『近代麻雀オリジナル』にて1989年2月号から1997年4月号まで連載された。単行本は全9巻。
あらすじ
麻雀界に突如あらわれた男・爆岡弾十郎は、自ら「爆牌」と称する、凡人には理解不能しかし強力無比な打法によって、プロ雀士の世界に殴り込みをかける。これまでのセオリーからすれば滅茶苦茶な爆岡にプロたちは当初反発していたが、不敗の実績を積み重ね続けるその存在はいつしか高い壁となって立ち塞がることとなった。
それはひょんなことからまだ麻雀界で無名だった頃の爆岡と知り合い、彼の強さに惹かれプロになった鉄壁保にとっても同様である。凡人・鉄壁は天才・爆岡に勝てるのか?――当初不可能と見えた爆岡が使う謎の「爆牌」攻略を、鉄壁は着実に進めてゆく……。
概要
それまでは「ぎゅわんぶらあ自己中心派」などギャグ色の強い麻雀漫画を得意としていた片山が、緻密な闘牌描写と王道のストーリーテリングを本格的に導入し、現在でも片山の最高傑作と推す声が多い。また、4人同時に展開していく立体的なプロ雀士の闘牌シーンを描いた(それまでは一対一しか描かれていない麻雀漫画ばかりで、四人同時は得点や順位の計算、流れなどを含め、隅々まで麻雀という競技を把握していないと実現不可能。それどころか本作では抜け番の心理描写も書いているため、五人同時の勝負模様を描き切っている)という点でも高く評価されている。また、闘牌シーンは玄人はだしの実力を持つ片山まさゆき自身や友人の馬場裕一プロらが実際に麻雀を打ちながら描いていたという。
連載終了から20年以上は経過しているが、この作品に影響を受けたプロ雀士や麻雀漫画も多い(たとえば麻雀界を代表する強豪、多井隆晴はこの作品に多大なる影響を受けたと公言しており、一番好きな漫画作品だとツイートしている)という、麻雀漫画界の金字塔的作品である。
ただしごく初期はかつてのギャグ漫画の要素を色濃く残しており、作者本人もあとがきで「見切り発車」と記している(実際にどこまでが初期の構想か詳細は不明であるが、作品の核となる「爆牌」のロジックですら連載しながら考えたものとのこと)。
つまり初期の爆岡を主人公とし鉄壁ら雀荘の仲間たちとどたばたを繰り広げるギャグ路線の話から、中期以降の鉄壁が主人公となり彼含むプロ雀士たちがいかに不敗の王者・爆岡を攻略するのか?という緻密な闘牌に支えられたストーリー路線へと、一種の路線転換が作中で見て取れるのである。
また主人公にしてラスボスである爆岡の性格づけも、初期の口数が多く傲慢なイケイケキャラから、中盤以降の口数が少なく傲岸不遜ながら底の知れないキャラへと転換が起きている(一応、作中でも迫り来るライバル達にプレッシャーを感じている描写があり、その辺の事情が性格が変わったようにみえる要因だと捉えられなくもない)。
因みに2018年に実写映画化されている。
登場人物
爆岡弾十郎(ばくおか だんじゅうろう)
本編の主人公兼物語後半のボス的存在の爆弾ヘアーの青年で、最初は自由気ままな性格だったが、後にプレッシャーを感じ生来の慎重派に変わっていく。麻雀に流れ(運要素)などないと言い切るほどのデジタル派だが、「爆牌」という相手の当たり牌にピントを合わせる秘技(ちゃんとロジックは存在している)を武器に、王者に君臨する。
鉄壁保(てっぺき たもつ)
頭身が低いパーマの青年。片山作品だとこのポジションのキャラは大抵、「スーパーヅガン」の豊臣のような損な役回りのキャラが多いのだが、今作に限っては主役級の活躍をする。「爆守備」といわれるほど手堅い打ち手である一方、流れはコントロールできるという持論(色の支配)を掲げ、爆岡に挑んでいく。
九蓮宝燈美(ちゅーれんぽとみ)
劇中の紅一点で本作のヒロイン。名前の由来は役満の「九蓮宝燈」から。また、当時としては珍しい女流雀士であり、自分らしさを出すため「爆テンパネ」という、無駄なテンパネを使ったりしていた。しかし、後に爆岡や鉄壁を引き出すためのヒロイン役となる(本人の心は鉄壁寄りなのだが)。
当大介(あたり だいすけ)
セオリーなど度外視、とにかくツキの良さだけで上がりまくる、ある意味プロ麻雀界に風穴を開けた男。とにかく役満を上がることに掛けては長けており、しかも、ただ場を荒らすだけではない、特別な魅力を秘めていた。
茶柱立樹(ちゃばしら たつき)
セオリーを重視する慎重派、それでいながらじわりと相手を捕捉していく強豪プロの一人。最終戦の卓を囲った一人。
八崎慎吾(やつざき しんご)
「リードは守るものではない、広げるものだ」という理論に則った完全攻撃、ツッパリ型のプロ雀士。元々は脇役だったが、後になれば最終戦の卓を囲むほどの人気キャラとなる。作者曰く「助演男優賞」を与えたいほど気に入っていた人物らしい。