概要
二式複座戦闘機屠龍の性能向上型「キ96」の開発指示を受け試作を行っていた川崎航空機に対し、1943年4月、これをベースに襲撃機を開発する指示が下り、開発開始したのが本機である(キ96そのものは優れた性能を示したが、陸軍の定見不足で試作3機に終わっている)。
同6月には高高度戦闘機型の開発指示も出され、前者が「キ102乙」、後者に「キ102甲」のキ番号が与えられた。
連合軍コードネームはRandy(ランディ)。
最初に試作されたのは乙型で、1944年3月に1号機が完成した。
基本的にはキ96の設計を引き継いでいるが、エンジンナセルなどがより洗練されている。
ただ、排気タービンの完成が6月になったため、乙型として製作された試作1~3号機は甲型の原型機として試験が行われた。
乙型の詳細はキ102乙の項目を参照。
後に甲型の緊急増産命令が出たため、乙型として生産された機体から改造して25機が製造されたものの、10機は排気タービンの不良から納入不可となっている。
丙型の開発指示が出たのは1944年11月で、機体設計をリファインされ、試作が開始されたが1号機が完成直前に空襲で損傷し、修理中に終戦を迎えている。
諸元
キ102甲 | キ102乙 | キ102丙(計画値) | |
種別 | 戦闘機 | 襲撃機 | 夜間戦闘機 |
形状 | 双発中翼単葉 | 同 | 同 |
乗員 | 2名 | 2名 | 2名 |
全長 | 11.45m | 11.45m | 13.05m |
全幅 | 15.57m | 15.57m | 17.25m |
全高 | 3.70m | 3,70m | 3.70m |
主翼面積 | 34.00㎡ | 34.00㎡ | 40.00㎡ |
全備重量 | 7150kg | 7300㎏ | 7600㎏ |
発動機 | 三菱 ハ112-Ⅱル | 三菱 ハ112-Ⅱ2基 | 三菱 ハ112-Ⅱル |
空冷複列星型14気筒 | 空冷複列星型14気筒 | 空冷複列星型14気筒 | |
(排気タービン装備)2基 | 2基 | (排気タービン装備)2基 | |
離昇1400馬力 | 離昇1400馬力 | 離昇1400馬力 | |
最大速度 | 610km/h(高度10000m) | 580km/h(高度6000m) | 600km/h(高度10000m) |
実用上昇限度 | 12000m | 10000m | 13500m |
航続距離 | 2000㎞ | 2000㎞ | 2200㎞ |
武装 | ホ204 37㎜機関砲1門(35発) | ホ401 57㎜機関砲1門(16発) | ホ155-Ⅱ 30㎜機関砲 2門 |
ホ5 20㎜機関砲2門(各200発) | ホ5 20㎜機関砲2門(各200発) | ホ5 20㎜機関砲2門 | |
ホ103 12.7㎜旋回機関砲1門(200発) | ホ103 12.7㎜旋回機関砲1門(200発) | ||
爆装 | 50kg爆弾4発又は | 50kg爆弾4発又は | |
800㎏爆弾1発又は | 250㎏爆弾2発 | ||
タ弾4発 | |||
生産総数 | 25機(乙から改造) | 215機(25機は甲へ改造、2機はキ108に改造) | 試作2機(完成せず) |
余談
本機の主翼は、もとを辿ると試作急降下爆撃機「キ66」の物の流用だったりする。
キ66→キ96→キ102と、基本的な主翼の設計は引き継がれており、さらにキ102を改造して「キ108」という与圧装備付きの高高度戦闘機が開発されている。
川崎では双発機において主翼設計の流用をしばしば行っており、軍が乱発する開発計画に対応するために、使える設計は流用せざるを得なかった川崎の事情もうかがえる。