まーた子供扱い!
概要
冥国製Ⅸ号機関車に乗務するジェネリック・レイルロオドで、現役稼働する中では最古参級。みかん鉄道在籍時のパートナーは宗方甚六機関士。
宗方からの評価は「じゃじゃ馬」の一言。
レイルロオドを物扱いする文化を帝鉄から引き継いでいるみかん鉄道で長年働いていたため、レイルロオドを人間扱いする御一夜鉄道の文化に最初は戸惑った。
また、最初は「みかん鉄道に捨てられた」と感じていたため、乗務に不必要な範囲での共感を拒絶していた。それが解消した後も、後述の理由のため感情のごく表層までしか共感を許していない。
レイルロオドとしてはハチロクを超える古参のため、知識も経験も非常に豊富であり、更には常に最新の知見を学んでいる。実際、一度の線見から幾つもの問題点や懸念点を指摘したり、非常ブレーキ時にハチロクに適切な指示を出したり、接触時間が少ない筈の日々姫・凪の人物像を的確に評価してみせたり、御一夜鉄道保線部門に保線に関する専門的な指導を行なったりした。双鉄からは「教官に向いている」と評されている。なお、オリヴィの知識や処世術の大半は宗方から教わった物である。
性格は非常に朗らかであり、表情も多彩である。年下であるハチロクたちに子供扱いされるのは最初は気に食わなかったが、徐々に許していった。ニイロクの閉ざされた心を開くきっかけとなった。感情が昂った際には英語が出てくる。
御一夜鉄道移籍時に牽引してきた客車たちのことを「ボロチビ」と呼んではいるが、100年以上の相方であるため多くの愛情を注いでいる。
物として宗方の役に立てることが最大の喜びである。
地盤隆起による大規模な不陸が発生した際は、保線の専門家として宗方が呼ばれたことで非常に歓喜していた。宗方に声をかけられた際の笑顔は双鉄に「光がパッと差し込むよう」と評されていた。
日々姫・凪・ニイロクのチームが自分の助けなしでほぼ完璧な乗務ができるようになった際には「オリヴィ引退おめでとう!」と手放しに喜んでいた。
不陸の調査時には、共同井戸から引いた水に砂が混じっているのを発見し調査を重ねたことで地域の自主避難を促し、結果的に水蒸気爆発の被害から守った。そのことにより、全国報道されるほどの英雄扱いを受けた。宗方は「鉄道にとって幾十年ぶりの誇らしいニュース」と評し、後には帝営放送のドキュメンタリー番組まで作られた。
なお、旧型の冥国式レイルロオドであるためシーリング機能(マスター機関士との生殖行為を可能にする機能)は搭載されていないと噂されており、Hシーンも存在しない。
来歴
- 明智45年、冥国のオールドウィン・ロコモーティブワークスによって製造。最初は富士実延鉄道(当時)で活躍。
- 正和11年、鶴巳製鉄造船の専用線に移籍。車格が小さい、出力も低い、車軸配置も0-6-0と旅客向きの車体でありながら、貨物機を担当。この鶴巳時代に帝鉄から出向してきた宗方と出会う。
- 正和49年、みかん鉄道に移籍し、入換機を担当。
- 正和62年、御一夜鉄道に移籍。主にBBQ列車を担当。
冥国式レイルロオドの特徴
大量生産・大量消費をコンセプトとし、作りはシンプルで互換性を重視している。専門性を諦める代わりに汎用性を高めた結果、交代乗務を常とし、車輛や機関士が誰であれ組める。機関車もレイルロオドも消費・交換を前提とし、ボディもワンボディで済ませる。冥国は国土も広大で輸送密度も相当薄いのでそれで十分であった。冥国式ならば日本式のように「車輛・レイルロオドのどちらかが欠けたらもう一方は廃用」という事態にならないが、長期的に見れば日本式の方が優れている。
日ノ本では冥国式レイルロオドは非常に少なく、100年以上稼働し続けるオリヴィは言うまでもなく超希少である。
超長期間稼働による消耗
100年以上とあまりにも長い時間稼働し続けてきたため、オーバーヒートを度々起こしている。体温は平常時であっても40℃と、蒸気機関車レイルロオド基準の警戒域(41℃〜)にかなり近い値になってしまっており、通常の耐用年数(40年)を超えたレイルロオドですら4年に一度受ける程度の全般検査を、毎年旺宮で受けなければならない状態に陥っている。旺宮歴史鉄道館の館長を務める不死鳥博士からは、「いつ何が起きてもおかしくはない消耗状態」との見識をもらう。
終盤になって判明したことだが、サーキットブレイカー(損傷してしまうと復旧不能になる中枢部を異常から守るため、回路を遮断する装置)の稼働停止命令を拒絶し続けている副作用により、凄まじく強烈な痛みを感じ続けている。
オリヴィが非常に明るく振る舞っているのは、自分を騙すことで苦しみに耐えるためだったのである。しかし、彼女の処理能力は相当低いため、乗務に処理能力が集中することにより痛みや苦痛が剥き出しになってしまう。オリヴィは必死にそれを隠し、ハチロクには何の異常も感じさせなかったが、最新鋭の共感能力を搭載したニイロクには気づかれてしまった。その痛みは、帝鉄の断末魔の叫びを知っているニイロクをもってして「初めて体験させられる」と言わしめるほど鋭い。電車姫や登呂元技師による延命ケア・緩和ケア、宗方の御一夜来訪による幸福感によって一時は回復傾向を見せたものの、暫くして手に当たった雪が音を立てながら融解するほど体温が上がってしまった。また、タブレットそのものの消耗により、記憶が頻繁に飛ぶようになってしまっている。ハチロクに少し深い範囲での共感を許した時、浅い共感でありながらハチロクは呼吸できなくなるほどの痛みを感じた。オリヴィがハチロクを避け気味だったのは、このような状態で稼働し続けることを止められたくなかったからである。また残された時間が少ないと自覚した上で何もできない時間が生まれることを苦しく思っていたため、安静にすることを度々拒んでいた。
不可避の死が迫ってきていると自覚したオリヴィは、宗方に託された仕事を全うしようと無理矢理稼働を続けるが、不陸の原因であった水蒸気の爆発が起こった際に本来は有り得ぬ「突然の機能停止」が起こってしまう。猛然たる痛みへの恐怖によりフォースリブート(強制再起動)すら受け付けず、為す術なく体温が急激に下がっていく。『宗方に託された仕事を全うしたい』という想いが「稼働停止命令の拒絶」とそれに伴う苛烈な負荷を恒常的に発生させ続け、それは機能停止中でさえも発生し続けた。ハチロクはオリヴィの負荷を減らすため、苦痛の発生源である「心の奥深く」まで繫がる「タブレットレベル(全開放)」の共感を行う。ハチロクは厖大な苦痛に耐えながらオリヴィに呼びかけ続け、「共感を密にすることでオリヴィの安全を担保」し、結果的にオリヴィへの稼働停止命令を停止させた。
最期
正和63年11月、水蒸気爆発からの復旧後、御一夜-八ツ城間に改めてオリヴィの引退列車が走ることになった。Ⅸ号機関車によるみかん鉄道本線の走行は初めてのことで、オリヴィも宗方も「夢のよう」と溢していた。
オリヴィはⅨ号の運転台にて宗方の膝の上で丸まっていたが、奇跡は起こることなく、回復の兆しは全く見られなかった。しかし、本人の声は聞いている人が幸せを感じるほどに明るい。また、雪や噴火直後というマイナス要素があった上で、客車が満員になるほどの人がオリヴィの引退を見届けるために乗車してくれていた。
宗方が喚呼をするも、オリヴィはもはや体を起こせないため喚呼を合わせることができない。それでも、本人は宗方に頭を撫でられて嬉しそうであった。
鹿兒島駅では大廃線時代以前を想起させるほどホームが人で溢れかえっており、増結を余儀なくされた。その後も車輛増結を続けながら走る中、オリヴィは同じく乗務している日々姫・双鉄・ハチロクに対し、まるで遺言を残すかのように話しかける。
列車はオリヴィがことあるごとに自慢していた八ツ城海に差し掛かるが、彼女は潮の香りさえ感じられないのか、全く反応を示さない。
3人は初めて見る八ツ城海の夕日に心奪われるが、宗方の切羽詰まった声に現実に引き戻される。
オリヴィの瞳はもはや焦点を結ばず、小さな笑顔はそのままに手が落ちていく。
さよ、なら
good byeーMy Master
閉じられた瞳が開くことはなく、宗方の必死の呼びかけにも全く反応を示さない。
100年以上稼働し続けたレイルロオド・オリヴィは、最期まで楽しげな笑顔を浮かべて逝った。
宗方の慟哭に合わせ、Ⅸ号機関車は長い、長い汽笛を鳴らした。
終点まで残りわずかの地点であった。
その後
正和65年4月、オリヴィのサヨナラ列車のおかげで大人気となった小畑線に思わぬ乗客がやってくる。
Top of the ヒノモト!ヒノモトイチのシャソーだったね!!
宗方が引き連れるオリヴィに酷似した幼女は、レイルロオド・こだま。
電車姫が聞いた噂によると、『100年以上を走り抜けたレイルロオドのタブレットから全く新しいロオドコアが精製された』とのこと。
こだまは宗方のことを「マスター」と呼び、その度に宗方が否定している。
こだまはまだ真っ新に近い状態であり、自身が乗る車輛を決めてから教育訓練が行われる予定である。こだまは「乗務するならとっきゅーけー電車がいい!」という趣旨のことを言っており、史実の初代電車優等列車ー東海道本線電車特急こだまを連想させる演出となっている。
その日の夜、右田家に不死鳥博士が訪れる。
不死鳥博士の後ろに隠れる少女はこだまとは似つかないが、オリヴィと同じ瞳・声を持っていた。
不死鳥博士曰く、「貴重な一枚のタブレットからの二つのロオドコアの精製例」であり、教育しようにも「おうちかえる」しか口にしないため右田家に連れて来たとのこと。
おうち、ここ!
I'm Back Home!!!
余談
ルートについて
オリヴィが登場するのはハチロク√after『つないでいくレール』である。このルートでは「オリヴィの延命」という側面から、「レイルロオド種族説」をはじめとしたレイルロオドの核心に迫るストーリーが展開される。オリヴィとの交流に加え、それが双鉄-ハチロク夫婦の人生観にも大きな影響を与えることになる。二人は「子孫を残すこと」「命を繫ぐこと」の意味の一欠片を掴んだ、と回想している。
ボディについて
オリヴィのタブレットが2つのロオドコアに再精製されたのは先述のとおりだが、残された運転体・整備体のその後については不明である。こだまはオリヴィに酷似した見た目だが、完璧に一致するわけではないため、オリヴィのボディを転用したとは考えづらい。自然に考えるなら、宗方の自宅or旺宮歴史鉄道館に安置されたか、御一夜の資料館に展示されているかである。
鶴巳製鉄造船所について
モデルとなった浅野造船所(現・JFEエンジニアリング鶴見製作所)はかの有名なDASH海岸に隣接している。
現実の9号機関車について
9号機関車は112年経った現在でも明治村にて蒸気機関車として現役で活躍している(但し2023年より2年間オーバーホール予定)一方で現実の8620は静態保存である上に2024年には58654も引退し人吉にて保存される事となった為、皮肉なことに本編とは真逆の結果となった。