概要
学名:Dioscorea bulbifera
生態:蔓性多年草
生息地:山野、川岸
インド、中国、マレーシア、オーストラリア、熱帯アメリカ、アフリカなどが原産地で、日本では関東地方以西に分布している。
名称の由来は、蔓が何首烏(かしゅう)、つまりツルドクダミ(タデ科)に似た見た目をしており、イモが苦いことによる。
葉は大きなハート形で互生し、切れ込みや毛がない。蔓は全長およそ5m。雌雄異株で、夏に直径2mmの白い花を咲かせる。ヤマノイモ科の植物の例に漏れず、花後、葉の付け根にむかごをつける。
ヤマノイモ(自然薯)やナガイモ、イチョウイモ(大和芋)などのムカゴは丸い形状で表面はなめらかであるが、ニガカシュウのムカゴは表面がゴツゴツしている。
利用
本種のむかごは苦味が強く、食べた人の話によれば「苦すぎて舌が痺れた」という報告がある。このため、多少の有毒成分を持っていると思われる。サバイバルゲーム感覚でみだりに食用にするのは控えるべきである。また、根茎のアクを抜いて食用にすることもあったが、そのアク抜きは大変手間がかかるので、お勧めしない。
近縁種
ニガカシュウの近縁にカシュウイモ(D.bulbifera L. form. domestica Makino et Nemoto)があり、一説によれば、カシュウイモは本種、すなわちニガカシュウの栽培品種でないかと言われる。草姿はニガカシュウに似るが、本種のムカゴや根茎は食用にでき、茹でて塩をつけて食べる他、炊き込みご飯にもする。また、飢饉で作物が満足に収穫できないときには救荒植物としての顔も持っていた。植物学者の牧野富太郎は「食用にはなるものの旨くない」と述べており、常食するものではなかろう。
江戸時代後期の農業の教科書「成形図説」には図入りで紹介されている。
近年珍野菜ブームで話題を呼ぶのが宇宙イモである。本種のムカゴはかなり巨大になり、大きいものは長経10センチ以上で、300グラムもの重さである。食用にするのは主にむかごであるが、根茎も普通のナガイモや自然薯のように食べられる。
園芸通販店では宇宙イモを「カシュウイモ」の名前で販売していたり、草姿もカシュウイモに酷似していることから、宇宙イモはカシュウイモの品種改良種ではないか?ともされる。
なお、東京都小平市にある都立薬用植物園ではこの説を採用している。