでさんざん迷った末、カップラーメン10個を選んだのだという。
ドラえもんは呆れながらも「やったことは仕方ない。これからはしっかりして…」とのび太を諭すが、彼は「僕がそれほどバカだと思ってるの?お生憎さま!」と妙に自信満々な様子。
なぜなら、のび太はこの事態を既に想定しており、タイムマシンで1時間前に戻って1時間前の自分を説得し、プラモデルを購入させる秘策を考えていたのだ。それを聞いて慌てたドラえもんは 「過去を勝手に変えるのはいけないことなんだぞ!いいか!皆がてんでに自分に都合よく過去を変えようとしたらどうなる !? 歴史がめちゃめちゃにこんがらがっちゃうぞ!」 と、自分自身も過去に遡り歴史を変えようとしていることを全否定するような発言をしながらのび太を止めようとする。
しかしのび太は「大袈裟だな。歴史とラーメンと、なんの関係があるの?」と言いながらタイムマシンに乗り込む。ドラえもんは仕方なくのび太についていきつつ「歴史には勢いがあってちょっとやそっとじゃ変えられない」と説明するが、のび太はやはり「いいからいいから」と意に介さない。
ドラえもんたちが1時間前に到着すると、そこには小遣いをもらって上機嫌な1時間前ののび太がいた。そのまま1時間前ののび太は「プラモデルは子供っぽいからカップラーメンにしよう」と計画し、それを見た現在ののび太は過去の自分に「プラモデルにしろ、このバカ!」と言い放つ。
現在ののび太がカップラーメンを購入した顛末を話してプラモデルを購入するよう必死に説得すると、1時間前ののび太は納得してプラモデルを購入することを約束する。しかしドラえもんとのび太が現在に戻っても、過去が変わったはずなのにカップラーメンがプラモデルに変わることはなかった。
不審に思ったのび太は再びタイムマシンに乗り込み、先ほどより少し後の時間へ向かった。1時間前ののび太は既に買い物に出かけていたため、ママやしずかに自分の行方を尋ねたが手がかりは得られない。そんなシュールなやり取りの末にようやくスネ夫から 「のび太が模型店に入ろうとした時にもう1人ののび太が現れ、2人ののび太は口論の末に一緒にスーパーマーケットへ行った」 という情報を得て、のび太が慌ててスーパーへ向かうと、そこには2人ののび太がカップラーメンを購入しようとしている所だった。
1時間前ののび太の前に現れたもう1人ののび太は、現在よりさらに1時間後、すなわち「プラモデルを購入したのび太」だったのだ。1時間後ののび太曰く、ポルシェのプラモデルを購入したはいいが結局完成させられず見事に1300円を水の泡にしてしまい、「それならカップラーメンを購入した方がマシだ」と考えて過去の自分自身を翻意させるべく、プラモデルを購入する前の時間に来たという。
「いいかげんに作ったからだ!」と怒る現在ののび太に対し、1時間後ののび太が「カップラーメンならしまっておけば好きな時に食べられる」と説得するも、普段買えないような物が買いたい現在ののび太は「それじゃまとまった金を使う意味がない」と譲らない。
自分同士の争いに辟易した1時間前ののび太は「はっきりしてくれ!プラモ !? ラーメン !? どっち !? 」と怒り出すが話し合いは決裂し、その結果いつもの空き地でのび太同士の大喧嘩が始まってしまう。
「お、おい、よせ、やめろ!こんなことで自分同士が血を流すなんてくだらない」
1時間前ののび太も巻き添えにした大乱闘に発展するが、そこに新たに全身傷だらけになった3人ののび太が現れた。彼ら曰く喧嘩を止めるためにこの時間にやってきたらしい。
その後、のび太の家に戻った3人ののび太はドラえもんに「喧嘩はやめたけど、こんがらがって誰が何時間前に帰るのかわからなくなった。何もなかったことにして振り出しに戻せない?」と相談するが、ドラえもんは困惑しつつ「そりゃ無理だ。これだけもつれると、完全に元通りには戻せないね」と言う。
そうして3人ののび太はタイムマシンでそれぞれの時間へ戻っていったのだが、こんがらがってしまった歴史はやはり完全に元に戻ることはなく、最終的にのび太はカップラーメンのプラモデルを購入したことになってしまったのだ。のび太は疲れきった表情で「カップ麺のプラモなんて作っててもちっとも面白くない」とカップラーメンのプラモデルを作っていて、その様子をドラえもんは微笑みながら眺めていた。
余談
このエピソードは、のぶドラ版(1997年11月14日放送)及びわさドラ版(2011年6月17日放送)で1回ずつアニメ化されている。
のぶドラ版
基本的には原作通りの展開だが、こちらは3人ののび太がドラえもんに事情を説明する際に現在のドラえもんがタイムマシンで1時間前の世界に来て、結果として2人のドラえもんが3人ののび太から事情を聴く展開に変更されている。また過去ののび太が喧嘩に巻き込まれる流れも、原作とは異なり「喧嘩を始めた2つの未来ののび太を仲裁するために自ら介入する」形になっている。
2人のドラえもんがのび太の望みを叶えるべくどうすればいいかを考えていると、ある方法を思いつく。現在のドラえもんが「じゃ頼むよ」と言い、1時間前のドラえもんは「うまくやっておくよ」と言うと、そのまま現在のドラえもんは「1時間前の僕がうまくやってくれるはずだ」と言いながら、現在ののび太と1時間後ののび太を元の時間に送り届けることにする。
その後のオチは原作通りなのだが、ドラえもんが「どののび太くんの望みも叶えるとなると、こうするしかなくてさ」と言っているため、歴史がこんがらかった訳ではなく1時間前のドラえもんが3人ののび太の希望を叶えるよう行動した結果、中を取って1時間前ののび太がカップラーメンのプラモデルを購入する形になったという展開になっている。
わさドラ版
こちらはのび太がカップラーメンを購入することになる経緯が詳しく描写されている。叔父さんから小遣いをもらい、カップラーメンを購入しに向かったのび太だが、そこでジャイアンとスネ夫が「無敵ロボクラッシュキャノン」のおもちゃで遊んでいる所に遭遇する。そこで2人に「のび太にはお菓子のおまけがちょうどいいんじゃないの?」「対象年齢3歳以下」とからかわれて憤慨したのび太はカップラーメンとプラモデルのどちらを購入するかで悩んだ末、「プラモデルはすぐ飽きるし、お腹いっぱいにならない」という結論に達し、原作と同様にカップラーメンを購入することにする。その後は中盤までほぼ原作通りの展開で進むが、2つの未来ののび太が喧嘩になるシーンが曇り空の下強風が吹き荒れる中で「いつかはこうなる運命だったんだ…」「僕のくせに、僕に勝てるとでも思ってるのか…?」と妙にシリアスな雰囲気で、さらに3人ののび太の喧嘩を止めるべく傷だらけののび太3人が現れた所からの展開が変わっている。原作では傷だらけののび太たちはいつの間にかフェードアウトしているが、こちらはなんと喧嘩を止めた3人ののび太と一緒にのび太の家までついてきている。そのため、ドラえもんは合計6人ののび太から泣きつかれるというカオスな状況に追い込まれてしまう。
また、こんがらかった歴史を修正する際も、原作及びのぶドラ版ではタイムマシンを使用しているが、こちらは時間を巻き戻すことができるサイコロ形のひみつ道具・フリダシニモドルを使用している。
ドラえもんは「オプション機能を使用すれば、いじった過去を元通りにできる」とこの道具を使用し、6人もいたのび太をなんとか1人にすることに成功する。しかし過去が微妙に混ざり合ってしまったことで完全には元に戻らず、原作と同様にカップラーメンのプラモデルを購入したという歴史になってしまった。
まさかの製品化
作中に出てきたカップラーメンのプラモデルだが、2020年に日清食品の協力の元、バンダイからカップヌードルプラモデルが発売された。対象年齢15歳以上で価格は2420円。詳細はこちら。
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