「平和なエルフの国に、オークたちが攻め込んできた」
よく目にする、そんなフレーズ。
では、彼らは一体なぜエルフの国に攻め込むのか。
国を亡ぼすほどの大軍勢を、どうやってその場に送り込んだというのか。
そんな疑問に挑む、ひとつの近代軍事ファンタジー。連載です。
-ウェブ版紹介文より-
-カクヨム版紹介文より-
概要
「オルクセン王国史 ~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~」とは、小説家になろうに掲載されている小説。
作者は樽見 京一郎(X(旧Twitter)上では「酒樽 蔵之介」名義)。
異世界もののラノベでは使い古された感のある、「平和なエルフの国をオークたちが攻める」というシチュエーションを、戦争の理由や兵站などの多方面から描いた架空戦記。
原作者公認の二次創作タグは「#野生のオルクセン」、作中の料理を再現したものは「#オルクセン飯」というタグも使われる。
あらすじ
魔法が存在しつつも科学技術の発展と産業革命が起き、「剣と魔法」の時代から「銃と魔法」の時代に移り変わった世界。星欧には人間族の国家の他に2つの魔族の国家が存在していた。
豚頭族(オーク)・コボルト族・ドワーフ族・大鷲族・巨狼族による魔種族連合国家であるオルクセン王国と、人間族からも最も歴史古く清楚な存在だと思われている、エルフたちによる国であるエルフィンド王国である。
ある日、オーク族であるオルクセン国王のグスタフ・ファルケンハインは狩猟中、銃で撃たれ倒れていた一人のダークエルフを見つけて救助する。目を覚ました彼女_ダークエルフ氏族長ディネルース・アンダリエル_の口から語られたのは、エルフィンドで白エルフ族がダークエルフを殺戮し、民族浄化を行っているという情報だった。
白エルフへの復讐に燃えるディネルースに対し、グスタフはダークエルフ族を連れてオルクセンに移住し、将来の捲土重来を図ることを提案。ディネルースもそれを受け入れ、グスタフによるオルクセン王国軍の支援の下、出来る限りのダークエルフを脱出させてオルクセンに亡命した。
その翌年、エルフィンドから届いたとある外交書簡を見たグスタフは、エルフィンドがそこで犯したある失敗を口実に、エルフィンドとの戦争を決意する。同時期、オルクセン王国軍に少将として迎えられたディネルースは、ダークエルフ族によって構成された騎兵旅団の指揮官となっていた。
グスタフはオルクセン王国軍の最高司令官として、ディネルースは前線部隊の長として、それぞれ対エルフィンド戦争を戦うこととなる。
軍事・内政・外交、陸・海・空。
膨大な数の命が紡いでいく、オルクセンとエルフィンド、二国の存亡をかけた国家総力戦。
そして、グスタフとディネルース、それぞれの運命は...?
主な登場人物
オルクセン王国
グスタフ・ファルケンハイン
CV:大塚明夫(コミック第1巻販促動画)
(イラスト左)
オーク族。魔種族統一国家オルクセン国王。
とある日の狩猟で、狩場に倒れていたディネルースを助ける。
本人が「オルクセンでは最も魔力の高い者が王位に就く」と語っている通り、かなりの魔力の持ち主で、限定的ながら天候まで操ることができる。
それ以外にも農学や工学など様々な知識に精通しており、オルクセンの繫栄は彼がもたらしたといっても過言ではない。
ディネルース・アンダリエル
ダークエルフ族。氏族長。オルクセン軍における階級は少将。
エルフィンド内での民族浄化から、仲間のダークエルフとともに隣国へ逃れようとしていた。
追っ手の射撃で倒れていたところをグスタフに助けられる。
ちなみに酒はいけるクチで、アルコール度数の高い火酒を一本飲み干しても顔色一つ変えない。グスタフ曰く「底なし」。
後にオルクセンの軍籍に入り、ダークエルフの騎兵及び砲兵、山岳猟兵で構成された「アンファングリア旅団」を旅団長として率いることとなる。
アドヴィン
巨狼族。王護衛役としてグスタフに帯同し、常に行動を共にしている。
グスタフとは彼がまだ王位に就く前からの仲で、出会いのきっかけは従軍中に事故に遭ったグスタフをたまたま通りかかったアドヴィンが助けたこととのこと。
追手の弾丸で倒れていたディネルースを最初に発見したのも彼。
カール・ヘルムート・ゼーベック
オーク族。オルクセン国軍参謀本部参謀総長。上級大将。
参謀本部のトップではあるものの、自身は周囲との調整、兵站管理などの方が得意で作戦立案はからっきしであると自覚しており、作戦立案はグレーベンに任せている。
酒が大好物で、自宅には秘蔵のワインコレクションがあり、ディネルースに「うちの配下に来れば酒には困らない」と豪語する。
グスタフにはたびたびワインをたかられる仲。
アロイジウス・シュヴェーリン
(イラスト右)
オーク族。上級大将。北部軍司令官としてエルフィンドとの国境地帯の守りを担う。右の目元にある古傷がチャームポイント。
グスタフとは彼がまだ一兵卒だった頃からの付き合いで、彼からは「悪党」と呼ばれ親しまれている。
かつてディネルースたちとも干戈を交えたことがあり、「絶対に一対一の対戦は避けろ」「出会ってしまったら逃げろ」とエルフィンド内でも闘将として名を馳せていた。
ちなみに、オルクセンで元帥の階級は要塞を陥落させた者にしか与えられないため、彼をはじめとした上級大将はオルクセンの現役軍人における最高位であり、彼を含めて3人しかその位を持つ者はいない。
アウグスト・ツィーテン
オーク族。上級大将。陸軍騎兵監。
オルクセンにおける騎兵の第一人者として、アンファングリア旅団創設の際の軍馬調達などに奔走。
リュウマチを患っており、常にステッキを片手に携えている。
ヴェルナー・ラインダース
大鷲族。少将。国軍大鷲軍団団長。
飛行が可能な大鷲の特性を生かし、上空からの偵察および弾着観測を研究している。
ディネルースとは浅からぬ縁があるのだが……詳細は本編で確かめてほしい。
エーリッヒ・グレーベン
(イラスト手前、THORES柴本版デザイン)
オーク族。国軍参謀本部次長兼作戦局長。少将。
子供の自主性を重んじる両親の教育により、幼少期から興味を持ったものに打ち込む生活を送り、「正解へと至る過程は一つではない」「答えも一つではない」という柔軟な考えを持つようになる。
その過程で玩具の兵隊を用いてデュートネ戦争の戦闘を再現するうち、作戦立案の才能が開花。
義務教育修了後に士官学校に入り、そのままオルクセンの軍籍に入った。
上官であるゼーベックは彼を「天才」と評しており、彼の問題行動もある程度大目に見て、彼の行動がトラブルのもととならぬよう結婚の世話や酒の飲み方を教えていた。
ゼーベックの紹介によりシュヴェーリンの末女と結婚しているため、彼とは義父と義息子の関係。ゼーベックのことは「俺はゼーベックの親父のためなら死ねる」と言うほど慕っている。
エルフィンド侵攻作戦の立案中、とある侵攻ルートを発見する。
エルンスト・グリンデマン
海軍第11戦隊司令兼砲艦「メーヴェ」艦長。中佐。
問題だらけの11戦隊を束ねる頼れる男。
マクシミリアン・ロイター
海軍荒海艦隊司令長官。大将。
フロリアン・タウベルト
コボルト族。ビーグル種。陸軍輜重輸卒。
輸送馬車の御者として演習に参加するが、とある事故に遭遇。ここから激動の人生が始まることとなる…
なお、最初の登場回の地の文で「後に戦死した」と語られているが、その後もちょくちょく登場しては読者たちをハラハラさせている。
アーウェン・カレナリエン
ダークエルフ族、階級は中佐。
アンファングリア旅団騎兵第一連隊を連隊長としてまとめ上げる。
ウェーブした黒髪が特徴。
アルディス・ファロスリエン
アンファングリア旅団騎兵第二連隊の連隊長。階級は中佐。
金髪に先の方が丸まった特徴的な前髪とタレ目がチャームポイント。
エラノール・フィンドル
ダークエルフの中佐。
アンファングリア旅団騎兵第三連隊の連隊長を務める。
長めの金髪を頭の後ろでまとめた髪型。
エレンウェ・リンディール
アンファングリア旅団山岳猟兵連隊長。階級は中佐。
騎兵の熊毛帽とは違う制帽と、肩につかないくらい短くカットした金髪が特徴。
師団対抗演習を見学した際には、陣地構築後すぐに食事に移るオルクセン軍の行動に汗を垂らしていた。
フレダ・メレスギル
アンファングリア旅団砲兵大隊長。階級は少佐。
リンディールと同じような軍装にそばかすのついた顔。こちらも肩に届かない短髪が特徴。
イアヴァスリル・アイナリンド
ダークエルフ族。氏族長。オルクセン軍における階級は中佐。
ディネルースとは元から仲が良かったようで、彼女からは「ヴァスリー」というあだ名で呼ばれることもある。
後にオルクセン軍籍に入り、アンファングリア旅団の参謀となる。
リア・エフィルディス
ダークエルフの大尉
アンファングリア旅団の兵站参謀として、部隊の補給物資の管理などを務める。
ダークエルフたちの中では若い方なのか、師団対抗演習の観戦誘いを届けに来たオルクセン軍士官を「えらく情けない顔のオーク」呼ばわりして上官に制裁を食らうなど、よく言えば無邪気、悪く言えば無遠慮な発言も目立つ。
しかしながら、時に軍人らしい勇気を見せつけるシーンもあるが…詳細は本編で確かめていただきたい。
ラエルノア・ケレブリン
ダークエルフ族。副氏族長。オルクセン軍における階級は大尉。
発想力に富んだ優秀な狩人であり、目的のためならばどんなものでも利用し、必ず獲物をしとめる。
コミカライズ版第三話においてオークの歩哨から銃の性能を聞きだしたときのしぐさは、まさに「あざとい」を絵に描いたようだった。可愛い。
エルフィンドから脱出後、オルクセン軍籍に入り、アンファングリア旅団作戦参謀を務める。
グルティナ・モリエンド(黒にんじんちゃん)
ディネルースらの手引きにより、エルフィンドから脱出を果たしたダークエルフの一人。軽くウェーブした黒髪とそばかすのあるタレ目の顔が特徴。
ダークエルフ一行に用意された居住地ヴァルダーベルクに到着した際、到着早々畑に行って土を口に含んでその質を確認という、まるでどっかのバンドを組んでる兼業農家のリーダーのような行動を行う。
ちなみに、彼女によるとヴァルダーベルクはとても土がいいらしい。
その後、コミカライズ版のオマケとしてついている宣伝マンガでは、作品のキャプチャーによる紹介の例として、某青い鳥のSNSらしき画面に上述の土を食べたシーンと共に「やはり土が(以下判読不能)」「肥料は」などといった農業的な話題を投稿している。
この時に使っていたハンドルネームが「黒にんじん」であり、ファンからの愛称はここからきている。
当初は名もなきモブキャラだったが、その純朴なキャラが受けたのかTwitterなどで「#私立黒にんじんちゃんを愛でる会」なるタグがファンにより作られ、その反響を受けた作者が「黒にんじんちゃんは名前も考えてそのうち何か書くわ。」と宣言。一躍メインキャラの座に躍り出た。
その後、コミックス特典SS「大地の娘」にて名前と、もともとは平地に住む数少ないダークエルフの一人であることが判明。
平地のダークエルフは(地理的要因から)真っ先に民族浄化の対象となったため、彼女は平地のダークエルフの数少ない生き残りである。
イザベラ・ファーレンス
オルクセン最大の企業「ファーレンス商会」会長。コボルト族ロヴァルナ・ウルフハウンド種。
総合商社/貿易商/金融業や果ては通信機や電纜の製造まで行う超大企業をまとめ上げる女傑。その影響力はオルクセンのみならずキャメロットなど人間族にまで及んでおり、キャメロット経由で集めたエルフィンドの情報をオルクセン軍に提供している。
元々はエルフィンドで小さな商店を営んでいたが、とある日、エルフィンドでコボルト排斥運動が勃発。愛していた夫を白エルフに殺され、自らも命からがらオルクセンへ避難する羽目になった。
その後はシュヴェーリン配下である北部軍の酒保商人として再起。そこからオルクセン一の大企業の盟主にまで上り詰め、商人としてエルフィンドへの復讐を果たすため行動し続けている。
キャメロット王国
クロード・マクスウェル
キャメロット外務省の外交官。在オルクセン駐箚公使として、対オルクセン外交の正面を担う。
人間の年齢は十分大人なのだが、長命な魔種族とは生きてきた年数が文字通り桁違いなため、何かとオルクセンの手の上で踊らされることも多い。
モーリントン公爵
作中時点より60年前、デュートネ戦争頃に活躍したキャメロットの軍人/政治家。
デュートネ戦争においてキャメロット軍の指揮を執り、グスタフ、シュヴェーリンらの率いるオルクセン軍と共同してデュートネを敗北に追いやった。
デュートネ戦争終戦後は政治家に転身。政治家としての能力は今一つだったが首相にまで上り詰め、オルクセンとの間にキャメロット・オルクセン修好通商条約を締結し、魔種族の国であるオルクセンが人間族と友好関係を結ぶ嚆矢を作った。
登場兵器
艦船
砲艦メーヴェ
オルクセン王国海軍の保有する砲艦で、コルモラン型砲艦三番艦。排水量七五〇トン。衝角付き。武装は一二センチ砲二門。
コルモラン型砲艦は元々海軍主導ではなく、同国随一の艦船/兵器メーカーであるヴィッセル社が売り込みをかけてきたもので、
- 小さな船体
- 最新鋭かつ高性能の火砲
- これまた最新鋭、高性能の蒸気機関
- 敵艦にラムアタックができる衝角
を装備しているという、一見すれば小型高性能の最新鋭艦艇だった。
しかし、いざ就役すると…
- 小さな船体は荒れ狂う北海で使用するには厳しく
- その小さな船体に対して大きすぎる衝角のせいで安定性はさらに悪くなり
- 高性能を謳った機関は技術の熟成が進んでいないがために故障が頻発
- 砲艦としては砲門数が少なすぎ
- 技術革新の進んだ時期に建造されたため、同型艦のはずなのに船体構造から機関まで三隻全部違う
など、完全なる大失敗作だったことが判明してしまう。
その後、海軍とヴィッセル社の間で一悶着あった末、当初所属していた「第一猪突隊」は解隊。作中時点では第十一戦隊、通称「屑鉄艦隊」に同型艦のコルモラン、ファザーンと共に所属している。
仮装巡洋艦ゼーアドラー
オルクセン王国海軍所属の仮装巡洋艦。排水量三八〇〇トン。
平時はオルクセン第二の船会社「北オルク汽船」に所属し、貨客船「キルシュバオム」として活躍しているが、戦時には仮装巡洋艦に改装して戦線に投入しやすいよう設計されている。
開戦1~2日前に、本国からの電信指示で寄港中のキャメロット港からオルクセン、ネーベンシュトラント港に帰港。そのまま入渠し仮装巡洋艦に改造され、通商破壊作戦に投入された。
仮装巡洋艦プフラオメ
ゼーアドラーの同型艦。平時は姉と同様、北オルク汽船の貨客船「プフラオメ」として活躍している。
基本的なデータはゼーアドラーと同じだが、仮装巡洋艦としての艦名は不明。
開戦1~2日前に、本国からの電信指示で寄港中のグロワール港からオルクセン、ネーベンシュトラントに帰港。そのまま入渠し仮装巡洋艦に改造され、通商破壊作戦に投入された。
ちなみにこれら2隻、元々は義侠心と愛国心に溢れた北オルク汽船社長が、戦時の際に義勇艦隊法(オルクセンの法律の一つで、戦時下における海軍の民間船舶徴用を定めたもの)に基づいて海軍を援助しようと決意して建造したものである。
ただ仮装巡洋艦への改装を前提として設計・建造されたため、商船としては非効率過ぎて赤字垂れ流しという失敗作になってしまい、もし海軍が戦争勃発によって臨時会計費で買い上げなければ北オルク汽船が経営危機に陥っていたとか...。
銃器、砲など
エアハルトGew74
4年前に制式採用された、オルクセンの最新鋭歩兵銃。
動作方法はボルトアクション式単発。
最大射程距離は1700mで、他国の小銃と撃ち合った場合、圧倒的な有利に立つことができる。
オルクセンの高い技術力で可動部の隙間を極限までなくし、同時に装薬から弾頭まで全く新しいものを開発し、制式採用している。
エアハルトKar74
Gew74の銃身を短縮した騎兵銃仕様のもの。アンファングリア旅団には主にこちらが配備されている。
騎兵銃は銃身が短いため射程に劣るとされているが、本銃は元となったGew74自体の性能が桁違いであるため、騎兵銃としては異例の射程800mを誇る。
世界観及び国の設定
全体的な世界観
こちらの世界は、いわゆる異世界ものと同じく、人間、エルフ、オーク複数の種族が存在するファンタジー的な世界である。
しかし、この世界が他の異世界ものと違う点は、すでに産業革命や市民革命が起こっており、銃や動力付きの艦船、魚雷などが実用化されていることであろう。
これにより、よく異世界ものと聞いて思い浮かべる「剣と魔法」の世界から、産業革命を境に「銃と魔法」の世界に変貌を遂げている。
こちらの世界の歴史で言うと、第一次世界大戦前の日清/日露戦争ごろ。他の作品だと軍靴のバルツァー作中と同じくらいの民度/工業水準と考えると分かりやすいだろう。
国家
オルクセン王国
「魔種族統一国家オルクセン」とも。グスタフ・ファルケンハインを国王とした多民族国家。
巨狼、コボルト、大鷲など、エルフの手で駆逐された魔族種を領民として受け入れ、他種族を食べることを国法で禁忌としている。多民族国家の様相を呈する。
現在のオルクセンの繁栄は、コボルトの魔術力と商才、ドワーフの技術、大鷲の天候予測など、他種族の技術に支えられていると言っても過言ではない。
エルフの国、エルフィンドとは、国境のシルヴァン川を挟んで隣り合っており、120年ほど前までは戦争を行っていたが、現在では戦争を行っていない。ただし、個人レベルでの交易すらなく、国交断絶に近い状態。
原作者曰く、グスタフ王以前は野蛮と評されているがマスケットや統一された軍服の戦列歩兵といった近世レベルの正規軍を組織できる程度には発展していた模様。
エルフィンド
エルフの国であり、オルクセンの隣国。
国境のシルヴァン川を挟んで隣り合っており、120年ほど前までは戦争を行っていたが、現在では戦争を行っていない。ただし、個人レベルでの交易すらなく、国交断絶に近い状態。
白エルフとダークエルフの2つの種族が存在し、白エルフはダークエルフに対する差別意識を持っている。また、人口も白エルフの方が多い。
また、白エルフは120年前のオルクセンとの戦争に乗じてドワーフの国を滅ぼし、さらにコボルトも虐殺など含めた手段で排斥。ダークエルフを利用して巨狼や大鷲も狩っており、各方面から恨みを買っている。
今回、白エルフのダークエルフに対する民族浄化がオルクセンに露見し、オルクセンの介入を招いた。
キャメロット
オルクセンやエルフィンドのある星欧大陸の北方に位置する島国。こちら側でのメシマズで有名なあの国のポジション。
デュートネ戦争にてオルクセンと同盟を結んで戦って以来、オルクセンにとっての友邦。オルクセンが最初に修好通商条約を結んだ人間族の国でもある。
また、エルフィンドとの国交も有し、現状オルクセンとエルフィンド間のパイプとなれる唯一の国。
世界各地と貿易を行っており、それに欠かせない冷却魔術の刻印魔術板や万能薬剤エリクシルをオルクセンから輸入している。
用語
魔種族
この世界における人間以外の知的種族の総称のようなもの。
エルフやオークなど、また人語を介する知能を持つ大鷲や巨狼も含むいわゆるファンタジー世界の魔族や亜人種に相当。
基本的に不老長寿であり、外的要因がなければ人間種とは比べ物にならないほど長生き(古代以前の神話時代から生きているエルフもいるので実質不死)で、労働人口≒総人口とおかしい比率だが、引き換えに出生率が極端に低い(オークが多いのは単に頑丈なだけ)。
物語の舞台である星欧地域では、300年程前に魔種族をあらゆる面で異端とする聖星教会による魔種族狩りでエルフ以外は徹底的に虐殺されたため、オルクセン王国とエルフィンド王国以外には生き残りはいない。(つまり劇中に登場しないゴブリンやその他ファンタジー世界にいるような生物はほぼ絶滅している)
デュートネ戦争
作中年代より60年ほど前、25年にわたり続いた戦争。
グロワールにおいて一砲兵将校から皇帝にまで上り詰めた英雄「アルベール・デュートネ」が周囲を侵略し、オルクセンをはじめとした諸国家と戦争状態となった。
この際、オルクセンがグロワール領内に逆侵攻した際に兵站線の維持が不可能となり、やむなく食料の現地調達に踏み切った。(ちなみに当時の兵站システムが酒保商人任せの拙い前時代的なものだったので、現地調達どころか現地耕作までする羽目になった)
現在オルクセン軍のインフラ、兵站重視のドクトリンは、この際の戦訓によるものが大きい。
ちなみに、この「デュートネ」という人物、こちらの世界には俳優として存在し、とある映画で砲兵から皇帝にまで上り詰めたとある英雄を演じている。
アンファングリア旅団(正式名が決まる前は仮称ダークエルフ旅団)
作中にて編制された、旅団レベルで単一の騎兵だけでなく、猟兵連隊や山砲大隊、それどころか自前の兵站組織をも抱える世界初の旅団戦闘団(ブリガード・カンプグルッペ)。
元々オルクセン王国軍の騎兵はオークの図体の問題から少数で、また既存部隊にダークエルフ族騎兵を合流させるには彼女らが少数すぎる上、ある問題が容易に想像できるがゆえに独立した運用を前提としている。(組織上の別部隊を合流させて運用する『編成』は常に行われていたが、彼女らの場合は最初から同じ部隊組織として『編制』されている)。
ちなみに名前の由来はエルフィンド地域の古語、古代アールブ語で「巨大なる顎」。そして神話上、「白エルフの女王を食い殺した巨狼」の名前でもある。
ちなみに、アンファングリアの名を冠することに関しては、巨狼族のアドヴィンより直々に使用許可を得ており、その際ディネルースは「白エルフどもをその顎にかけよ・・・!」という激励の言葉を受けている。
書籍情報
2022年、第2回一二三文庫web小説大賞において金賞を獲得。書籍化とコミカライズが決定した
小説版
2023年12月15日、第一巻が一二三書房より発行。ISBNは「978-4-8242-0075-4」。
カバーイラスト及び挿絵はpixivユーザーでもあるTHORES柴本氏が担当し、ウェブ版第六章までの内容が収録されている。
ちなみに、この一巻、本編だけで300ページ近くあるが、そのほぼ全てが戦争準備であり、まだ本格的な戦争シーンは入っていない。
発売から数日で書店の在庫が完売し、急遽重版されるほどの人気となった。
第二巻以降も心して待とう。
コミカライズ
2024年1月12日より、コミックノヴァにて連載がスタート。
作画は「紫電改のマキ」や「ガールズ&パンツァー リボンの武者」などで高い評価を得ている野上武志氏が担当。
ちなみに、野上氏は「みんなでアクセスしてサーバー吹っ飛ばしちゃえ(危険思想)」と告知の際にツイートしていたが、コミカライズを待ち構えていた読者諸兄の波状攻撃により、本当にサーバーがダウンしてしまった。
これにより、読者諸兄からは「エルフィンドの次はコミックノヴァのサーバーを焼き払った」「オルクセン軍の奇襲作戦成功」「この功績をもって野上氏をオルクセン軍元帥に叙すべき」などと言われることに・・・。
なお、氏は作品紹介であればページのキャプチャは認可している。
コミカライズ第一巻は2024年5月24日発売予定。発売を記念して一部の書店では野上氏描き下ろしの特典が付属する。
書店と特典の対象は以下の通り
書店名 | 特典内容 |
---|---|
メロンブックス | ディネルース(私服)のアクリルスタンド+限定描き下ろしブックカバー |
ゲーマーズ | ディネルース(私服)+グスタフ(私服)のA3タペストリー+限定描き下ろし色紙 |
とらのあな | 朝市で買い物をするグスタフ(軍装)のB2タペストリー+限定描き下ろしイラストカード |
関連イラスト
作者がMidjourneyを用いて制作したイメージ画像
一部はコミカライズ版でオマージュされたコマが登場する
関連動画
ファン有志による応援動画/作中料理再現動画
公式コミカライズ宣伝動画
関連タグ
ファントムおじいちゃん無頼:本作の作者が名づけ親
はるかリセット:第175話にて、作中アニメとして本作が登場。本作の作者である酒樽氏も第160話にて出演を果たしている。
外部リンク
実際の世界観(ネタバレ注意)
以下、作品の設定根幹をなす重大なネタバレ(web版)となるので、雰囲気を壊したくない人はスクロールしないように。
オルクセン王国史の世界は、恐らく高度に発達した並行世界の地球文明によってエルフとの触れ合いをメインにしたファンタジー系シミュレーションゲームの舞台として作り出された人工宇宙(VR等の仮想ではなく、次元などを弄って作られた本物の宇宙とそこに生活する生物が存在する)である。
そのため、衛星が12個あること、運用開始直後に衛星が大海に衝突して地理や環境が激変したことを除けばほぼ我々の宇宙における地球とほぼ同じであり、歴史も地理も地球のそれをほぼなぞっている。
(もっとも衛星衝突は決して軽い話ではなく、新大陸で南北戦争が冷戦中も続き、旧大陸極東と新大陸間の海は産業革命の技術レベルでも通過不可能な断絶海域になっている)
どうやらこの世界だけでなく、無数の企業や組織がMMOのように多数の異世界を運用しているらしいが、この世界は上記の事故から致命的欠陥(プレイヤーとしての召喚ではなく、別次元から無関係な人物を強制的に転生させてしまう)を内包したまま運用しており、見過ごせなくなった規制当局から放棄を指示されたとのこと。
この時点で実際に生きているNPCキャラクター(主にメインエリアのエルフ種族)にゲームプレイヤーが介入しすぎて予測不能になりつつあったため、プレイヤーへの速やかな離脱要請と遭難者への最低限の救済システムをエルフィンドに残している。
つまり、この世界のエルフ種族が極端な性質になっているのは、良かれと思ってプレイヤーや転生者たちが時代錯誤な高度な技術や思想を古代から伝え続けた結果、エルフたちが自種族優越主義に染まってしまったことに起因している。
一方、グスタフが100年かけたとはいえ、ファンタジー世界でテンプレ的野蛮種族であったオークを他種族に融和的な高度な文明種族へと発展させえたのは、我々のような魔法がない現代の地球から事故に巻き込まれて転生した"知性ある人間"だったから。
エルフィンドの遺構から推測されるに、彼はシステム放棄直前に巻き込まれた最後の遭難者と思われる。
だが、原作者が度々SNSで語る通り、オルクセン王国の発明や偉業の大半は『多少の前後あれど現実世界でも当時実際に起こったこと』であり、魔法や転生者という存在があっても非常に”現実味がある”物語となっている。
そしてWeb版のエピローグ、後日談(といっても本編並みの長さ)では、我々の地球と全く同じように、だが北部ドイツ相当のオルクセンとアメリカ相当のセンチュリースター合衆国が参戦しなかったことで長期化してしまった第一次世界大戦、それの敗戦処理から悪魔が生まれた第二次世界大戦、そしてイデオロギー闘争となる東西冷戦(ただしセンチュリースター合衆国が南北戦争を100年以上も終わらせることができずに落ちぶれているため、英国相当のキャメロット王国が主体)とキューバ危機モドキが発生するなど、皮肉にも我々の地球史と同じ歴史を辿り、そして発展を続けている・・・