竹書房の『近代麻雀』にて2004年から2010年まで連載。最初は「単行本2、3巻程度で終える予定だった」という片山氏だが、初心者への麻雀講座というスタンスで描いた同作品は回を重ねるごとに人気が出て、連載期間は5年7ヶ月間に及び単行本の巻数も15巻、全135話と氏の作品の中で最も多い。片山氏は最終巻15巻の後書きで「代表作と位置付けている漫画」と評している。
当時、裾野が広がりつつあった女流麻雀プロの世界にもスポットを当てている。
作品解説
あらすじ
プロ雀士になりわずか3年で麻雀界最高のタイトルである『風王位』を獲得し天才雀士と周囲を驚かせた波溜晴(なみだめはる)。しかし麻雀に没頭しすぎた結果、意気揚々と家に帰った彼が妻から受け取ったものは祝福ではなく、記入済みの離婚届であった。
麻雀に熱中するあまり周りが見えなくなっていたことをショックとともに自覚した彼は、直後にタイトルを返上して麻雀界から引退してしまう。
しかし、そこで麻雀の基本のキの字すらわからない「ミーコ」こと丘葉未唯子(おかばみいこ)に出会い、麻雀を教える中で、再び麻雀界に戻ることを決意する。日本最大のプロ団体(作品中での設定)であるJMPこと日本麻雀プロフェッショナルは最強プロである我鷹愁(がたかしゅう)が事実上の支配者で、波溜は復帰にあたり最下位リーグからやり直すという屈辱的な条件を飲まされただけでなく、以降も我鷹の様々な迫害や嫌がらせに遭う。
そんな中でもミーコは持ち前の明るさを生かして健気に日々麻雀を教わり、波溜もまたミーコの成長を心の支えにしながらタイトル獲得を目指していく。
前述のように連載期間が5年7ヶ月間だが、作中でも波溜とミーコの出会いから最終回・第135話まで5年以上経過(風王位返上から7年)しているという設定である。
特色
ストーリー漫画ではあるが、作中にプロである波溜がミーコに教える形で初級、中級者向けの麻雀講座が盛り込まれているのが特色であり、作者曰く「理論的な麻雀指南書を誰も書かないから、それならば自分が描こうという思いで創った作品」でもある。
本作の後に描かれた『満潮!ツモクラテス』とは世界観を共有しており、本作のキャラクターが多数登場する。
登場人物
該当記事のあるキャラクターの詳細はそちらの記事を参照。
丘葉未唯子(おかばみいこ)
本作のヒロインにして主人公。両側にハネた前髪が特徴で愛称はミーコ。楽天的でお調子者だが、物語を通して大きく成長する。本作の大半は、彼女が波溜から教わる形で話が進む。
波溜晴(なみだめはる)
本作のもう一人の主人公。男。プロ入り3年で最高位のタイトル、『風王位』を獲得した天才だが、一度は引退したことにより再びゼロからミーコと麻雀界の頂点を目指す。
我鷹愁(がたかしゅう)
波溜の最強のライバルにして、作中最大のプロ団体『JMP』こと日本麻雀プロフェッショナルを牛耳る実質的な支配者(名ばかりの代表の枕木や理事達も年齢は我鷹より上なのに呼び捨てで喧嘩口調で命令される状態)。かなり粗暴な性格で口癖は「…殺すぞ」。
ミーコと波溜に度々妨害を行う。
馬杉寧香(うますぎねいか)
波溜、我鷹も認める女流プロでは最強の雀士。元・アイドル。あらゆる手筋に精通しているのみならず、アイドルとして挫折した経験から夢を見ず現実に徹する「打ち回しのリアリスト」として恐れられている。
今井恭子(いまいきょうこ)
ミーコの先輩に当たる女流プロ。ショートヘアで、唇は厚め。元は成績優秀の優等生だったが、友人を色眼鏡で見る両親に嫌気が差し、家を飛び出る。その際生活費を稼ぐために雀荘でバイトしたことが縁で、プロを目指す。プロ試験では筆記試験で満点を獲り、更に面食いな我鷹の一存によってプロに合格する。
優等生らしい手堅い、悪く言えば押し引きに淡白な麻雀であったが、後に後手を引いても回しつつ攻めるような粘り強さを身に付けるようになり、馬杉を破って悲願のタイトルを獲得する。
波溜、ミーコとはプライベートでも仲が良い。地味に本作第一話で女流プロとして初登場したキャラでもある。
反田猟子(はんだりょうこ)
ミーコの後輩に当たるプロ雀士。元々は波溜を「メンター」と呼んで慕っていたが、ミーコのプロ引退騒動以降は一転して敵側に回った。その名の通り攻撃的な性格で、それが祟って一時は周囲から孤立しかけた。貪欲に高めを狙っていく打ち回しをし、宝生曰く業の深い打ち手。しかし何度もタイトル戦に絡んでおり、ポテンシャルは高い。
後半で女流プロを忌み嫌う俳優・存在館有人との対戦で勝利し、性根の悪さは変わらなかったものの、ミーコ含む周囲と和解。一緒に遊ぶまでの仲に回復した。
宝生れいら(ほうしょうれいら)
女流プロの姉御肌。我鷹とは近しげにしているが、馬杉に夢中な我鷹からはそこまで腕を評価されていない。実力は中堅でタイトル無冠だが、アナログvsデジタルのマッチでは優勝して貫禄を見せた。自分の店を構えている。
柚木りさ(ゆずきりさ)
ミーコと同年代のプロ雀士で、企画対局やリーグ戦問わず登場頻度が高い。作中でタイトル戦決勝には進出できていないが、実力はそれなりにあるようだ。
若菜まりな(わかなまりな)
ミーコと同期のプロ雀士。弱気な上に実力は芳しくなく、リーグ戦を陥落して引退したことも。その後、彼氏と噂される男性雀士の茂葉入(もばいる)の説得によりプロ試験を受け直して復帰した。柚木同様登場頻度は高い。
鈴鳴未里(すずなりみり)
声優と二足草鞋の女流プロ。小柄な体格で、ポニーテールをしている。声優としてはそこそこ売れており、コアなファンが付いている。麻雀も嗜むファンの助言に従い先手必勝の棒テン即リーを身上とし、見た目とは裏腹に勝ち気な雀風。
反田には本業一本でないことや、重要な場面で負かされたことの逆恨みから目をつけられており、彼女が周囲と和解してからもイビられている。
しかしどんなに辛い目にあっても「オーディションで落ちるのは当たり前」と笑う、前向きな良い子である。
ミーコとは女流雀士アイドルユニット『満面摸(マンメンモー)』で組んだことがある。ミーコの対局とライブが被った時は、彼女を対局に送り出して1人欠けた状態でライブを頑張りきった。
更科香月(さらしなかづき)
若手の実力派の女流プロ。ウェーブヘアーで、少し面長。速い仕掛けと駆け引きを武器とする攻撃型の打ち回しが持ち味で、タイトル戦決勝にも複数回登場しているが、最強の馬杉から逃げ回っていることへの負い目を感じている。
犬吠埼春菜(いぬぼうざきはるな)
我鷹やスポンサーの全面支援により「東風少女」のキャッチコピーで売り出された若手女流プロ。三つ編みで落ち着いた格好をしている。本作の女流では珍しく、鳴きを中心とした速攻を得意とする。
顔が犬っぽい、彼女を応援するスポンサーの社長が出しゃばるなどの要素が一見ネタキャラっぽいが、自分のことを公然と批判したはずの出島のことを理解し擁護するなど、意外と理性的で思慮深い面を持つ。
出島美結(でじまみゆ)
若手の女流プロ。オンライン麻雀ソフトで全国1位を獲る実力者。ハンドル名は「デジタルミューズ」。ベレー帽にウェーブした長髪で、目は常に隠れている。
その名の通りデジタル麻雀の信奉者であり、その強さ故に麻雀プロに平然と食ってかかるような発言をするなど、コミュニケーション力に欠ける部分が嫌われがちである。アナログ派vsデジタル派の企画対局でもエースとして解説・対局ともに存在感を見せた。
一見クールだが、アナログ派の強さに素直に驚いたり、挑発に弱かったりと意外と熱くなる一面も。
蒼尻つぼみ(あおじりつぼみ)
「ミーコに憧れてプロになった」と公言する、駆け出しの女流プロ。ミーコの一番弟子となる。雀力の低さの割に自己評価は高い。
偶然が重なって早々にタイトル戦決勝に進出するものの、馬杉封じ込め戦略を理解できない上に初歩的なミスを連発。馬杉に簡単に優勝を許した上に自分はちゃっかり2位につけ、更科とミーコをかなり苛立たせた。
存在館有人(そんざいかんありと)
配牌運は無いが卓越した雀力でカバーする、芸能人随一の麻雀実力者。ルックスだけ良くて弱い女流雀士たちの、場を無意味に掻き乱すような打ち回し(優勝の目がないのに、無意味に攻めて脇に放銃するなど)に何度も優勝のチャンスを潰されてきたため、女流雀士をひどく忌み嫌っている。
『女流プロ撲滅対局』と称した、男性芸能人vs女流雀士の大会を主催した。
五条豊(ごじょうゆたか)
B級のプロ雀士。場の空気を読めない、歯に衣着せぬ発言をする大胆な性格。波溜の理論にも真っ向から反論し、彼を「俺の理論は時代に取り残されてるのか?」と迷わせたことも。
ミーコを「子猫ちゃん」と呼ぶほど気に入っており、一度引退届を出したミーコを女流プロの世界に戻す際にはタダ働き覚悟で波溜に加勢し、見事目的を達成した。
しかしそれ以降は一気に出番が無くなり、『満潮!ツモクラテス』では噛ませ犬化するなど、少々扱いが残念なキャラとなってしまっている。
枕木(まくらぎ)
JMPの表の代表。政治的には我鷹の操り人形のような存在だが、面倒見はよく茶目っ気もある。