雪走
ゆばしり
概要
麦わらの一味の剣士ロロノア・ゾロが、ローグタウン編からエニエス・ロビー編にかけて使用していた愛刀。世界に50本しかない“良業物”の一つで、拵は『黒漆太刀拵・乱刃・小丁字』。
一般的な刀と比較すると軽くて扱いやすいのが特徴。それでいて切れ味も鋭く、酒樽くらいなら簡単に輪切りにできるほどで、ゾロもウイスキーピークで初めて実戦に投入した際に「軽い⋯⋯!!いい刀だ⋯」と称賛している。そのスペックにゾロの剛腕と瞬発力が加わる事で斬られた敵がそのダメージに一瞬気付かないほどの高速の斬撃を繰り出した事もあった。
“偉大なる航路”に入って以降、ゾロの戦闘シーンの多さもあってか読者にはゾロの愛刀の一つとして認知され、十分な知名度を獲得していた。
入手の経緯
元々は“東の海”ローグタウンで武器屋『ARMS SHOP』を営むいっぽんマツが所有しており、商品として売りに出さず家宝として愛蔵していた自慢の一刀だった。
ある日、“偉大なる航路”に入る前に旅の準備を整えるため、麦わらの一味が島に上陸。このときゾロは先の戦いの中で喪失した二刀を補おうと、いっぽんマツの店を来訪した。
しかしたったの10万ベリーで二刀を購入しようとする彼をいっぽんマツは「素人」だと見下し、ぞんざいにジャンク品の積まれた店の角にあしらった。
(このときゾロの持つ“大業物”『和道一文字』を安金を積んで奪おうとするも、突然割り込んできたたしぎの熱弁により食い下がるという一幕があった)
そしてゾロは、ジャンク品の中に埋もれていた“業物”『三代鬼徹』を発見する。
たしぎの後押しもあり購入を決めかけたゾロに対し、いっぽんマツはその曰く付きの伝説を語って必死に購入を止めさせようとするが、当のゾロはその逸話を理解した上で気に入り「運試し」と称して放り投げた鬼徹に自身の腕を斬らせようとする。結果、鬼徹は不自然な軌道でゾロの腕をくぐり抜け、ゾロ自身も呪いを屈服させたとして購入を決意した。
腰を抜かしつつも一部始終を見届けたいっぽんマツは、その豪気な行動に彼を「一流の剣士」と見定め、ジャンク品から更に一刀を選ぼうとするゾロを呼び止め、店の奥に保管していた『雪走』を持ち出した。いっぽんマツ曰く「おれの店の最高の刀」。
手持ちもないのに“良業物”の名刀など買えないというゾロに、いっぽんマツは「さっきはダマそうとしてすまなかった」と謝罪しつつ「金はいい 貰ってやってくれ」「もちろん鬼徹の代金もいらねェ」と快く譲り、“偉大なる航路”に入る彼への餞となった。
(いっぽんマツの妻いっぽんウメは「ドケチのあんたが家宝まであげちまうとはね」と驚いていた)
喪失
政府に連行されたロビンを奪還するため乗り込んだエニエス・ロビー島での戦いの終盤、CP9司令官スパンダムがうっかり発令したバスターコールによって召喚された海軍本部の軍艦10隻が麦わらの一味を包囲する。CP9との戦いで疲弊しきっている中で、一味は一息つく間もなく海軍本部の腕利きの将兵たちを相手にすることになる。
しかし、誰も予想していなかった悲劇がゾロと雪走に襲い掛かった。
このときゾロは海軍本部大佐シュウと交戦する。初対面の敵の能力など知るはずもなく(加えて状況が状況だけあり焦燥していたとも思われる)、ゾロは躊躇いなく雪走でシュウに切りかかるが、触れるものを急速に酸化させるサビサビの実の能力者であるシュウに受け止められた雪走の刀身は、瞬く間に赤黒く錆びて朽ちてしまう。あまりに呆気なく破壊された(しかも当時のシュウは名前すら公表されず、ほとんどモブキャラ同然の扱いだった)ため、これに驚かされた読者も多かったようだ。
その後、ゾロは敵兵から奪った剣で応戦することで他の愛刀が破壊されることを防ぎ、駆けつけたゴーイングメリー号に乗り込んで窮地を脱することになるが、残念ながらボロボロになった雪走はもはや修復不可能であった。
そのためスリラーバークでの戦いは二刀流を強いられることになり、そこで対峙した将軍ゾンビのリューマに「貴方も三本もお持ちのようですが……」と言われた際には「一本折れてる」と返している。
エニエス・ロビーで敵兵のサーベルなり刀なりを奪って持ち帰っていれば間に合わせにはなったかもしれないが、ゾロの事なのでプライドが許さなかったのだろう。
いずれにせよ、三刀流には相応の自信と思い入れがあるようで「聞いたことありませんな!!曲芸ですか?ヨホホホ」と笑うリューマゾンビに「ーーー今 見せられねェのが残念だ」「その低い鼻っ柱でも折ってみせるのによ」と語っている。
外したままでは落ち着かなかったようだ。
※この時点の一味は空島から持ち帰った財宝を換金して、船の新調にかかった分を除いても1億ベリーを持っていたが、帰還後にルフィが大規模な宴を開いて盛大に散財してしまい、サウザンドサニー号を調査したペローナが「これがクロコダイルを倒した男の船か?」と訝しむほどほぼ素寒貧であった。
実際、ウォーターセブンにて店から追い出されるシーンがあり、当人も「やっぱダメか」とボヤいており、なまくらすら買えなかった可能性が高い。
スリラーバークで対峙した将軍ゾンビ・リューマとの激闘を経て新たな得物『秋水』を手に入れたゾロは、ついに雪走を完全に手放すことを決める。一連の戦いの後に意識を取り戻したゾロは、スリラーバークの墓地にてルンバー海賊団の墓を築いたブルックの許しを受け、その墓前に雪走を鞘ごと突き立てて供養した。この際のゾロは雪走に合掌しつつ黙祷を捧げており、彼がいかに雪走を大切に思っていたかを物語るシーンとなっている。