単子葉植物ミズアオイ科ホテイアオイ属に分類される熱帯アメリカ原産の帰化植物で、池などの水面に浮かんで生育する浮遊植物。学名はEichhornia crassipes。
葉の付け根が袋状が発達して浮嚢になっており、この部分で浮力を得て水面を漂う。「ホテイアオイ(布袋葵)」の名の由来にもなっている。ただし、根を地中に下ろしたときや密生して生育しているときは、浮嚢は発達しない。日本では花に訪れる昆虫が少ないためか結実しづらく、もっぱら走出枝によって増殖する。
夏にヒヤシンスに似た薄紫色の花を咲かせる。
英名はそのまま「ウォーターヒヤシンス」と呼び、観賞用としても需要がある。
なお、花には雄蕊と雌蕊の長さが異なる三つの系統があり、日本で野生化しているのはその内の二系統である。
丈夫な水草で、水槽や金魚鉢に浮かべる草としても馴染み深い。一方で余りに丈夫かつ繁殖力が高いため、世界各地で野生化して問題となっている。ホテイアオイには水質を浄化する作用があるというが、旺盛に成長して大量の肥料分を吸収するために、結果として水が綺麗になるといった方が正しい。特に富栄養化した水域で勢いを増し、水面を埋め尽くしているのもしばしば見られる。
熱帯アメリカ原産で温暖な気候を好むため、日本の冬の寒さには耐えられない。一方で、半分枯れながらも強引に生き延びる場合があり、結果として日本でも多くの地域で定着している。
総じて水面を埋め尽くすように生育する形態から、水の流れを滞らせる、船舶が航行する際の障害になる、網に絡まるなどして漁業にも被害を与えるなど、極めて厄介な雑草である。
関連タグ
近縁種
学名はEichhornia azureaで、ホテイアオイと近縁な種類である。
南米原産でエイクホルニア・アズレアの名で鑑賞用の水草として栽培される。
沈水型と水上型で明確に形態が異なり、沈水型は太い茎から密にテープ状の葉を出す独特な姿をしている。水草として栽培されるのももっぱら沈水型である。水上型は極めてホテイアオイとよく似ている。
学名はMonochoria korsakowii。
日本を中心として東アジアの水田や溜池などの湿地に生育する一年草。
高さは30~70cm、時に1mにもなる大型の植物で、夏から秋にかけて花茎に多数の紫色の花を付ける。
水田雑草としてかつてはよく見られたが、水路の改修や農薬の使用によって現在は数が減少し、絶滅危惧種に指定されている。一方で北海道や東北では除草剤に耐性を得た系統が出現して分布を広げている。
学名はMonochoria vaginalisで、ミズアオイと同属。
アジア一帯とオーストラリア北部に分布するほか、北米やヨーロッパ南部でも野生化している。
一年草で草丈は10~40cmと小型。花茎は短く、葉鞘から直接花序が伸びているように見える。
花は青紫色で、通常の花のほか、花弁が開かずに結実する閉鎖花と呼ばれる花をつけることがある。
現在でも比較的よく見られる水田雑草で、大量の肥料を吸収してイネの成長に悪影響を与える。
ミズアオイと同様に除草剤に耐性を持つ系統が出現して広がっている。
学名はHeteranthera limosa。北米から中南米まで、新世界に広く分布する。
コナギに似た一年草で、日本では水田などの湿地で見られる。葉は細長く、心臓のように付け根が窪まないのでコナギと見分けるのは容易。葉柄から伸びた花柄の先に一つだけ花を付ける点も、コナギとは大きく異なる。
1970年代に岡山県で確認されていた他、福岡県にも定着していたが近年分布を広げつつある。
学名はHeteranthera reniformis。和名にホテイアオイと付くが、アメリカコナギと同属。アメリカコナギの仲間は形態が多彩であり、その中でもこれは浮遊性のもの。葉は円心形でホテイアオイと似ているが、根元で固着している点で異なる。花は白あるいは薄青色。オーストラリアやヨーロッパに侵入しており、水面を多い尽くすように増殖する、切れ端からでも再生できるなど、外来種として相応のポテンシャルがあると考えられており、注意を要する。
日本では1996年で静岡県で確認されて以来、熊本県で報告があったのみだったが、2012年に埼玉県で既に定着し、広がりつつあることが確認された。