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パイオニア台車の編集履歴

2024-06-01 16:07:36 バージョン

パイオニア台車

ぱいおにあだいしゃ

米国バッド社が開発した鉄道車両の台車の1種。

パイオニア台車は、アメリカの輸送機器メーカー バッド社が旅客車両向けに開発した台車(メイン画像上から2段目の左)。

日本では東急車輛が製造権を獲得した。


概要

バッド社の独自技術には「Pioneer+番号」が振られるルールで、この台車を採用した客車にPioneerⅢと名付けられており、これに倣って台車はPioneerⅢ台車(PⅢ台車 或いはパイオニア台車)と呼ばれている。因みに1番目は飛行機で2番目は機関車である。

東急車輛製のものはPⅢ-7xx(或いはTS-7xx)と命名され、ボルスタアンカの形状など独自に改良されたものが数形式存在する。


技術的特色

鉄道車輌の台車、特に旅客を乗せる車両に使われる台車は、一般的に型式を問わず殆どの台車が車軸の軸受(軸箱)と台車枠の間に挿入される軸バネと、台車枠と車体の間に挿入される枕バネの2種類のバネが使われる。

基本的にどちらも上下動を抑止するためのものであるが、バネ定数、つまりバネに掛かった力に対する伸縮の度合いはバネの種類や大きさによって異なるため、バネと振動の特性によって使い分け(或いは役割分担)が図られる。


一方で、貨車に使われる台車の中には軸箱を台車枠に直接固定したり、あるいは制振ゴムで保持して上下動を専ら枕バネで吸収させるものも存在したが、こちらは構造が単純で軸バネがないため単価が安く整備作業が比較的簡単であるものの、乗り心地(貨車は人を載せないが)が劣悪で、高速運転される旅客列車には不向きであった。


パイオニア台車は、枕バネに制振効果が高く荷重の変動や大きな変位にも対応できる空気バネを採用することで、軸バネを省略して軽量化、構造の簡素化を狙ったものである。軸箱は、台車枠(側梁)に制振ゴムを介して直接保持される。

このため、軸バネを収めるスペースや、軸箱の上下動を許容したり制限したりといった複雑で嵩張る機構を省略することができ、トータルでの検修作業の簡略化や導入コストの削減などが見込まれた。

台車枠は、他の形式のように左右2本の側梁を中央の横梁が結ぶ「H」型ではなく、左右の側梁が分割されて(問題を生じない程度に)自由に動く珍しい構造である。

  • 汽車製造では、後述のブレーキ機構以外の構造がよく似た『エコノミカル台車』が開発されている。

ブレーキは、自動車のようなディスクブレーキが採用されており、基本的に台車の一番外側に取り付けられているため本型式のトレードマークとの一つとなっている。ブレーキローターが外側にあるため冷却効率が高く、また鉄道用台車としては特異にも見える外見とは裏腹に、ブレーキシリンダ(チャンバ)、てこ、ブレーキシュー、ブレーキローターといったブレーキ装置が台車外側にコンパクトに纏められ、なおかつこれらの検査頻度が高い重要部品を台車側面から直接確認したり整備ができるという特色が光る。

これも新世代の台車として奇を衒ったものではなく、簡略化と整備性の向上の一環と見たほうが良さそうである。

  • 東急車輛製の付随車に用いられたものは、1軸あたりブレーキローターを1枚としたもの(PⅢ-707,PⅢ-708など)も存在した。ブレーキ機構は台車内側に収まるため外から見ることはできない。前述のとおり台車枠そのものはかなり単純であるため仮台車のような素っ気ない見てくれである。東急7200系8000系の付随車などに使用された。
  • この手のブレーキは、日本ではそれほど普及しなかったが、パイオニア台車以外では後述の小田急4000形の台車振替車の他に、何故か相模鉄道が熱心に採用していた。

バッド社が自国の車両向けに製造したものは軌間1435mmで、左右の車輪間に十分なスペースがあるため軸箱・側梁が車輪の内側に収まり、車輪の外側に直接ブレーキローターが付けられていた。

対して東急車輛で製造されたパイオニア台車は軌間1067mm向けで、スペースが不十分であるため他の一般的な台車と同じく軸箱・側梁が車輪の外側に来るレイアウトである。

但し、前述のとおりにブレーキ装置が外側に来るため長い車軸と貫通式の軸箱を採用し、車軸にブレーキローターをナットで固定している。


採用と終焉

日本では、1960年代から東急7000系(初代)、南海6000系京王3000系といった初期の東急車輛製のオールステンレス車に使用されたほか、吊り掛け駆動小田急4000形(初代)にも採用された。


実際のところ枕バネが主たるバネとなるためバネ下重量が大きくなる(台車枠もバネ下重量になる)、つまり路面の凹凸などに対する追従性が低く、乗り心地が悪かったり或いは軌道への悪影響があったともされる。これは、他の台車とは一線を画す利点を持ちながら日本では他社の積極的な採用が進まなかったことにも現れている。

とはいえ本国で試乗した関係者の評価は高かったことから、軌間を変更したことや、使用条件や環境によって善し悪しが大きく変わる特性があった事は間違いなさそうである。


更に、1973年にこの台車を履いた小田急4000形が連続して脱線事故を起こしたことが日本での運命を決定づけた。検証の結果、特性が異なる台車を履いた車両を連結するとある条件で軸重抜け、つまり車輪がレール上に留まり続けようとする力が失われるという特性が明らかになった。


このため、それ以降新造車に採用される事はなくなり、他形式との併結が多かった小田急の場合は暫定的に全編成が同形式の台車となるよう運用制限をかけた末に比較的早期に別形式の台車へ交換された。小田急4000形の場合、台車の振替の際に全車ではないものの元のブレーキ装置を流用したため、あたかもパイオニア台車のように見える台車を履いたまま廃車された車両もあった。


京王3000系も振動特性が不評だったため電動車→付随車の順に交換され姿を消した。

南海6000系はリニューアル工事と冷房化改造に際し車両重量が増加したため、一般的なミンデン台車へ交換している。一方でその改良車6100系にもリニューアル工事が施工されて6300系へ改番されたが、こちらも原則全台車を交換する予定だったのの、冷房化の負荷に耐える台車を履いていたため結果的に2009年までパイオニア台車が使用され続けた。


東急7000系の場合は他形式との併結が原則行われなかった為か、もとの台車のまま廃車・転属となっている。但し7700系への改造された車両では、冷房化改造もあり台車が変更されている。


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