概要
1930年代に活躍した米国のファンタジー作家ロバート・E・ハワード氏の代表作『英雄コナン』シリーズの登場人物で、主人公コナンが生涯最初に心底から惚れ込んだ女性。
直接登場するのは中編小説｢黒い海岸の女王｣一編だけだが、彼女の死後長らくコナンが海に関わる仕事を避ける、彼女と組んで暴れ回っていた頃の被害者遺族&主君との確執が生涯に渡って続く等、その後の人生に大きな影響を及ぼしている。
名前の元ネタはフェニキアの風と雨の神｢バアル｣を女性風に訛らせたもので、シェム系と言う人種名からフェニキア人をイメージして創作されたと思われる。
人物
｢アスガルン王の末裔｣を自称する白人系のシェム人種の美女で、海賊船｢雌虎｣の船長として多数の黒人兵を統率している。
若い女性ながらも｢剥きだした死の牙の中を覗き込んだ事も数知れず｣と自称し、強烈なカリスマ、作戦立案能力、指揮統率力を兼ね備え、古代の遺跡に関する知識も豊富と卓越した指揮官で、コナンも彼女の作戦には従順に従っていた。
後年、彼女の死のショックから立ち直ったコナンが別の女海賊ヴァレリアと組んだ際には何方がリーダーシップを執るかで最終的に喧嘩別れをしているので、ベーリトのカリスマと統率力が並外れたものであったことをうかがわせる。
コナンの世界観自体が人命が軽い傾向にあり、主人公コナンも割合気軽に殺人を犯すのだが、その世界観でもベーリトの勇猛さと冷酷さは際立っており、シェム系の人間の類に漏れず金銀財宝に貪欲な事も有り商船や村落を巧みな指揮で襲撃して殺戮と略奪を繰り返して来た。
その反面、愛した男に対しては情熱的な愛情を向け、絶対に裏切らない一面も有する。
容姿・衣装
漆黒の長い巻き毛と瞳、象牙色の肌、見事な美乳、そして雌豹を想起させる柔軟で鍛えられた肢体を有する絶世の美女。
瞳に宿る強烈な光は当時のコナンをして｢見た事もない｣との感想を抱かせた。
衣装は黄金の装身具と宝剣の他は幅広の絹の腰布とサンダルだけと言う、素っ裸一歩手前の恰好をしており、勿論おっぱい丸出し。この格好のままで日常生活から戦闘指揮までこなす
コナンが自身のパートナーとなる約束をした際には、求愛と称してストリップを披露している。
屈強な黒人種の男の中で絶世の美女が素っ裸に近い格好で過ごしていて大丈夫か?自分に嫉妬のベクトルが向かないか?と当のコナンも最初は心配を抱いたが、このストリップ時の配下の反応から黒人兵にとって彼女は人間ではなく女神扱いであり、絶対的な存在であると理解した。
コナンとの関係
恋人を襲った近衛兵を切り殺した友人を庇って黙秘を続けていたコナンが自身を脅して来た法官を殺してしまい、商船に乗り込んできたところから物語が始まる。
結局、コナンは｢表向きは脅迫して乗船した事にする｣と言う条件で南方の黒人達の勢力圏に向かう商船の用心棒として働く事になったのだが、目的地であった黒人の集落を殲滅し、コナンの乗る商船にまで襲い掛かったのがベーリト。
巧みな戦闘指揮で商船の乗組員を殲滅し、(この時は珍しく鎧を着込んで居た為)最後まで持ち堪えていたコナンも槍の一斉投擲で止めを刺す寸前にまで追い込むのだが、コナンの強さと気性の激しさ、野性に惚れ込み自身のパートナーとして勧誘する。
コナンもベーリトの美しさと瞳の炎の激しさに一目惚れした事も有り彼女の愛人兼戦闘隊長として働く事を決意する。
｢自分が先に死んだとしても、コナンが生きている限り死の深淵から助けに駆け付ける｣事を誓い、コナンと共に略奪と殺戮を繰り広げていたベーリトだが、古代種族である有翼人の都の遺跡を略奪した際に有翼人最後の生き残りの作戦に嵌って、コナンと分断された末に戦死してしまう。
然しながら、生前に誓ったようにコナンを絶体絶命の危地に追い詰めた有翼人の前に亡霊として現れて怯ませ、コナンの逆転の機会を作った。
前述したとおり、コナンも彼女の死後は何年も海に関わる仕事を避ける程に傷心し、彼女と組んで暴れ回っていた頃の主な被害者であるスティギア人に｢獅子アムラ｣の名で終生恨まれる事になる。
