概要
ウエスタン式の馬術競技の一種であり、人馬が短時間で仔牛を群れから引き離す能力が競われるものである。
この競技は、もともとアメリカ西部の牧場で発展してきたものである。牧場では、予防接種、去勢、仕分けを目的として牛を群れから引き離す仕事、すなわち「カッティング」が馬に求められていた。この仕事をする中で、カッティングに最良の人馬を決める競技が自然に生まれてきたのである。そして競技規則は整備されていき、1946年にはカッティング競技の統括組織として全国カッティングホース協会 (National Cutting Horse Association, NCHA) が創設された。
カッティングホース(カッティング競技馬)にはクォーターホースが多いものの、アメリカンペイントホース(ピント)やアパルーサといった他の品種も用いられる。カッティングホースは、いかにして仔牛を群れに戻らないようにするかを直感的に理解しており、かつ競争心旺盛に見えるように訓練されているものとされる。
日本においてもウエスタン馬術は広まってきているものの、牛をも飼養している乗馬クラブ・乗馬牧場は少なく、競技としてのカッティングはほとんど行われていない。
競技概要
カッティング競技では、ねらった仔牛を速やかに引き離すとともに、牛の群れを騒がせないことが求められる。そのため牛の群れには並足かゆっくりとした早足で静かに分け入るが、群れの端ではなく十分に奥まで入っていかなければならない。群れに入り、馬場の中央に仔牛を引き離すまでは、騎手は手綱で馬の口と軽い接触を保つが、ひとたび引き離してからは手綱を緩めきり、片方の拳は鞍のホーンに置いてしまわなければならない(「ハンドダウン」という)。これ以降の手綱による扶助[1]は減点の対象となる。馬は引き離した仔牛に対し、群れを背にして対峙し、仔牛が群れに逃げ戻ろうとするのに合わせ、素早く左右に動くことでこれを防ぐ。これは馬が自ら行うべきであり、騎手の扶助は限定的でなければならない。仔牛が静止し、群れに戻ろうとしなくなったら、また群れに向かい次の仔牛を引き離す。競技には、カッター (cutter) と呼ばれる実際に仔牛に向かう選手の他に、ハードホルダー (herd-holders) と呼ばれる2騎の人馬が馬場に入り、カッターが仔牛を引き離している間、群れをまとめておく役を務める。競技者には2分半の時間が与えられ、その間に仔牛を概ね3回(2回でも構わない)引き離す。審判員は、60から80の点を与え、70が平均とされる。