概要
メンデルの法則(メンデルのほうそく)は、遺伝学を誕生させるきっかけとなった法則である。
植物学者グレゴール・ヨハン・メンデル(1822年7月20日~1884年1月6日)は、修道院の庭で豆に皺の無いえんどう豆、皺のあるえんどう豆を交配させる実験を行い、その形質の遺伝について一定の傾向があることを見いだしたとされている。
その後彼が遺した研究成果をまとめ、後世の研究者が後の知見も導入し整理したのが、メンデルの法則と呼ばれる3つの法則である。
なお既に述べたようにこれはあくまでも「傾向」であり、法則から外れる例外は多数ある(むしろ法則がぴったり当てはまる状況の方が限定的)。
メンデル自身もこのような「法則」を宣言したことはなく、例外となる事例について言及している。
しかしながら当時表面的な形質の観察に終止していた遺伝学に於いて、不可視の「因子(後の遺伝子)」を導入し多大な発展を与えたことや、業界に定着していなかった統計の手法を本格的に実践し普及のきっかけを作った彼の功績、また理解が容易く遺伝学の入門として都合が良いことなどにより、この法則は今でも理科の教科書に載っている。
ただし、メンデルの実験は、結果が余りに綺麗過ぎるので実験データの捏造・偽造の疑惑も有る。
(学部生向けのコンピュータ・プログラミング関連の講義の演習・実習で「メンデルの実験結果がデータの捏造・偽造である可能性がどれくらいかを検証するプログラムを作れ」という課題を出した日本の国立大学は実際に有る)
また、人間の場合、背の高さを決めるのに関係する遺伝子は1000以上見付かっており(しかも、単純に「背を高くする/低くする」のではなく「この場合のみ背を高く/低くする」のような複雑な働き方をするものまで有る)、このような「1つの表現型に見えるものにも実は多数の遺伝子が関わっている」ようなケースでは、メンデルの実験通りの結果が得られるとは限らない。
顕性の法則
遺伝子には同じ遺伝子座に位置し形質を奪い合う対立遺伝子が存在しており、より表れやすい方を顕性、もう一方を潜性と呼ぶ(※)。ある個体に顕性の遺伝子と潜性の遺伝子が両方とも引き継がれた場合、形質として表出するのは顕性の方であり、潜性の形質は純系の個体にしか表出しない。
なお純系の個体をホモ接合型、両方を受け継いだ個体をヘテロ接合型と呼ぶ。
分離の法則
純系の顕性個体と純系の潜性個体を交配させた場合、その子には顕性の形質のみが表れ、そして孫には顕性と潜性の形質が3:1の割合で表れる。
遺伝子に着目した場合、子の代はすべてヘテロ接合型であり、孫の代では顕性のホモ接合型、ヘテロ接合型、潜性のホモ接合型が1:2:1となっている。
独立の法則
遺伝子の分布はそれぞれに独立して完全にランダムに行われ、他の遺伝子の影響は受けない。
※……かつては「優性」「劣性」という呼び方がされていたが、形質の機能的な優劣を示すと誤解されることが多かったため修正された。「優性」「劣性」という呼び名も、英語では「dominant(支配的な)」「recessive(引っ込んだ/退いた)」であり、「顕性」「潜性」の方が、より適切な訳と言える。