日本語訳CV:山寺宏一
概要
『The Last of Us』の登場人物。シリーズ第一作目では主人公を務める。
ボストンの隔離地域で運び屋を営む壮年男性。推定50歳前後。かつてはシングルファーザーとして愛娘・サラを育てながら会社員として働いていたが、20年前に起きた感染爆発によってそのサラを喪い、自身も平穏を奪われた。その後は弟トミーを連れ、各地を転々としながらサバイバル生活を送る。
しばらくは弟と組んで略奪を行う等して食い扶持を繋いできたが、ある時、犯罪じみたやり口に耐えられなくなった弟に絶縁を言い渡され孤立する。以降は一人で生きてきたが、紆余曲折あってテスという女性と出会い、上述の通りともにボストンの隔離地域で運び屋稼業をするに至る。
仕事ではテスが指示や交渉を行い、ジョエルは用心棒として彼女の仕事をサポートする。ビルという補給係の仲間もいるが、ある事情から普段は別行動をしている。その実力からボストン闇市ではテスと共に「ヤバい二人組」として名の知れた存在となっている。
感染爆発前はギターを嗜んでおり、今でも弾き方は忘れていない様子。好物はコーヒーだが今となっては贅沢品なので、コーヒーメーカーを目にすると思い出して悶々としてしまう。
第一作目から十数年後が舞台の『part II』では、長い旅の果てに和解した弟トミー、同じく家族同然の存在となったエリーと共にジャクソンシティで暮らしている。
人物
性格
ひとことで言えば、冷酷だが仁義には厚い男である。
守るべき存在を失ったためか生きるために手段を選ばなくなっており、必要なら殺人や略奪といった悪事も平気で働く。テスと組んでからは生活が安定しているためかそういった無茶はしなくなったが、それでも裏切者や自分達の障害となる者に対しては容赦しない。
意味のない善行、利益にならない行動も好まない。例えば一般人が感染者やハンターに襲われていても、理由がなければ基本見捨てることを選ぶ。
しかし一度認めた相手には優しく、仲間のためなら自ら危険な役目を買って出るほか、どんな状況でも仲間を見捨てて逃げることはしない。ほかにも自分以上に人間不信かつ偏屈者のビルを「いい奴だよ」と称したり、考え方の違いから喧嘩別れしたトミーのことをあまり憎んでいなかったりと、根っからの悪人でないことは確かである。エリーに対してもはじめは冷淡だったが、長い旅のなかで友情を結んでからは真摯な態度で向き合うようになった。
また作中では絶望から一家心中した家族の遺体や、子供を軍に殺され復讐に走った親の手記を見て感情を漏らす場面があり、ここからも彼が冷酷な殺人マシーンでないことが読み取れる。
亡くなったサラのこと等、自分の過去を詮索されることを嫌がる。一方で20年前に娘から誕生日プレゼントとしてもらった腕時計を今でも肌身離さず持っていたり、自分の思い出をエリーに語ったり等、過去を捨てきれていないような描写もあり、上述のエピソードと合わせてその内面は非常に複雑だと言える。
敵からすれば隙のない性格だが、悪知恵が働くタイプではないためか交渉や取引が苦手という弱点がある。テスが賄賂や脅迫といった駆け引きに長けているのに対し、ジョエルはゴリ押し一辺倒で、命乞いをする敵は迷わず殺し、情報も拷問じみたやり方で無理やり吐かせる。このスタイルが仇となり、ハンター集団などの組織に「仲間の仇」として目を付けられてしまうことも多い。実際、それが原因で物語後半でエリーと共に危機に陥っている。
戦闘力
推定50歳前後だが、それに見合わないほど極めて強靭なフィジカルを持つ。
喧嘩慣れしているためか素手同士の戦いではほぼ無敵で、とっさの機転でコンクリートや鋭利な角といった周囲の危険物も利用するなど判断力にも優れる。鉄パイプや木材があればクリッカーにも立ち向かうことができ、ただのレンガや瓶ですらジョエルにとっては使い捨ての必殺武器となる。
(人間の頭蓋骨は石と同じぐらい硬いので、レンガや瓶にぶつけたぐらいでは死なない。つまりジョエルの怪力による衝撃で敵は絶命している。クリッカーもライフル弾を頭部に受けても立ち上がれるほどタフで、それを木材で叩きのめすジョエルはやはり異常と言える)
銃器の扱いにも長けており、ハンドガンやショットガンはもちろん、兵士でなければ触れる機会のないアサルトライフルやスパイパーライフルまで使いこなす。最終的には複数の銃火器や飛び道具を携行する「歩く武器庫」と化す。これでその辺で拾ったジャンクで修理や改造もできるのだから凄い。
その人間離れした戦闘能力を発揮する姿はまさに人間凶器。作中でも「イカれた男」と称されるほか、あまりのタフガイぶりが一周まわってシュールに見えるためかプレイヤーからも「死神」呼ばわりされている。
隠密行動も得意で、序盤から重宝するステルスキル(絞め落とし)をはじめ、背後から無音で忍び寄る摺り足、聞き耳で敵の位置を特定するといったスキルも備えている。
しかし「現実に近い」がコンセプトの難度グラウンドだとショットガンやライフルを受ければほぼ即死なほか、隠密も遮蔽物がなければすぐ見つかり、聞き耳に至ってはただのフリ(効果なし)となる。上記の超人的強さは主人公補正によるところが大きいようだ。
(逆に言えば異常なまでの怪力、銃火器の知識、無音の忍び足等は本物ということになる)
ゲームにおいて
Part I
反体制組織「ファイアフライ」のリーダーであるマーリーンからの依頼で、ある場所で待機しているファイアフライ小隊に少女エリーを送り届けるという前代未聞の仕事をこなすこととなる。
近くの議事堂に送り届けるだけ(それでも危険)というシンプルな内容で、不法脱出の現場を軍に取り押さえられるというトラブルはあったが、何とか乗り越え目的地に到着する。しかし引き取り先であるファイアフライ小隊は軍の襲撃で全滅しており、相棒テスも道中で感染者に噛まれて余命幾ばくもないことが判明する等、仕事は事実上の失敗となった。
本来なら諦めて帰るべきところだったが、エリーが感染症の抗体を持っているという衝撃の事実と、テスの強い願いもあってジョエルは仕事の続行を決意する。テスと別れ、エリーを連れてファイアフライ本隊を探す旅を始めることに。
その旅の道程は困難の連続だった。感染者が蔓延る危険地帯を通り抜けたり、生きるために人間狩りさえ行うようになった異常者のコミュニティに狙われたりと、何度も命の危機に晒される。話の分かる生存者と出会い仲間が増えたかと思えば、トラブルによって死別するなど悲劇も経験する。ファイアフライ本隊の手がかりも掴めず、彼らの居場所だと思って辿り着いた場所が実はそうではなく、旅のやり直しを迫られることもあった。
しかしそんな辛い旅路の中にも「エリーとの友情」という希望があった。最初はつらく当たっていたものの次第に距離が縮まり、お互い不器用ながらも確かな絆そして信頼を構築していく。エリーとの旅を通じて絶縁していた弟トミーとも再会する。ある時には瀕死の重傷で生死を彷徨っていたところをエリーの尽力で救われる等、様々な出来事を経て、やがて本当の家族のように想い合う仲となる。
そして紆余曲折の果てに、ついに二人はファイアフライ本隊のいるソルトレークシティの病院まで辿り着く。しかしそこで二人を待っていたのは、感染症の抗体と引き換えにエリーが死ぬという想定外の末路であった。覚悟を決めたエリーと違い、ジョエルは激しく葛藤する。世界のためにエリーの犠牲を認めるか、それとも助けるか。
究極の選択を迫られたジョエルはエリーを助けること選んだ。たとえそれがエリーの覚悟を無視し、感染症の治療法という希望が失われるとしても。ジョエルはエリーを守らんとするファイアフライ兵士たちを躊躇うことなく次々に殺害、果ては脱出路に先回りしていたリーダーのマーリーンすらも無残に殺し、麻酔で昏睡状態のエリーを連れてソルトレークシティを脱出するのだった。
目覚めたエリーには「他にも抗体を持っていた子供達がいたから」と見え見えの嘘をつき、二人で弟トミーのいるジャクソンシティへと帰る。事情を察したエリーから真実を教えるよう頼まれてもあくまで嘘を貫き、たとえそれが将来自分達の関係を崩壊させるとしても、決して真実は明かさなかった。
Part II
前作のエンディングで帰還したジャクソンシティでエリーと共に暮らしている。
還暦近い年齢を迎えて白髪も多くなったが、肉体の頑健さは相も変わらずの様子で、ジャクソンシティの守り手として現在も精力的に活動している。前作の嘘が原因でエリーから失望されて関係は一度冷え切ったが、当時の葛藤と真意を汲まれてもいることから、お互い素直になれず微妙な距離感のまま和解しきれずに居た。
しかし、目的のためには手段を選ばないかつての苛烈な行いが生んだ多くの敵の中で、とある存在が復讐のためにジャクソンシティを訪れたことが、ここまで多くの修羅場を潜り抜けて来たジョエルの運命をついに決定付けることとなる…。