概要
Mac OS X(マックオーエステン)は、Apple Inc.が2001年からリリースMacintoshパソコン用のOSの旧呼称である。近年のバージョンについてはmacOSへ。OSの開発経緯などはこちらで記述する。
v10.6まではサーバー版がMac OS X Serverとして販売されていた。ただし、Mac OS Xの発売前(1999年〜2001年)にアップルから販売されていたMac OS X Server1.xは基本的に全くの別システムである(後述)。
特徴
[1996年]]にアップルが買収したNeXT社の技術をベースに、バージョン9まで続いたそれまでのClassicMacOSの後継として開発された。
UNIXベースとなり、比較的容易な移植でBSDやLinuxなど他のUNIX系OSで開発されたソフトウェア資産を使うことができる(Mac Portsというリポジトリサービスを使うのが一般的)。またWineという互換環境をインストールすれば制限はあるがWindows向けソフトウェアも一応使うことができる。IntelMacなら、Boot Campという機能を使ってWindowsそのものをインストールしてデュアルブートもできる。また、.net Frameworkランタイムmonoを導入すれば同FW準拠で書かれた大半のWindowsソフトは動作する。多言語対応に力を入れており、最初のバージョンから標準インストールで複数の言語がサポートされている。そのため、Classic Mac OSとは異なり言語別パッケージという概念がなく、同じバージョンならばどの国で買っても同じパッケージとなった。
また、OSの刷新に合わせて完全なプリエンプティブ・マルチタスクやメモリ保護を実装し、安定性は従来のClassic Mac OSとは比べものにならないほど向上した。ちなみにシステムエラー時に出てくる爆弾アイコンは廃止されている。
v10.4までのPowerPC版はClassic環境と呼ばれるClassic Mac OS互換機能を持っていた。
Mac OS Xの開発はNEXTSTEPに従来のMac OS(両者は全く異質なシステムである)を統合する形で進められた。1997~1998年ごろに開発されていたもの(コードネームRhapsody)は「Macっぽい見た目のNEXTSTEP」という具合だったが、開発者の支持を得られなかったため、実際に製品化されたMac OS Xは、両OSに由来するテクノロジーが深い部分まで密接に統合された全くの新システムとなった。
主なコンポーネント
現行のmacOSでは既に廃止されている機能は†(ダガー)を付けている。
NEXTSTEPから受け継いだ機能
- Darwinカーネル - Mach 3.0マイクロカーネルをハイブリッドカーネル化して実装。ドライバモデルはNEXTSTEPで採用されたObjective-CベースのDriverKitを機能限定版のC++で実装したI/OKitに置き換えている。
- BSDサブシステム - OSXのUNIX互換機能を担う。FreeBSDと密接な関係がある。
- Cocoaと開発環境 - Objective-Cベースのオブジェクト指向API。OSXのメインのAPIだが、従来のMacのToolbox APIとは全く異なる。iOSのAPIもこれである。JavaやPythonなどとの言語ブリッジも用意されており、後に開発言語にSwiftが加わった。
- Dock - 基本的に「Macらしさ」の色濃いOSXのGUIの中で、NeXT色を強く感じさせる部分。NEXTSTEPとMacOS Xに特有のGUI要素だったが、Windows7以降のWIndowsのタスクバーはこれに似た機能をそなえている。
- レインボーカーソル - Macユーザーにはおなじみの、処理待ち中にカーソルが虹色の丸になってクルクル回るあれ。Classic Mac OS時代は「腕時計」だった。
- プロパティリスト - オブジェクト直列化のためのプロトコル。ただし、フォーマットはNeXTと異なる。
- †NetInfo - ディレクトリサービス。v10.4で後継のOpen Directoryに置き換えられた。
Classic Mac OSから受け継いだ機能
- †Carbon - Classic Mac OSのToolbox API をOSX向けに再設計したもの。C/C++ベース。Cocoaの浸透により徐々にフェードアウトし、macOSの完全64ビット化に伴い廃された。
- Finder - デスクトップシェル。macOSの「顔」の部分。Classic Mac OS由来なので初期はCarbonベースだったが、v10.6でCocoaベースに作りなおされた。
- 画面上部固定のメニューバー - 初代Macから現在のmacOSまで、Macのアイデンティティとして脈々と受け継がれている。
- デスクトップ - NeXTにはデスクトップという概念が無く、Dockはこれを補うための要素であったと考えられる。
- †HFS+-Apple独自のファイルシステム(Mac OS拡張フォーマットともいう)。NEXTSTEP(というかUNIX)由来のファイルシステムであるUFSも初期バージョンからサポートしているがあまり使われず、v10.5でUFS でフォーマットされたボリュームにインストールできなくなった。v.10.13で後継のAPFSが実装された。
- †QuickTIme - Carbonベースのマルチメディア環境。v10.6のQuickTimeXを経て後継のAVFoundationに置き換えられた。
- AppleScript - OS標準のマクロ言語。後にCocoaフレームワークとのブリッジも用意された。
- †ATSUI - テキストのレイアウトエンジン。後に後継のCore Textに置き換えられた。
- †ことえり - インプットメソッド。
このほか、QuickDrawやリソースフォークなどもサポートされたが、基本的に従来のMacの機能を移植するために用意されたレガシーな機能であり、徐々に廃された。
完全に新規に開発された機能
- Quartz -PDFベースの描画エンジン。機能的にはほぼNeXTのDisplay PostScriptの上位互換だが、Classic Mac OS由来のQuickDrawを効率的にサポートするために新規に開発された。
バージョンの変遷
v10.8までのOS Xにはネコ科猛獣のコードネームが当てられていたが、v10.9以降はカリフォルニア州の地名がコードネームとしてつけられている。v10.2 Jaguarから(日本ではv10.3 Pantherから)は商品名にもなっている。
バージョン | コードネーム | バージョンの概要 |
---|---|---|
Public Beta | Siam | ベータ版だが開発者以外も有償で購入できた |
v10.0 | Cheetah | 開発環境のCD-ROMが付属 |
v10.1 | Puma | v10.0ユーザーには無料提供 |
v10.2 | Jaguar | このバージョン以降のコードネームは商品名でもある |
v10.3 | Panther | Safariが標準ブラウザに |
v10.4 | Tiger | このバージョンの途中からIntelに対応した |
v10.5 | Leopard | PowerPC対応の最後のバージョン |
v10.6 | Snow Leopard | 64ビットに本格対応。カーネルは32ビットのままである |
v10.7 | Lion | ダウンロード販売に移行 |
主要な付属アプリケーション
主要なユーティリティ
- Automator(操作の自動化)
- スクリプトエディタ
- ColorSync
- DigitalColor Meter
- FileVault(ホームディレクトリを暗号化)
- Grapher(グラフ計算機)
- VoiceOverユーティリティ(音声認識)
- アクティビティモニタ
- キーチェーンアクセス
- 移行アシスタント
- Time Machine