概要
超新星爆発によって恒星中心部の物質の原子核が恒星崩壊による重力で陽子に電子がめり込んでしまう陽子の電子捕獲とよばれる現象が起き、構成している粒子のほとんどが中性子になった星。
中性子星の様子
本来中性子自体は原子核を構成せずに漂っている状態では半減期が約10分、平均寿命は約15分という不安定な粒子であるが、非常に高い密度に詰まっていることにより、中性子が崩壊せずに星として存在している。その密度は非常に高く1mm³当たり約37万tという密度のため、太陽程度の質量があるにもかかわらず半径は10km程度で、表層の大気も1m程度しかない。表面は固体状で山もあるが、その高さは数mm程度。また、表面での重力は地球の重力の2000億倍ほどあり、脱出速度も光速の1/3程(約10万km/s)ある。また、自転も非常に速く自転周期は30秒から0.01秒程度である。この高速な自転と後述する強力な磁場作用で、磁極からはビーム状の電磁波が発生。これが地球の方角に向くと電波のパルスとして観測されるので、こうした中性子星は「パルサー」と呼ばれる。
大まかな構造
大気 | 1m程度 | プラズマ化した状態の原子 |
---|---|---|
表面 | 数百m | イオンと電子 |
地殻 | 1km程度 | 表層から順に鉄原子核(ミートボール)、くっつきあった鉄原子核(ニョッキ)、原子核が繊維状に長く連なったスパゲティ、シート状のラザニア、最下層が筒になったペンネなどといった原子核パスタと呼ばれる陽子と中性子からなる「核子物質」で構成されており、非常に硬くて強靭 |
マントル | 数km | 超流動状態の中性子流体 |
核 | 数km | 中性子が縮退した何物か(幾つか仮説がある) |
磁場
1億T(※)前後、「マグネター」と呼ばれる特殊な中性子星では100億T程あるといわれている。
これだけ強い磁気ともなると、磁気が強い場所や強い条件を満たしている中性子星では地表から1000km程度に近付くだけでも水の反磁性により細胞が破壊され、致命的な影響を受ける。また化学反応も10万T前後までくると、原子核内の電子状態が変わってしまうため化学式通りの反応が起こってくれなくなる(ただし、仮に実際に近付いたとしたら磁力で細胞が破壊される前に中性子星の潮汐力(2点間の重力差)で引き裂かれてしまう方が先)。
ちなみに、人類の科学で達成できる磁場は定常的なものでは数十T程度、パルス磁場で数百T程度であり、大病院などにある核磁気共鳴CT装置(MRI)に使われる磁石でも普及機で0.5~1T、研究機でさえ4.7 - 7T程度と中性子星の強烈な磁場に比べると月とスッポン程の差がある(それでもMRI検査一回分でレントゲン撮影一回分のがん発生リスクはあり、8Tでは唾液が電気分解して口の中が嫌な味になる)。
磁場についての補足
※…磁束密度単位で「テスラ」と読む。身近なところでは地磁気平均が大体4万分の1T - 1万5千分の1T。
従来使われていた磁束密度の単位[G](ガウス)との換算は下式の通り
10,000[G]= 1[T]
連星中性子星、そして衝突
連星の双方共に中性子星という天体が発見されている。この連星中性子星は2つの超高密度の固まりが極めて近い距離を互いに凄まじい速度で公転し合っているためにその質量が周囲の空間を揺さぶり、重力波を発生させている。重力波が発生することで2つの中性子星は運動エネルギーを失い、両者の距離は接近してさらに速い速度で公転、そして遂には衝突する。衝突によりダイヤより遥かに硬い外殻が割れて中身の高エネルギー中性子が放出、「キロノヴァ」と呼ばれる大爆発を引き起こす。爆発で飛び散ったおびただしい数の中性子は周囲の物質の原子核に一斉に衝突。「r過程」と呼ばれるこの現象によって発生した鉄より重い重元素の雲がキロノヴァを覆い隠した。活性化した重元素の雲は2週間程輝き続けるが、その後中性子星衝突で生まれたブラックホールが雲を吸収、一部は事象の地平の彼方へと消え、残りはブラックホール両極から光速に近いジェットとなって噴出、銀河中に重元素が撒き散らされた。こうして宇宙に広まった重元素が後に惑星を形作り、我々の体の一部となったのである。
さらに密度が高い星
今まで中性子星より密度が高いものはブラックホールしかないと考えられていたが、近年の研究ではその中間にクォーク星とよばれる陽子や中性子などの素粒子を構成する何物かでできた星があるといわれている。現在みなみのかんむり座「RX J1856.5-3754」がクォーク星候補として挙げられている。
その他
中性子星が太陽系に近付いているのを発見。後75年後には中性子星により地球を含む太陽系は破壊されてしまう。人類存亡を賭けて、巨大な宇宙船『方舟』を建造し、地球を脱出し、新たに人類が写り住む『第2の地球』を探さなければならない。
…というSFドラマが、ナショナルジオグラフィックチャンネルによって制作された。
中性子星を題材とした作品
『竜の卵』(ロバート・L・フォワード):中性子星で生まれた生命体「チーラ」と人類のファーストコンタクト。
『スタークェイク』(ロバート・L・フォワード):『竜の卵』続編。
『フラックス』(スティーヴン・バクスター):中性子星で生存可能な様に改変された極小サイズの人類の亜種達に危機が訪れる。
『中性子星』(ラリー・ニーヴン):中性子星軌道を巡る宇宙船に乗っていた2人が死亡。絶対に壊れないはずの宇宙船の中で一体何があったのか?