概要
中島三千恒による日本の漫画作品。『月刊コミックバンチ』(新潮社)にて、2011年3月号 - 2021年10月号まで連載され、『別冊少年マガジン』(講談社)に移籍して、2022年9月号から連載中。19世紀後半のヨーロッパをモデルとした架空戦史である。
あらすじ
舞台はある世界の19世紀後半、帝国主義全盛の「銃口から政権が、砲口から国家が生まれる時代」。
第一次ノルデントラーデ戦役による戦功により通常より3年も早く佐官に昇進するなど、順風満帆な出世コースに乗っていたベルント・バルツァーは、ある日、上官から突如として祖国ヴァイセン王国の同盟国、バーゼルラント邦国の王立士官学校に軍事顧問として出向するよう命じられる。
バルツァーは渋々ながら命令を引き受けたが、軍事大国ヴァイセンから見れば「軍事後進国」であるバーゼルラントは、バルツァーの想像以上にお粗末な訓練を行なっていた。バルツァーは勝手の違う異国で四苦八苦しながらも士官学校の生徒たちを鍛え上げていくが、その中でバーゼルラント王室の宮廷闘争に巻き込まれてしまう。
おもな登場人物*
ヴァイセン王国
本作の主人公。
ヴァイセン王国の陸軍特務少佐。第一次ノルデントラーデ戦役では参謀本部の連隊副官として従軍。その功績によって通常よりも早く佐官に昇進した。このまま出世街道を邁進するものと思われたが、唐突に同 盟国バーゼルラント邦国王立士官学校へ軍事顧問としての出向を命じられる。ヴァイセンでは諸兵科連合部隊の運用に携わっており、兵科を問わずに指導を行う。
アウグスト王子に気に入られたことがきっかけでバーゼルラント王室の宮廷闘争に巻き込まれてしまい、ヴァイセン本国からの要求に基きアウグストに協力する。
軍事に関連することならば発想力はとびぬけており、臼砲とは異なる発想で迫撃砲の運用を思いついたり、有刺鉄線と速射兵器を合わせた騎兵の封殺、発明されたばかりのコンクリートから現代式永久要塞線の提案どころか、軽砲で重武装した車両による後背襲撃(従来軽騎兵と任務が同じとはいえ、銃兵では止められない車両を使った機動戦は電撃戦にかなり近い構想)や気球による空中爆撃など、19世紀末の時点で第二次世界大戦レベルに匹敵する軍事思想を発明している。
ヴァイセン陸軍士官学校の生徒。三年兵。第二次ノルデントラーデ戦争の際、バーゼルラント義勇連隊に同行する。参謀総長の密命を受け、バルツァーの動向を探っている。初登場は18話。
ヴァイセン陸軍士官学校の生徒。三年兵で、ヘーゼンの友人。ヘーゼンと同様に参謀総長の密命を受け、バルツァーの動向を探るためバーゼルラント義勇連隊に同行する。ヘーゼン同様、初登場は18話。
バーゼルラント王立士官学校
士官学校の訓練長にしてバーゼルラント王室第二王子。「歩兵は歯車であるべき」という旧弊な考えや、バルツァーの主張する戦法を実際に囚人同士で殺し合わせるという方法で試すなど、傲岸かつ時代錯誤な人物。一方で自ら王室の財産を切り売りしてまで母国の軍事力を底上げしようとしているが、それが故に軍国化を嫌う国民からの支持は低く「軍国の犬」と陰口を叩かれている。
エルツライヒの傀儡となった兄のフランツと対立し、兄を失脚させるためバルツァーと協力関係を築き兄に対抗する。初登場は3話。
士官学校の生徒。騎兵科の三年兵。学年で主席をとっている優秀な生徒。
騎兵科が市民の人気取りをしている現状に不満を抱いている。名誉を重んじ、何かあれば積極的に行動するが、他の騎兵科学生たちからは「お嬢様(フロイライン)」と陰口を叩かれている。
士官学校の生徒。砲兵科の二年兵。感情がすぐ顔に出る子供っぽい性格だが、工学・語学・数学の成績は砲兵科で主席。実家は「シュトルンツ鉄鋼」という兵器工場を経営しており、幼い頃から機械に触れていたため銃などの構造に詳しい。
過去の事件によりバーゼルラント王立士官学校では砲撃訓練を自粛していたため、訓練ができないことに不満を持っていたが、バルツァーの機転により初めて訓練を行い、以来バルツァーを慕うようになる。
士官学校の生徒。砲兵科の二年兵。ディーターの友人。成績は次席。
子供っぽく無邪気なディーターとは対照的に、常識的で現実主義。
士官学校の生徒。歩兵科の一年兵。教官には反抗的だが、友人思いな性格の持ち主。射撃実験でのバルツァーを見て、バルツァーに憧れるようになる。初登場は3話。
士官学校の生徒。歩兵科の一年兵。マルセルの友人。心優しい性格だが気弱で動作が鈍く、訓練ではよく叱られている。初登場は3話。
士官学校の生徒。騎兵科の三年兵で、ヘルムートの友人。ヘルムート同様に正義感が強いが、実直な性格と軍人然とした外見をしているため人望は篤い。初登場は9話。
バーゼルラント邦国王立士官学校の校長。気の良い老人だが、バルツァーが来校してから立て続けに発生する騒動に頭を痛めている。
士官学校の教頭。校長と共に、バルツァーが来校してから立て続けに発生する騒動に頭を痛めている。さほど表に出さないが、ややバルツァーを煙たがっている節があり、ヴァイセン製の銃を売り込んだバルツァーに対して「軍人ではなく商人でしたか?」と嫌味を言ったり、バルツァーが牢獄送りになった時は喜んだ。
バーゼルラント王室
バーゼルラント王室の第一王子。保守的な人物で一切の変革を嫌い、軍制改革のために王室の財産を散財する弟のアウグストとは対立しているが、結果としてその保守性がヴァイセン製品の流入により生活が圧迫されている国民からの支持を集めている。ヴァイセンへの不信からエルツライヒとの同盟を目指しており、リープクネヒト(エルツライヒ)の傀儡になっている。
中世ヨーロッパ調の王侯の服を身に纏い、居城の衛兵には中世騎士の鎧、お付きの侍女たちには神話の女神の衣装を着せる懐古趣味を持ち、アウグストからは「中世仮想趣味の夢想家(コスプレオタク)」と言われている。初登場は5話。
元ヴァイセン陸軍第二近衛連隊長で、陸軍大学時代のバルツァーの友人。大学時代に他の学友を扇動してクーデター未遂事件を起こし、結果として第一次ノルデントラーデ戦役を引き起こした。クーデター失敗の際に右眼を失っており眼帯をしている。
クーデター失敗後はヴァイセンを脱出し、現在はエルツライヒ陸軍大佐となり、エルツライヒ女帝の命令でバーゼルラント王室に宮廷音楽家として派遣され、アウグスト失脚のため暗躍している。初登場は7話。
彼の実態だが、バルツァーとは異なる視点で発想力はとびぬけており、バルツァーが軍事なら彼は社会や思想方面に特化している。
既に「人間は遠からず、世界を滅ぼす力を手に入れる」と戦争技術の発展とそれがもたらす悲劇を正確に予測し、そして恐れており、(社会発展の)歴史を早めることで逆に戦争の火種をなくすとして、各地で過激な社会主義や革命思想を広め、支援している。