「テコンV90(ナインゼロ)」とは、韓国のロボットアニメ「テコンV」が登場する劇場アニメである。
1990年に公開された。
あらすじ
山中にて、修行しているフンは、かつての過ちを思い出していた。
過去にフンは、ビル火災の現場にて。テコンVの故障により、取り残された少女を助けられなかったのだ。
マスコミにも非難され、フンはその鬱憤を修行にぶつけていた。
やがて、フンを倒し名を上げんとする武道家たちが、山中に現れる。が、突如として現れた謎の飛行物体は、その武道家たちを連れ去ってしまった。
そして、フンの近くに宇宙船が墜落。フンは宇宙船の残骸から、美少女・メリを助け出す。
彼女と楽しい時間を過ごすフン。だが、メリは宇宙から接近する謎の物体が遣わした、スパイアンドロイドであった。
その目的は、「テコンVの秘密」を探る事。
フンのガールフレンドのヨンヒは、その事に気付き始めるも、それが原因でフンとの間に亀裂が入ってしまう。
その頃、宇宙の敵の本拠地では。
誘拐した武道家たちからデータを抽出。それを元に、格闘ロボットを開発していた。
やがて、敵の本拠地は地球に接近。ヨンヒは戦闘機に乗り込み、単独で迎撃に赴く。
だが、敵ロボットにより返り討ちにされ、撃墜されてしまった。しかし、メリの正体に気付いたフンが、テコンVで駆けつけヨンヒを救出する。
誤解が解けた二人は司令を受けて、敵の本隊が駐留している二重連小惑星へと向かった。
だがテコンVは、メリが仕掛けていた妨害装置により、操縦不能に陥ってしまった。
テコンVは鹵獲され、敵の管理下に。
しかし小惑星内では、敵の首領に酷使されていた宇宙人および科学者の一部が、反乱を起こし、彼らにフンとヨンヒはかくまわれる。
敵に寝返ったふりをしたユン博士により、妨害装置は除去され、フンはテコンVで反撃する。
向かってくるのは、武道家たちのデータから作られた格闘ロボットたち。中国拳法、柔道、剣道のデータを入れられた三体のロボットと戦うテコンV。
ユン博士から送られた新エネルギー「ナインゼロ」を受け、そのパワーでロボットを撃退するテコンV。
敵の首領もまた、フンを好きになったメリが裏切り、自爆した事で倒される。その正体は、かつて地球を追放された科学者・カーフ博士だった。
こうして、テコンVは勝利。自爆して果てたメリの、ただ一つ残った心臓回路が回収され、フンたちは地球への帰路に就くのだった。
作品解説
韓国にて、1976年に公開された「ロボットテコンV」。当初は韓国内で大人気を博すも、徐々に人気は低下。後続作品の内容もあまり良いとは言えず、低迷した状態が続いていた。
監督のキム・チョンギは、82年及び84年のテコンVが興行的には成功した事から、また、別作品「ウレメ」シリーズが人気を博した事から、テコンVの新作を製作。それが本作である。
本作は、人間の登場するドラマ部分を実写、ロボットの登場するシーンをアニメで、それぞれ描いている(ボーンフリーやダイバスターの手法を、逆に用いたようなもの)。
これは、キム・チョンギ監督が本作以前に製作した「ウレメ」シリーズの手法を踏襲したもの。経費削減のための処理であり、この方法で撮影された「ウレメ」シリーズはヒット。以後、8作まで作られた。
内容もまた、「テコンV」という作品自体の人気下落に歯止めを止めようと、一作目のリメイクといった内容になっている。
内容的にも、それまでの作品から世界観がリセット。テコンVは90版のデザインで、過去には既に活躍しており、社会的にも認知されている。テコンV自体のデザインも、リアルロボット路線のそれに変更。
主題歌も刷新し、ラップ調に。
様々な工夫が為されてはいるものの、76年当時と90年当時では世間の状況が変化している事などから、人気を取り戻すまでには至らなかった。
結局、本作がテコンVの最終作となり、以後は新作は作られていない。
新作および(2008年の)完全実写作品など、何度か復活の話は持ち上がっているものの、実現せずに現在に至っている。
登場人物
- フン
主人公。
かつて火災の現場で、テコンVの故障により少女を救えなかったという体験をしている。そのため、世間から離れて山中で修行していた。
- ヨンヒ
フンのガールフレンド。戦闘機を駆りフンとテコンVをサポートする。
- チョリ
ロボットに憧れ、着ぐるみを着ている少年。本作でも着ぐるみとともに登場。胸部分からコショウ爆弾を放つギミックも披露。メリとは心通わせ、ラストには泣きながらメリの心臓回路を拾う。
- メリ
本作でも、当初はスパイとして登場。しかしフンに惚れて裏切るという、過去作と同じ運命をたどる。自爆して敵の首領=カーフ博士を葬るが、心臓回路のみが残り、チョリと博士に回収される。
登場メカ
- テコンV
本作では、背中に翼が付き、身体中に火器を搭載した戦闘マシン然としたデザインになっている。
テコンドーも用いるが、デザイン変更も相まって、「テコンドーを用いるロボット」としてのインパクトはやや弱い。
公開当時、このナインゼロ版の玩具が発売されている。
※これまでは、過去には82年および84年のテコンVの玩具は、日本のクローバーのザブングルSTD版、およびタカラのダイアクロン・ダイアバトルスを、それぞれ流用した玩具が出ていた。新規に製造され発売されたのは、このナインゼロ版から。
動画
テコンV90OP
関連作品
テコンVシリーズのキム・チョンギ監督作品。
85年公開。
超能力を持つが、間が抜けている青年・ヒョンレは、瀕死の宇宙人シーメンより超人・エスパーマンへの変身能力を授かった。シーメンの娘・デイリーと、シーメンが残した変形ロボ・ウレメとともに、ヒョンレは悪の帝王・ルカと戦う。
ウレメは「忍者戦士飛影」に登場する「鳳雷鷹」をそのまま流用。さらに経費削減のため、「人間部分は実写」「ロボ部分はアニメ」という手法を用いていた。
主演は、当時韓国内で人気のコメディアン、シム・ヒョンレ。人気作品となり、8作まで作られた。
この作品の成功により、当時の韓国内では「お笑いタレント主演の、ロボ部分・メカ部分はアニメ、人間部分は実写」という作品が、大量に作られている。