ゾーン&ソーン
おじゃるとごじゃるのひと
作中最大の大国アレクサンドリア王国に代々仕えてきた宮廷道化師。
サーカスのピエロの様にフェイスペイントを施しており、ゾーンは青、ソーンは赤で見分けられる。
逆に色の違いを除くと身長や身振り手振りまで何もかも同じで見分けがつかない。
また、どちらも子供の様に小柄で言動もそれぞれ「〜でおじゃる」「〜でごじゃる」と何処か幼稚な雰囲気を漂わせているが、何と御年88歳という老人コンビ。
ブラネ女王生誕時に既に50歳手前だったというのだから、全会一致でアレクサンドリアのでぇベテランと呼んでも差し支えないキャリアを誇っている。
王国内では抜きん出ているわけではないが意識封印の魔法や召喚獣抽出など地味ながら緻密なコントロールを要求される魔法に秀でており、クジャの奸計に踊らされて他国へ戦争を仕掛けるブラネ女王の手先となって方々で暗躍を続けて来た。
作中ではやや間の抜けたBGMと漫才のようなやり取り、そして大袈裟なリアクションでユーモラスに写っているが、ブラネ女王やクジャの影に隠れて手を染めて来た悪事は枚挙に暇が無く、同時に主体的な考えを持たずに権力のあるものに盲目的に従う保守的な考え方から悪事に手を染めても罪悪感すら感じていないなど、作中トップクラスの外道でもある。
若い頃の生い立ちや環境は不明だが、長年王国内の厳しい身分制社会を生きていたためか権力者の後ろ盾を死守するという保守的な思想が根強く、自主的な考えは一切持たない。
むしろそうして必要に応じて従うものを変えて行く事で時勢を上手く乗り切れる自分達を賢いと自画自賛している節すらある。
一見すると権力者の命令に一切の反論なく従う姿はスタイナーやベアトリクスの様に忠義を全うする事を第一に考えている忠臣に見えるかもしれないが、実際は自分たちの身の安全さえ確保できれば周囲がどうなろうとどうでも良く、上位の権力者が現れれば平然と掌を返して裏切るなど忠誠心などはカケラも持っていない。
代々アレクサンドリアに仕えてきたのも最も強大な国だからに過ぎず、それ以上の権力者が現れればすぐにでもゴマを擦って懐柔にかかる。
そのため軟禁状態のガーネットに対してもブラネ女王の命令を盾にして高圧的に見下した態度で接し、召喚獣の抽出とその後の処刑にも何ら疑問すら持たなかった。
それは一連の行動を「ブラネ女王の命令だから自分たちは悪くない」と説明出来るからであり、ジタンたちにガーネットを奪還された責を問われクビにされた際は大慌てでクジャに取り入って立場の回復を図った。(その間に即位したばかりのガーネットに掌を返して取り入ろうとしたが、タンタラスの厳重なパトロールを前に断念している)
魔術こそ使えるものの魔導士ではなく道化師と名乗っている様に個々の魔力、とりわけ戦闘においては大した脅威ではない。
一応それぞれが戦闘用魔法として「プチメテオ」「プチフレア」を使用するものの、発動には相方からの魔力供給が必要で、その間に攻撃されたら不発になるという、とても戦闘の役には立たない代物である。
加えて高齢であることも災いして体力も低く、不意を突かれたとはいえマーカスとブランクに背後から殴られて昏倒するという脆弱ぶりで有事の際の戦力とはならないだろう事は明らかである。
リンドブルムへの進攻を前にブラネ女王が用心棒と入れ替わりで解雇を通達したのも、戦力としては到底期待できず、加えてこちらが劣勢になった瞬間にでも裏切りかねない危険分子を排除するためだと考えると非常に合理的な人事判断と言えるだろう。
クジャとブラネの他国侵攻とそれに伴う黒魔道士兵生産計画を最初期から命じられて暗躍。
後にガーネットが城を出た際にいち早く気づいて報告し、その後追跡できるように精鋭部隊である黒のワルツを配備していた。
尚、この時に黒のワルツを使えばガーネットを殺すなど容易いと口走っているように当初からガーネット殺害も視野に入れていた事がうかがえる。
その後は黒のワルツを率いて魔の森から抜けたジタン一行を氷の洞窟からダリの村、カーゴシップにかけて襲撃。
この時、最後に繰り出した3号の動向を小型艇で監視していたが、暴走に陥った3号を見て慌てて逃走。
その後もブルメシアやアレクサンドリアで黒魔道士兵やモンスターを幾度となくけしかけるも全て倒され、結果としてその場にいたベアトリクスやクジャに半分泣きつく羽目になっている。
この様に他国侵攻に向けた黒魔道士兵生産計画に早くから着手していた事とそれをスタイナーらに秘匿にしていた事から
ともすればクジャの計画を最初に聞かされ同調してブラネを唆すなど手を回していた可能性がある。
その後はブルメシア侵攻の真実を問いただすべく戻ってきたガーネットを軟禁。
一臣下にもかかわらず王女であるガーネットをお前呼ばわりし、態度を咎められても
「うるさいでおじゃる!」
「今のお前は何の権力も持たない子娘でごじゃる」
と舐め腐った態度で挑発しながらクジャの下へ連行し、その後は彼女の体内から召喚獣を抽出した。
当初は恐らくそのままブラネが戻り次第ガーネットを処刑するつもりだった様だが、駆けつけたジタンたちが襲撃。
迎撃しようとするも上記のプチメテオ・プチフレア戦法でジタンたちに敵うはずもなく早々に逃走してベアトリクスにチクった
この時、ブラネ本人からガーネット処刑を言い渡され動揺している彼女を引き摺り出すために「スタイナーが裏切り、ジタンたちを利用してガーネットを誘拐しようとしている」と嘘八百を並べ立てるなど詭弁も立つ。
しかしそれがバレてガーネットの意識を取り戻そうと意識封印の解除を試みるベアトリクスに
「我々の魔法はお前には解けないでおじゃる!」
「無駄な努力でごじゃるーー!!」
と鼻で笑ってヤジを飛ばした。物理的に妨害をしなかったのは他ならぬベアトリクスの強さを知っているからだろう。
そして意識を取り戻したガーネットを捕まえるべくモンスターをけしかけるも、真実を知りジタンたちの味方になったベアトリクス、更にマーカスと石化から復活したブランクの妨害を受けてガーネット達は脱出。
自分たちはブランクに殴られたせいで一連の事が終わるまで気絶するという醜態を晒した。
結果、追手の用心棒を招き入れたタイミングでクビ宣告を受けた。
ブラネ戦死後、即位したガーネットに取り入ろうと夜のアレクサンドリア城下町に現れるも、以前自分たちを殴り倒したタンタラスを発見し当てもなく逃亡。
この直後にクジャがバハムートでアレクサンドリア襲撃を開始したことから、ここで二人がクジャに鉢合わせし、咄嗟に家来にしてくれと頼み込んだようだ。
そしてこの選択が、彼らの行く末を決めることとなった
クジャの家来になった事で、結果的にアレクサンドリア襲撃から逃れた二人は、その後捕えられたジタンのウイユヴェール攻略の監視として従事する事になる。
ガーネットの即位時から姿の見えなかった因縁のある相手との鉢合わせに驚くジタンに、二人はブラネ以上の力を持つクジャに従っていれば今後も安泰だとほくそ笑む。
だが反省のかけらも見えない彼らに対し、ジタンが向けたのは怒りではなく憐れみだった。
「自分の意思も持たず、主人のやる事に疑問も持たず、ただ媚び諂ってるだけか。何も考えてないんだな。まるで人形だな」
その言葉は、これまで保身のために幾度も悪事に手を染め、プライドをかなぐり捨てて主人に仕えてきた自分たちへの最大の侮辱であった。
作中において、彼らのアイデンティティが描写されたのはこの瞬間が唯一無二であった。
もしこの時、二人が僅かでも冷静にジタンの言葉に耳を傾け、クジャの人間性と自分たちの置かれた状況を客観視、あるいは疑問視していれば、多少なりとも末路は変わっていたかもしれない。
だが二人は激昂した末に耳を貸さず
「人質がいる事を忘れるなでおじゃる!」
「クジャ様の気分次第でいつでも殺せるでごじゃる!!」
と強引なやり方でジタンを黙らせた。
その後、ガーネットと同じ召喚士の力を持つエーコに目をつけたクジャの命令でアジトから脱出を図った彼らの一瞬の隙をついてエーコを拉致。
ガーネットと同じ容量で召喚獣を抽出しようとしたが、エーコの服に隠れていたモグの抵抗に遭い失敗。
そのまま目を覚ましたエーコの究極術テラフォーミングをもろに喰らい、ノックアウトした。
召喚獣を抽出出来なかったばかりかエーコの身柄も奪還される醜態。
かつてブラネに見切りをつけられた時と同じ状況に陥った彼らの前に、クジャはいつもの笑みを浮かべたままこう告げた。
「この双子にはもう少しだけ役に立ってもらうとしよう。……最ももう双子じゃなくなるけどね」
何とクジャは瀕死の二人の体を魔法で操り、更に猛毒のウイルスに感染させて2人を変異融合させてしまった。
溶けかけた人体同士が融合したかのような醜悪な化け物となった彼らは、最早人としての理性すら失ったモンスターとして体内のウイルスと生成される猛毒で眼前のジタン達の始末にかかる。
だがやはり、これまで数多の強敵を倒して来たジタン達の敵ではなく、生前の悪行三昧による人望のなさから救いの手も差し伸べられず、倒される事となった。
尚、戦闘中にせめて一矢報いようとしたのか、ジタン達にウイルスを撒いて感染させようと目論む。
「コレデ……オマエラモ……ウイルスニ……」
自分達と同様に怪物化できると踏んでいたのかもしれない。
だがウイルスがどう作用したのか、ウイルスはジタンたちに経験値が入らないという効果しか及さなかった。
それものちに市販されるワクチンであっさり解毒できる程度の。
死力を尽くして放った最後の攻撃ですらこの程度の効果しかなかった。
限りある命だからこそ未来に何かを残す生き方を模索するこのFF9という世界において、
信念を持たず、或いは自分を持たず、ただ恩恵にあやかるために権力者に媚び諂う腰巾着
であり続けた彼らは、皮肉にも恩恵も権力も人としての人生すらも奪われて、何も残せぬまま忘れ去られるという因果応報の末路を迎えた。
通常は皮肉な末路も含めてFF9のコメディリリーフに一役買っている彼らであるが、実はある縛りプレイに挑戦した際、彼らこそが最大の敵となる。
プレイ経験者は予想がつくだろう。
そう、エクスカリバーⅡ入手のための12時間プレイ挑戦時だ。
というのもコイツらの登場シーンはやたら同じ文言とやり取りを繰り返すので無駄に長い。
しかも会話をスキップする事も早送りすることもできないため貴重なプレイ時間が容赦なく削られてしまうのである。
その最たるシーンが上述のエーコにぶちのめされるシーンであり、演出も相まって軽く2〜3分を持っていかれる。
ゲーム全体で見ると2〜30分を消費してくる彼らこそ、エクスカリバーⅡ入手の大きな障壁となっているのだ。