概要
最高神エルが父、アシェラトが母、海神ヤムが兄弟にあたり、“(エルに)愛される者”と称される。また、モトは創世の初期に暗黒の混沌と大気が交わった中から生まれたとも解釈されている。
モトの名は『死』を意味しており、モトが治める地下の冥界の都市は“破滅”、支配する土地は“忌まわしさ”、彼の坐す玉座の名は“荒廃”と描写され、また地下世界以外にも植物が育たない不毛の地・砂漠もモトの支配圏といわれる。
モトは乾期を象徴する神でもあり、熱風と猛暑によって大地を干上がらせ植物を枯らせる、いわば雨季と雷雨の豊饒神バアルの対になる存在である。
神話中のモトは、海神ヤムを倒して王権を獲得したバアルが次に戦う存在として描かれる。
両者の軋轢に関しては冒頭部が存在しないことから諸説があり、
・バアルがモトに使者を送って自身が神と人の支配者であることを宣言するのに対して、モトが「バアルの豊饒の力はいつか消滅して死んだ彼を私が飲み込むだろう」と言い返す。
・モトの方からバアルに使者を送ってヤムを殺した責任を糾弾する。
・王権を手にしたバアルが地下世界にモトを封じ込めようするも、逆にモトは自分自身こそ地上を支配すべきだとしてバアルに挑戦する。
いずれにしても両者は衝突し、バアルはモトに捕えられて死の領域に縛り付けられてしまう。
その場面は、バアルが手探りで冥界に降ったり、モトの天地に届くばかりの巨大な顎と空の星にまで伸びる舌によってバアルが丸呑みにされて胃の中に落下したりする形で描写される
バアルが死ぬと降雨が停止して大地は干上がり、植物は育たなくなった。バアルの妻アナトは太陽の女神シャプシュと共に彼の死体を探しに行き、地に伏したバアルを発見して、その前で飽くまで嘆き悲しんだ後に彼を山上に運んで生贄を捧げた。
そしてアナトはバアルへの慕情が抑えきれなくなったことからモトのところに行ってバアルを取り戻そうとし、モトを捕まえて刀で切り裂き、火で焼いて、臼にかけて粉々にし、大地にばら撒いてしまう。
するとバアルが復活して大地と山々に潤いと緑を取り戻し、さらに彼は冥界に荒廃をもたらしてモトを退位させる。
だがモトはその七年後に再び現れてバアルに戦いを挑み、両者は激しく争う。勝負は両者の相討ちに終わるがシャプシュの仲裁が入って、遂にモトはバアルに王権を譲るのだ。
切り裂かれて大地に撒かれるモトの姿は農耕・豊饒の祭儀を表し、モト(不毛)による地上の支配は次の時期の豊作を見込んだ休耕期間の暗喩であるとも解釈される。さらにモトはバアルの一側面を司る存在であり、翌年の豊饒を約束する儀式で殺される生贄の子羊、統治期間中の役割(収穫)を終えた王を象徴する存在ともいわれる。
女神転生シリーズのモト
初出作品はセガサターンのRPG「真・女神転生デビルサマナー」。神話内の役割もあって基本的に種族“死神”やアルカナ“DEATH”に属し、「真・女神転生Ⅲ」では種族“魔王”に分類される。
金色の石棺から角のある頭部とひび割れた腕を覗かせた姿で、3Dデザインでは魔法使用時にのみ棺の蓋が開く仕様になっている。なお、口調は姿通りの“古風”のこともあれば“おこさま・小僧”だったりと、作品によっては異様なまでの違いを見せる。
ゲームでは最上位の悪魔として女神転生・ペルソナいずれのシリーズでも頻繁に登場する。『魔』や『知』を始めとした高い能力値を誇り、往々にして呪殺・万能属性の高位スキルを所持している為に敵としても味方としても強力な存在である。
特に「真・女神転生Ⅲ」のモトはシリーズ中でも際立った存在感を放っている。
プレスターンバトルという独自の戦闘システムは、行動回数を増加させる『獣の眼光』などの敵専用スキルを生み出し、多くのボス悪魔に実装された。
そして作中ボスとして登場するモトは、『獣の眼光』によって行動回数を増やし、『マカカジャ(能力上昇スキル)』を最大までかけた後、再び『獣の眼光』を使って『メギドラオン(万能属性スキル)』を連発し、プレイヤー側にターンを回すことなく全滅させることがあった。
その暴れ狂う様はモト劇場(モトによる暴走劇をプレイヤーが見てるだけの意)と評され、死と不毛をもたらす神性さながらに多くのメガテニストを戦慄させた。
最終盤では雑魚敵としても出現し、外道シャドウと協力した上記コンボの亜種(モトシンフォニーと呼ばれる)を盛大に演じてくれる。相変わらず容赦しないお方。
ちなみに後作「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」では、エネミーサーチで出現するモトの台詞に「死が奏であう劇場の中で」という文句が存在する。