概要
1955年から1964年までの「夕日町三丁目」(東京都郊外と思われる)を舞台としており、自動車修理業「鈴木オート」を経営する鈴木一家ほか、この町に暮らす人々の暖かな交流を描くドラマに仕上がっている。一貫したストーリーは無い、一話完結型の作品。
人情噺や昭和ノスタルジーが描かれる作風であること、後述の映画版ではどちらかというとノスタルジーが物語の中心になっている節があることもあって、多くの人は「昔の方が良かった的作風」とよく思われるが、実は昭和ノスタルジーで無視されがちな舞台となった昭和30年代や高度経済成長期の中にある現在から見ると不便な一面や欠点そして社会問題がきっちり描かれている。そして『戦後の爪痕』や『人の死』や『その時代の悲哀』等の重いテーマもキッチリ描かれている。たまにSFチックな事もあったりと、三丁目の夕日は単純な「懐古作品」にとどまっていない。
劇中で描かれる『戦争の爪痕』描写の一例として、鈴木一家は神田川沿いから夕日町に引っ越してきた為、夕日町で起きた不発弾騒動で一平の父・則文は「東京大空襲では自分がいたところは大変でしたが、こちらはそこまで酷くなかったんでしょう?」と医者の宅間先生に聞いたが、宅間先生曰く「とんでもない!ここもかなり酷かった」と三丁目も東京大空襲の甚大な被害を受けた事を語っている。そして宅間先生はその空襲で妻子を亡くしている。
また、タバコ屋の店主のおばあちゃんの太田キンは一人息子を戦争で亡くしているが、遺骨が発見されていないため、今もどこかで生きていると信じている。
テレビアニメ
グループ・タックの手によってテレビアニメ化された事がある。
1990年10月から1991年3月にかけて、毎日放送制作ホスト・TBS系列全国ネットで全18回×2話が放送された。その後1991年4月から半年間は毎日放送関西ローカルで放送されたが、新作は僅か8回のみで、残りは全国ネット時代の再放送だった。
なお、2003年10月から2004年3月にかけて北海道放送とTOKYOMXで全26回コンプリート放送を実施している。
1980年代からアニメ化の話はあったが、子供にはわかりづらい等の理由で長年棚上げとなっていた。
本編の背景説明無しに物語を始めたのがまずかったという指摘だけで無く、秋山宇宙飛行士や湾岸戦争関係の特番等で十分に放送されず、一方的に打ち切られ、その後TBSと毎日放送がアニメを巡り暫く対立したらしい。この作品を放送した金曜夜7時台前半でその後放送したアニメのホスト局がCBCになったのはそのためか。
また、全国ネット時代は最後まで金曜夜7時の放送だったが、一時期Wikipediaで「91年1月〜3月は「サザエさん」の裏の日曜日夕方6時半へ移動していた」と言うデマが記入されていた時期もあった。
実写映画
2005年には『ALWAYS 三丁目の夕日』というタイトルで実写映画化され、大ヒットを記録した。2007年にはその続編として『ALWAYS 続・三丁目の夕日』が製作された。また2012年には『ALWAYS 三丁目の夕日'64』が3D映画として公開された。
佐藤直紀によるメインテーマはバラエティ番組などで昭和ノスタルジーを取り上げた際に多く用いられる。
タイトルバックは昭和30年代の東宝映画作品に多く見られた「東宝スコープ」のタイトルマークが使用されている。
前述の通り原作とは異なりノスタルジー描写を中心にした人情劇の作風であり、特に鈴木家を中心に登場人物の設定変更が激しい(例えば父親の鈴木則文は原作とは違い頑固かつ短気、キレるととてつもない力を発揮するなど)。
そのためか公開当時に「ビッグコミックオリジナル」に掲載された書下ろし短編は原作の主要人物である六郎がどこからかやって来た謎の観光客に文句を言われるという原作との設定変更を題材にしたブラックユーモアになっていた。
もっとも宅間が妻子を亡くしている描写など原作でも描かれていた戦争の爪痕や昭和30年代ゆえの悲哀などもシリーズを通して描写されている。
出演者
鈴木則文:堤真一
鈴木トモエ:薬師丸ひろ子
鈴木一平:小清水一揮
星野六子(ほしのむつこ):堀北真希
石崎ヒロミ:小雪
古行淳之介(ふるゆきじゅんのすけ):須賀健太
大田キン:もたいまさこ
宅間史郎先生:三浦友和
宅間の妻:麻木久仁子
宅間の娘:重本愛瑠
川渕康成:小日向文世
佐竹幸弘:小木茂光
古行和子:奥貫薫
静夫:石丸謙二郎
劇場版の小ネタ
- 『続・三丁目の夕日』の冒頭で映画配給会社つながりでゴジラがゲスト出演する(結局は夢オチだったのだが)。なお、実写版の監督を務めた山崎は実際にゴジラシリーズのファンであることを公言しており、後に西武園ゆうえんちのアトラクション「ゴジラ・ザ・ライド」の制作を経て、2023年11月3日(いわゆるゴジラの日)公開のゴジラ映画の新作『ゴジラ-1.0』にて監督を務めている。
- なお、山崎は1作目で映画が完結すると思っていたため2作目の制作には乗り気ではなく、「映画の冒頭でゴジラを出させてくれるなら引き受けてもいい」という条件でオファーを受けたという。より正確には、「無茶苦茶な要求をすればさすがに向こうも折れるだろう」と思って上記の条件を提示したが、そんな山崎氏の目論見に反して東宝側が許可してしまったために結局引き受けることになってしまったというのが真相らしい。
- 元々ゴジラが大好きであったこともあり、ゴジラの出演シーンを描くのはとても楽しかったが、一方で、2分ちょっとの出演シーンを仕上げるだけで半年も費やしたことでゴジラをVFXのみで描くことの難しさも痛感する等一種の挫折も味わったとのことで、この後、山崎は(何度か監督をやってみないかオファー自体はあったようだが)ゴジラ関係の仕事からしばらく距離を置いたという。
- なお、このシーンでは「ゴジラが乗り物を放り投げる」「尻尾で建物を薙ぎ払い、倒壊した建物の瓦礫が逃げる人々に降りかかる」という、後の『ゴジラ-1.0』とも共通する演出が既に見られることがわかる。
- 『続』の年代設定は1959年だが、『続』が公開された2007年同様ゴジラシリーズが制作されていない「休眠期間」である。
- 第1作の年代設定は1958年だが、本来はその翌年である1959年に生産を開始したダイハツ・ミゼットMP型が古びた姿で登場する。1958年当時のミゼットはバーハンドルのDK型である。
- 阿部秀司プロデューサーは「古き良き時代の懐かしさ」を求めてあえて昭和30年代の象徴的なオート三輪であるミゼットMP型を古びた姿で登場させた旨を語っている。
- 都電はあらかわ遊園に保存されている6000形をCGで補正して昭和30年代の姿を再現している。『続』の中盤からキャピタルクリーム地に赤帯の塗装の車両が増え始め、ラストシーンでは全車両がキャピタルクリーム地に赤帯に変更されていることで年月の変化を表現している。
- 『'64』公開時の舞台挨拶で茶川役の吉岡が「この映画は薬師丸さんが『自分が生まれた時代を観たい』といった一言から始まった。僕は大阪万博の1970年なんで関係ないですけど」と語ったことから、山崎は「大阪万博の話をするならその間の時代(1960年代後半)でエピソードを探して、満を持して万博の話を」と次回作を想起させる発言をしたが以降特に続編の動きはない。
関連タグ
四丁目の夕日:此方は昭和30年代の暗黒面を描いた漫画である。
ザ・ファブル 殺さない殺し屋:2021年公開の岡田准一主演映画。この映画でも宇津帆役を演じた堤真一氏が助演賞を受賞している。劇中では当初鈴木則文と同じく人当たりの良い人物として描かれていたものの、それはあくまで表向きであり、本性を露にした後は則文役を演じたとは思えないほどの悪役・下衆っぷりを演じた。また、偶然なのか何の縁なのかは不明だが、彼に雇われた殺し屋の名前が「鈴木」である。
ミラクル☆ガールズ:本作アニメ版と同様、背景説明無しに本編を開始した共通点があったが、此方は本編途中の回想と言う形でプロローグや背景説明を解説し補完した。