概要
“竈神”とも表記される日本や中国の伝承に伝わる竈・囲炉裏・台所などの火を使う場所に祀られる神。
日本のかまど神
陸前(宮城県、岩手県)~陸中(岩手県、秋田県)にかけての地方に伝わる火を司る神。
飲食の調理を行う竈はいわば家の心臓部である為、その信仰は古く、一般的には竈や炉の傍の神棚に御幣や神札を祀るが、その祀り方は地方によって様々な物がある。
例えば粘土や木彫りの怪奇な面を家の竈の前の柱に掛けておく風習が有り、その掛ける男を「かまど男」などといい、中には炉の自在鉤や五徳をご神体としている所もあるとされるほか、信越の国境では1「釜神」という名の1尺(約30cm)位の木製の人形2体を神体とし、鹿児島県では人形風の紙の御幣を火の神として祀っているという。
その由来はひょうとく(ひょっとこ)の伝承などの中にも見受けられるが、それとは別に仁徳天皇の時代から、竈から立ち上る煙の高低で、その家の家運を知る事ができるといわれてきたといわれている。
また不運な男が幸運な女と結婚したが、ちょっとした事情で妻と別れてしまい、後に零落した男は前妻と再会した事を切っ掛けに我が身を恥じて自らの命を絶ってしまい、元妻は男を不憫に思い、その男を竈の後ろに埋めて祀ったのが、「竈男」、あるいは「竈神」だという話もある。
また、かまど神は火を司る神であるのと同時に農作の神でもあり、その他、子供の神、牛馬の神、家族の守護神という側面もあるとされる。
中国のかまど神
日本と同様に古来より中国で信仰されており、「竈神」以外にも「隗(かい)」や「壌子」「蘇吉利」「竃王」「竃君」「竃公」「竃君公」「竃王爺」「竃司」等々と様々な名前が付けられ、中には「張単子郭」という姓名に字名まで付いているものもある。
その他、妻や6人の子供がいる、美女の姿をした女神として伝わっている所もあるとされる。
また『雑五行書』よれば、竈神は黄衣を着て乱れた髪の姿で竈から出てくるとされ、その名を呼ぶ事ができれば、凶悪を除く事ができるとされる。また、天帝から各家に派遣され、そこに住んでいる人々を監視しているとされ、(諸説あるが)月の晦日(旧暦12月23日)の晩などの定まった日に天へと昇り、人間の善行や悪行を天帝に報告するといわれており、罪状によっては寿命(?)を紀(300日)や算(100日)を奪うとされる。
その為、人々は月の晦日は酒や肉を供えて悪い報告をされない様に、もしくは内容をより良いものにしてもらうために粘り気のある餅を供えたりするという。