概要
2014年6月にpixivに導入されたサービスである「うごイラ」は、複数の画像の連続表示で以て「動き」を表現するものである。
pixivでは2014年7月現在、様々な「うごくイラスト」が生み出されており、作品にまつわる様々なストーリー性や表現技術、そしてイラストにかける作者の気持ちなどが「うごイラ」を通しても多様に表現されている。
「とまイラ」もまた「うごイラ」に関連するものであり、それは「うごイラ」という特殊なフィールドにあえて逆説的なアイデアでもって作品を提案するチャレンジ性に満ちた試みである。
それは「うごイラ」を使用した作品のアイコンに特徴的な左上の「再生マーク」を燦然と輝かせつつもあえて閲覧者の期待を心地よく裏切るユーモアにあふれたものである。
「うごイラ」のシステムを応用しつつも「うごイラ」にして「うごイラ」でないという作品も生み出されており、まさにそれは「うごイラ」という先入観及びシステムの仕組みを見事に逆手に取った、華麗なユーモアである。
そう、「とまイラ」は静止状態であるのだ。
「動」的世界の表現を可能にし、展開することのできる「うごイラ」においてあえて「静」的世界を表現するという心地よい挑戦性が、「とまイラ」の真髄である。
「うごけない」のではない。
「うごかない」のだ。
「うごくイラスト」である「うごイラ」に対比して、「うごイラ」のフィールドに参加しつつもその実際においては「とまっているイラスト」が「とまイラ」である。
その手法は、通常のイラスト投稿と同様の作品の左上に先述の「再生マーク」を描くことで「うごイラ」と同様のサムネイルを形成する方法や「うごイラ」の仕組みを用いつつ実際には各ページを「動かさない」ことで「とまイラ」とするなどの方法が採られている。
左上の再生マークは、一般的な「うごイラ」を表す以外の仕事もしているのである。
「とまイラ」の将来性
作品の性質からして、一見するとユーザーがまだシステムに馴染んでいない、いわば「うごイラ草創期」にのみ生み出され得るチャレンジとも言えるが、一方で多様な作品が次々生み出され「うごイラ」がより馴染むほどにその先入観を裏切る作品はインパクトを発揮し得るものでもある。
今後も多様な「とまイラ」が生み出される素地は、時が経つほどに醸成されていくのである。
その時「とまイラ」はユーザー諸氏が「うごイラ」に馴染んだ分だけ、味わい深く小気味良いカウンターショックを与えてくれるだろう。
「とまイラ」もまた、秀逸な「うごイラの有効活用」の一つであるといえるのである。