茨城の伝承に登場する海上の妖怪で、数千メートルもの巨体を持つウナギのような姿をしている。
嵐、または大風の日に現れ、沖を行く船の上をまたいで通過する習性がある。図体が大きいので完全に通過しきるのに12刻(3時間弱)から時には数日もかかる。しかも体表からは粘着質の油が止め処なく染み出しており、船をまたぐ際にこの油を大量に船上にこぼして行くので、うっかりしていると船が沈没してしまう。
だから、これに遭遇したら船頭は黙って笠でこぼれる油を汲みだし、海に捨てるものだとされる。
蛇の古名「朽ち縄」に由来すると思われるが、気の弱い者は対処できないことから「いくじなし」と言う言葉の語源になったと言う説もある。
鳥山石燕が『今昔百鬼拾遺』で「あやかし」の名で紹介した事から、一般には「あやかし」の名前の方が有名である。同項目も参照の事。
瀬戸内海ではナメソという、体から出る油をしごき落としながら漁船を越えていく扁平な大蛇が伝承されており、
際限もなく長いので、鉈で切らなければ船の中に油がたまって転覆してしまうという。正体は鮫の一種とされており、
陸の蛇であるナメラに由来するとも言われるが、播州には滅相に長いことからメッソゥと呼ばれている同種の伝承がある。