ストーリー
ガルバトロン率いるデストロン軍団は、アイシドライトの鉱脈においてサイバトロン軍団と激突。しかしガルバトロンは、ウルトラマグナス打倒にこだわり、敵味方関係なく暴走。結果サイバトロンにまんまと資源を奪われてしまう。
サイクロナスがその戦いぶりを賞賛する一方で、デストロン軍団は暴君ガルバトロンの異常性に嫌気が差し始めていた。軍団崩壊の危機を目の当たりにして悩むサイクロナスの前に、クインテッサ星人が現れ、「病気」を治すためにとガルバトロンを惑星トーキュロンへ誘うよう仕掛ける。「サイバトロンが向かった」と上手くガルバトロンを言いくるめたサイクロナスは、デストロン軍団を引き連れ惑星トーキュロンへと向かう。トーキュロンとは、精神を病んだ者達が傷ついた心を治すための、いわば精神病院であった。
まんまと誘われたガルバトロンは、トーキュロンに住む医者によって行動を制約され、様々な治療を施される。しかしまるで良くならない病状に痺れを切らした医師達は、ガルバトロンのメタプロセッサを破壊し、廃人にしてしまうことを決意する。サイクロナスの制止も聞かず治療が断行されるも、ガルバトロンの狂気に耐え切れなかったトーキュロンが逆に異常をきたしてしまい、怒り狂ったガルバトロンは自らを破壊しようとしたトーキュロンを逆に完膚なきまでに破壊してしまう。
まだ破壊したりないとするガルバトロンに、サイクロナスはなんとか本来の目的であるサイバトロン打倒へ矛先を向け直させ、軍団は撤退。後に残ったのは満身創痍の医師達と、まだ治療途上の患者達であった……
概要
『トランスフォーマー2010』屈指のカオス回、迷回、一周回って神回などと様々な評価を得ている珍エピソード。デストロンがメインの回はいくつか存在するものの、正義の味方であるサイバトロン軍団が冒頭の3分程度(OPを除いた場合)しか登場しない。悪の支配者であるガルバトロンが精神病院に送られ、やけに生々しい治療を受ける。狂ったトーキュロンの世界観など、約20分の放送時間に様々な狂気が詰め込まれたエピソードである。
基本的にはそのいろいろトチ狂った展開と、妙にリアルな精神病院の描写、何より公式で病気認定されてしまったガルバトロンなどから、止め処なく腹筋に総攻撃を受けてしまうお話……ということだけで片付けられがちではあるものの、
- 主君のために頑張っているのにもかかわらず、一つとして報われないサイクロナスの悲哀
- メガトロン時代の勇姿と打って変わって、狂って衝動の塊となり、見る影もないガルバトロンの哀れな姿
- 真っ先にガルバトロンに忠誠を誓ったはずのモーターマスターが、初代で色々とアレな忠誠っぷりを見せてきたスィンドルにガルバトロンへの疑念を表明することで瓦解寸前のデストロンの状態を示唆
と、短い尺の中で可能な限りキャラクター描写を積み重ね、
- 一見唐突に思える「意識をトーキュロンに吸収させる」最終治療の存在が契約時に明確に説明されている(サイクロナスがそこに拇印を押して認めた以上、止める権利はない)
- 原題『Webworld』の「Web」はタイトル通り患者を幽閉する「クモの巣(網)」であると同時に「世界を覆いマザーコンピュータに連結するネットワーク、ワールドワイドウェブ」の「ウェブ」でもあるというダブルミーニング
などの疲弊した副官が突き上げを食らって悪のリーダーを精神病院にぶち込む話という間違いまくったスタートの割に細やかな組み立てが見逃せないエピソードでもある。いつもの塗りミスはあるが作画のレベルも総じて高く、後述の収録作としての採用もうなずける出来であろう。たぶん。
ちなみにロディマスコンボイは本編中に一切登場しない。
2011年には『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』と『トランスフォーマー2010』の人気の高いエピソードを1枚のDVDに各1話ごと収録した食玩「トランスフォーマー DVDレジェンド」がタカラトミーアーツより発売(全8種類)。「ホイストハリウッドへ行く」や「重すぎた使命」などの名(迷?)エピソードが並ぶ中で当エピソードがラインナップに含まれていないはずもなく、高価で手が出しにくいDVD-BOXに代わって手軽にあのカオスな内容を楽しむ事ができるになった。
名(迷)言集
- ガルバトロン
・「ああ、サイバトロン共をスクラップにしてやる!無論、ちっぽけな地球人もな!いいか、わしに逆らうヤツは味方であろうと、滅ぼしてやるぞ!」なお、ガルバトロン本話最初のセリフがこれである。
・「殺してやるウルトラマグナス!お前の首をひっこ抜いてサッカーボールにしてくれるわ!」
・「殺せ、ぶっ潰せ、破壊しろ!」「引き裂け!殴れ!踏み潰せぃ!」
・「なんでワシがこんな事……どいつもこいつも…!えぇい離せぇぇぇぇ!このワシを自由にしろぉぉぉぉ!」(空耳で「自由」が「虹色」に聞こえる。尚後にコアを破壊する時、ガルバトロンの身体を虹色の光が照らしていた。)
・(惑星のコアを破壊するのは困難だとサイクロナスに言われるも)「誰にもワシを止めることはできんぞ!ワシはガルバトロン!宇宙一の破壊大帝なのだ!」
・(トーキュロンを徹底的に破壊した後)「見よサイクロナス!美しい!破壊と殺戮こそが究極の美なのだ!」
- サイクロナス
・「心を治してくれとは言ったが、破壊しろとは頼んでいないぞ!」
・「今更ムシのいいことをぬかすな!全部貴様らがまいた種なのだ!」
・(前述のガルバトロンの『宇宙一の破壊大帝』発言を聞いて)「やっぱりイカれているんだ……」
・(復興に何百年掛かる状態まで破壊してもまだトーキュロンを破壊しようとするガルバトロンに対して)
「こんな星よりも我らにはもっと重大な敵が待っております!サイバトロンです!」
- スカージ
・(酷すぎるガルバトロンの返答を聞いて)「へっ、馬鹿らしい、もう連れて帰りましょうや」(※連れてが捨ててとも聞こえる)
- スプラング
・(「デストロン軍団に栄光あれ!」と叫びながら特攻を仕掛けてきたスウィープス達を見て冷ややかに)「何寝言言ってるんだあいつら…」
- トーキュロン人
・「患者はどっかの健康保険に入ってるかな?(首を振るサイクロナスに)では支払いは現金、ということになるよ。まあ預り金まではもらわなくてもよかろう! ただし患者に永久治療を望むのであれば現金ではだめだよ、意識ユニットを保証にしてもらわないとな」
・(「心をなくしてしまえばガルバトロン様はただの機械になる!」というサイクロナスの言葉に)「そのほうが気楽!違うかね?」
・「見方を変えれば、われらはみなただの機械ではないかね?」(上記の原語版のセリフ)