概要
現在の日本と米国においては、一般的に後部のトランクルームが出っ張っているノッチバック型の3BOX構造4ドアタイプの乗用車を指す。
一般市販車だけでなくタクシーやパトカーなどでも主流となっており、大半の人が単にクルマと聞かれたら真っ先に思い浮かべるであろうスタンダードなボディタイプである。
英国ではサルーン、ドイツではリムジーネ、フランスではベルリーヌ(ベルリネット)、イタリアではベルリーナ(ベルリネッタ)もしくはクワトロポルテ(4つの扉)と呼ばれる。
自動車分野におけるセダンとサルーンは同じ意味であるが、日本においてサルーンはセダンモデルの上級グレード名として用いられる事が多い。
原義的には4ドアの自動車全般を指していたが、現代においては先述のとおり専らノッチバック車に限られる。
2ドア車はクーペ、荷室が出っ張っていないものはハッチバック(2BOX構造の5ドア)車としてさらに細かい下位カテゴリーに分かれる。
構造上スライドドア仕様にはできず、市販車は全てヒンジドアになる。
なおセダンをベースに荷室を後ろに伸ばしてハッチバック化して発展したものは、ステーションワゴンと呼ばれる。
完全屋内型乗用車の形状としては最も古いスタイルの一つで、20世紀のモータリゼーションの過渡期においてはクーペと並び乗用車(ファミリーカー)の定番であった。
しかし21世紀以降、乗用車に対する価値観や生活様式の変化(車高の高いボディタイプの台頭など)、グローバル戦略化などの影響で大衆車クラスを中心にセダンの新車市場は世界的に大きく縮小している。
現在はセダンのフォーマルな雰囲気や走行性能の高さから高級車やグランツーリスモといった中~高価格の乗用車や、タクシー、ハイヤー、パトカー、教習車、公用車といった業務用車としての需要が多いが、そこでもSUVやバンの侵攻を許しており、厳しい状態が続いている。
主な性能・機能上の特徴
メリット
- 車高と重心が低く空気抵抗が少ないので、旋回時や高速走行時、強風時でもブレにくく走行安定性が高い。
- ボディの前後が出っ張っていて重量のバランスが取れており、ハンドリングや加減速のしやすも優れる。
- 機械式駐車場や低い高架下など全高制限のある所をクリアしやすい。
- 後部下部が出っ張っており後方の距離感がわかりやすいので、目視でのバックがしやすい。
- 長いエンジンルームとトランクルームがクラッシャブルゾーンとして機能しやすく、後方からの衝突時の耐久性が強く安全性が高い。
- 座席と荷室が独立しているのでマフラーを介したエンジンの騒音や路面の振動を拾いにくく、静粛性が高い。
- 前面投影面積が小さく重量も比較的軽く仕上がりやすいので燃費が良い傾向にある。
- 大型タイヤが必要かつ重いSUVに比べると、タイヤの本体価格・維持コストは安く抑えやすい。
- 歴史的に高級車・フォーマルな場面に合う車としてのイメージが強い。
デメリット
- 5名以上の定員を増やせない。
- 頭上空間が狭くなりがち。
- 車内での移動がしづらい。
- ステーションワゴンやミニバンと比べると荷室用スペースを確保しづらい。
- 後部座席の角度調整ができない又は僅かしかできない。
- 車高が低いので、特に小柄でない人以外は乗り降りの際に頭上に注意を要する。
- 3ナンバーモデルは全長が長くなりがちになる。
特にFR方式のセダンは、歴史的にも早く登場しただけでなく走行性能・快適性・安全性のバランスが良く取れているので、「乗用車の基本形」であるとされてきた。
ただし上記のメリットの多くは技術進歩により他のボディタイプ(特にクロスオーバーSUV)でも十分に備えられるようになってきているため、セダンの空間的なデメリットが目立つようになり、敬遠されてきている理由となっている。
形状の種類
主にリア(後部)の形状によって複数の呼称がある。
- ノッチバックセダン
後部の独立したトランクルームの間に車室を持つ。
前部のボンネット、中央のキャビン(居住空間)、後部のトランクルームの3区分が外から見てもハッキリ分かる形状で、「3ボックスセダン」とも呼ばれる。
いうなれば「正統派」のセダンであり、一般的にセダンというとこの形状を指す。
- セミノッチバックセダン
ノッチバックセダンのうち後部が極端に短いタイプ。
「セミノッチバックセダン」や「2.5ボックスセダン」とも呼ばれる。
インドのようなごく限られた市場にのみ存在するため、一般的にこの呼称が用いられることは少ない。
- ファストバックセダン
ルーフからトランクにかけてなだらかに傾斜したタイプ。後述のハッチバックとの構造上の違いはほとんどなく、リアハッチの形状が少し異なる程度である。
- 2ボックスセダン(ハッチバックセダン)
リアデッキを持たないハッチバック型タイプ。一般には単に「ハッチバック」と呼ばれ、セダン扱いされることはあまりない。