運命に、立ち向かえ。
概要
2002年に公開されたニュージーランドの映画で、原題は『Whale Rider』。ウィティ・イヒマエラによる1987年の小説『The Whale Rider』を原作としている。監督はニキ・カーロ。
「パイケアとクジラ」の伝説をメインテーマの一つに掲げ、女人禁制と閉鎖的なコミュニティーや伝統などの壁を乗り越えようとする若き少女の奮闘を描く。また、クジラの種類としては(『ウェラーマン』のようにネガティブなイメージも含めて)ニュージーランドおよびマオリと文化的な繋がりが特に強いセミクジラが選ばれた。
ニュージーランドの映画でも評価と知名度が高い部類であり、多数の国際的な賞を獲得している。
そして何より、著名なディズニー映画である『モアナと伝説の海』と、同じくディズニーが関与した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』に本作が強い影響を与えたとされており、本作の主人公でありパイケアから名付けられた「パイ」がモアナ・ワイアリキとの類似性が強く、マウイの変化するザトウクジラやサメなどのモチーフなど、様々な関連性や類似性が指摘されており、本作はモアナの祖母であるタラを演じたレイチェル・ハウスの最初のメジャーなキャリアでもあり、『ウェイ・オブ・ウォーター』に出演したクリフ・カーティスの出演作でもある。実際に、モアナを演じてきたアウリイ・クラヴァーリョも『モアナと伝説の海2』のインタビューで本作について触れている (参照)。
- ニキ・カーロは『ムーラン』の実写版を制作しており、やはりそちらでも「運命と伝統に立ち向かう若き女性」を描いている。
- セミクジラとザトウクジラも、(『モアナと伝説の海2』に登場する)ジンベイザメなどと共に「タニファ」のモチーフになった可能性が指摘されており、マウイの変身する動物の種類にもタニファとの類似性が見られると言われている。
- ウィティ・イヒマエラも、自身にはとある雌のタニファが守護神として憑いていると述べている。
パイケア
パイケアはポリネシア神話において、マウイと並ぶ半神のヒーローであり、「ホエールライダー」の伝説として有名。
パイケアの先祖の神は海神であり鯨神でもあるタンガロアであり、パイケア自身も鯨に変身するともされている。
罠のために海で遭難したパイケアはザトウクジラまたはセミクジラに救われ、ニュージーランド(アオテアロア)にたどり着いた最初の人間になったとされている。この伝説の影響もあって、マオリ語でザトウクジラをパイケアと呼び、パイケアの伝説が影響したのかは不明だが、マオリの文化においてセミクジラをクジラの代表種と捉える部分がある。
なお、神話形成上の繋がりはないが、『ヨナ書』の有名な伝説でもあり、ディズニーの「モンストロ」にも部分的に影響を与えたと考えられている「ヨナと鯨」の伝説との類似性も指摘される場合がある。