概要
プラント最高評議会議員である物理学者オーソン・ホワイトにより開発された特殊な装置。作中内外で「Nジャマー」と略されることもある。
自由中性子(原子エネルギー)の核分裂反応を無差別かつ半永久的に抑制する効果を持つ特殊なフィールドが展開されるため、フィールド内では原子力エネルギーが使用不能になる。さらに、副作用として電波の伝達が阻害されるため、電波を利用した長距離通信が使用できず、レーダー類もすべて撹乱される。なお、連合・ザフト両軍ではこの通信妨害効果を活用すべく、ほぼ全ての艦艇にNジャマーを搭載し、戦闘時に稼動させるのが定石となっており、その環境下で最も有効な兵器がMSという構図となっている。
ちなみにサイズはMSに積載可能なほど小型なものから衛星サイズまで、様々なものが存在する。
開発開始はC.E.60年代であり、MSとの併用による有視界戦闘を可能とする装置の一つとして開発が行われていた。
地球連合軍のMk5核弾頭ミサイルによるプラント・ユニウスセブン破壊行為「血のバレンタイン」事件への報復作戦「オペレーション・ウロボロス」によって、地球のほぼ全土に地中深く埋め込まれた。地球全土であらゆる核分裂反応が停止したため、原子力発電に依存していた地球連合国家はエネルギー不足となり市民の間では餓死者も続出し、餓死・失業等含めて約10億人の被害者を出した。
(現実でもそうであるが原子力発電は多くの利権が関わっており、約10億人の被害者のほとんどは経済的被害者であると思われる。)
このエネルギー危機はエイプリル・フール・クライシスと呼ばれている。
「オペレーション・ウロボロス」によって使用されたモデルは、地中数百メートルまで掘削して自己埋没する上、あらゆる遠隔操作に対するプロテクトがなされているため、敵に無力化される危険性は非常に低いどころか、打ち込んだザフトですら除去や回収は困難を極める。加えて、1基あたり3000kmの有効範囲を持ち、3基もあれば地球全域をカバー可能にもかかわらず大量に投下している。内蔵された動力源には寿命があるため効果は永久的ではないとはいえ、軍隊を支える社会を直接攻撃する近代兵器として機能し得るものであった。
なお、初投入されたのは「オペレーション・ウロボロス」ではなくC.E.70年2月22日の「世界樹攻防戦」である。
連合軍の核ミサイル攻撃とこの装置での報復作戦により、両者の溝は決定的となった。また、プラントは事前に友好姿勢を持つ反連合国家および中立国家(アフリカ共同体、汎ムスリム会議、大洋州連合、南アメリカ合衆国など)に対してエネルギー(を含む物資全般の)優先的輸出を表明することにより、連合の反プラント・プロパガンダを牽制していた。特に大洋州連合と南アメリカ合衆国は表明直後にこれを承諾している。
なお、C.E.の宇宙でのNジャマーの効力は地球全土、プラントやザフトの基地周辺など、一定以上の人間が生活を営んでいる場所付近に限定されていることから、それ以外のL4宙域の中立コロニーであるリティリアや、火星圏等のような地球から見て辺境の宙域では依然として核発電や核爆弾は使用可能である。
Nジャマーの影響を打ち消す装置としてプラント自身が開発した「ニュートロンジャマーキャンセラー」が存在する。
Nジャマー下における電力確保
Nジャマーは核攻撃抑止のために地球のみならずプラント周辺にも設置されているが、プラントのコロニーは太陽光発電によってエネルギーを賄っており、管理下に置かれていた頃にはプラント理事国(大西洋連邦、ユーラシア連邦など)へのエネルギー輸出も行っていたほどにエネルギーに余裕がある。一方、プラントからのエネルギー輸出が行われていない地球連合各国では、ガスタービンや旧来式の石油(枯渇寸前)などを用いてエネルギーを代替する方策もとられていた。
また、中立国の一つであるオーブ連合首長国は火山からの地熱発電によってエネルギーの自給を行っている。そのため、エイプリル・フール・クライシスの影響は少なく、国民もプラントやコーディネイターに対して悪感情を抱いていない(むしろ連合プラント間の戦争による軍事特需で儲けた側である)。
Nジャマーの散布によってC.E.における地球圏のエネルギー供給は原子力から太陽光発電へ急速に転換し、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦後にはアークエンジェル等で採用されていた変換率80%のものが広く普及している。
Nジャマー下の通信手段
Nジャマーの効力下においては電波が妨害されるため、さまざまな通信や索敵手段が代替された。
至近距離(有視界距離)であれば電波は通じるため短距離通信はビデオ会話であっても多少ノイズが入るものの問題なく行える(ただし、通信対象との距離が離れると、その影響はより顕著となる)。そのため、MSにも個別にECMやECCMといった機能が搭載されている。また、複数の中継装置を用いて遠隔地まで通信する方法も存在し、地上では前線の中継用としてレーダー車が用意されている。
他にも戦闘時の代替通信手段として、赤外線やレーザー通信を用いたものが存在する。Nジャマーは熱紋を阻害しないため赤外線探知も可能である。そのため、熱紋パターンが把握できていれば、接近する特定機種を一意に把握できる。ただし、赤外線センサーは熱を放射する照明弾やフレアによる攪乱が可能であり、レーザー通信もまたチャフによって妨害される恐れがある。
主要な通信伝達手段としては、全世界規模で送電網を兼ねる超電導ケーブルによる有線通信が急速に普及し、情報通信と太陽光発電で得られた電力を送電するケーブル網が構築された(ただし、この有線通信は量子コンピュータによるプロテクト解除と改竄が容易であり、それを防ぐため撮影した映像を直接依頼主に届けることがC.E.では一般化している)。また、光の届く範囲であればレーザー通信も可能であるため、緊急用の救助要請は軌道上の人工衛星に対してレーザーを発振するという手段も存在する。また、携帯端末の通信では地下に埋設した通信設備を駆使して限られた範囲で行える。
この他、量子通信はNジャマーに阻害されないため双方向の量子ビットストリーム通信を行える(ただし、何らかの技術的制約からか、極一部のMSでしか運用されていない)。
なお、戦時下においてGPS用を含めた人工衛星は破壊されているため、代替手段として星図を用いて位置を測定する方法が用いられることがある。
Nジャマーの応用
地球連合軍では地球におけるサイクロプスの利用に際し、Nジャマーの持つ電磁波の妨害作用を利用し、マイクロ波の放射範囲を制限することでその効果範囲を制御することに成功している。
余談
- 核分裂反応を抑制する装置であり、核融合反応を抑制する訳では無い。
- そのため、アークエンジェルの主推進器であるレーザー核融合パルス推進は問題なく使用できる。
- ちなみに、核融合による爆発を起こす水素爆弾は起爆の途中で核分裂反応を使用しているので、この方法での核融合反応も使えなくなる。そのため、アークエンジェルは核融合の起爆にレーザーを用いている。
- 所謂、ミノフスキー粒子、GN粒子、エイハブ粒子に似た世界観を構成するものだが、これらの粒子は自然界にあるという共通点がある一方、Nジャマーは粒子でも無ければ人為的に発生させたものであるという違いがある。
- プラント最高評議会では報復の案として、過激派であるザラ派が提案した連合各国の都市部への核報復というものがあったが穏健派のクライン派によって否定され、代案として挙げたNジャマーの投下を含む「オペレーション・ウロボロス」が評議会にて可決された。
- 再度核攻撃されないために連合軍を地球上に縛り付ける目的もある。
- この時、プラントは食料確保のためにも早急に地球上に軍事拠点を確保する必要があったにもかかわらず半月前の「第1次ビクトリア攻防戦」に失敗したのも大きい。
- 穏健派は、報復による戦争の激戦化よりも地球国家に対してエネルギー輸出などで優位を得ることによるプラントの独立を重視しており、報復ではなく独立戦争と、そこに付随する経済戦争・エネルギー戦争としての視点を持っていた。
- そもそも穏健派の筆頭であるシーゲル・クライン自身、血のバレンタインの犠牲者を弔う国葬の際に独立宣言と地球連合への徹底抗戦を明言している(「黒衣の独立宣言」)ほどには好戦的だった。その一方、Nジャマーを投下した半年後に「10月会談」を行って早期に和平を結び独立を目指すなど、前述の通りメインはあくまで独立戦争だった。
- 連合の軍人であるチャンドラ二世からも「でも、核ミサイルがドバドバ飛び交うよりはいいんじゃないの~?あのユニウス7への核攻撃のあと、核で報復されてたら、今頃地球ないぜ?」と評されている。
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