ジアコーサ方式の横置きエンジン前輪駆動は、エンジンとギアボックスの配置は以前のフロントエンジン・リアドライブ車同様に直列につなぎ、90度回転させ横置きにしたものである。そしてギアボックスから下には差動装置(ディファレンシャル・ギア)のみを突出させた。
ギアボックス配置が車体の一方に偏っていることから、差動装置も車体中心からオフセットした位置に置かれてしまうことになり、そこから左右輪へのドライブシャフトは左右で不等長となった。このためハンドルが片方に偏るトルクステア現象は避けられなかったが、等速ジョイントの性能向上とセッティングによって、問題を実用水準まで克服した。
この配置でネックとなる左右スペースの制約は、ギアボックスを小型化し、エンジン補機類の取り回しも改良することでクリアした。またミニはラジエーターも横置き配置とし、エンジン駆動ファンのみで送風して冷却していたが、ジアコーサはラジエーターを、縦置きエンジン車同様ノーズ前面で走行風に当たるよう配置し、過熱時のみサーモスタット作動の電動ファンを駆動して、冷却促進する手法を採った。これはスペース節減策とオーバーヒート回避策として極めて効果的であった。
ジアコーサ方式の前輪駆動は、ミニのイシゴニス式と違ってエンジン構造の特殊化を要さず、トータルコストを抑えることができた。
この手法を採用した新しい小型車を、フィアット社は開発コード123E4として計画したが、前代未聞の新設計をいきなり主力のフィアットブランドでスタートさせるのは危険が多いと判断されたことから、まずは系列の中堅ブランドである「アウトビアンキ」車として開発がなされた。
アウトビアンキブランドでの新しい前輪駆動車は「アウトビアンキ・プリムラ」として1964年に発表された。エンジンはティーポ103の上級版「1200グランルーチェ」のOHV 1,221ccを横置きに積んだ。プリムラは技術的に一定の成功を収めた。