概要
モラルイとは漫画『憂国のモリアーティ』の登場キャラクターであるセバスチャン・モランとルイス・ジェームズ・モリアーティのカップリングである。
モランとルイスは同じ『犯罪卿』であるモリアーティ陣営のメンバー。
犯罪卿の要である主人公・ウィリアムの実弟であるルイスと、ウィリアムの腹心である狙撃手のモランは、共にウィリアムへ並々ならぬ忠誠心を持つ。
体格差と関係性
概要の通り同じ組織に属し、志を同じくする同志(ファミリー)である。
年齢はモランの方が12歳年上だが、互いの言動からはそこまでの歳の差は感じさせない。ルイスは「モランさん」と呼び敬語で接するが、仕事をさぼろうとしたモランの肩を強く掴んで引き留めるなど、序列はさほど変わらない様子。
モランの右手は義手だが、原作中でルイスに触れるシーンは生身である左手で描かれることが多い。
モランは35歳、身長6フィート6インチ(約198センチ)体重207ポンド(約94キロ)
ルイスは23歳、身長6フィート(約183センチ)体重141ポンド(約64キロ)と
年齢差12歳、身長差約15センチ、体重差約30キロとかなりの差がある年齢差・体格差カップリングでもある。
(共に3年前時点、単位変換後の小数点以下四捨五入)
原作第一部初期(ネタバレ注意)
ここでは便宜上コミックス1~8巻を初期とする
ルイスは1話から登場しているが、モランの初登場は1巻最後の3話『橋の上の踊り子』。ここで兄・ウィリアムより「電報を頼むよ」と頼まれたルイスが「彼らを呼ぶんですね」と反応していることから『彼ら』のうち一人であるモランともこれ以前から交流があることがわかる。
※構成の竹内氏によるオマケマンガでは、作中で描かれたウィリアムの子ども時代(具体的な年齢は不明)にモランと会話するシーンの裏ネタとしてモランの背後にルイスが描かれている。
ネタではあるが、ウィリアムとモランが会話している場所がモリアーティ邸であることを踏まえると、幼少期の時点でルイスもモランと面識があった可能性は高いと考えられる。
『橋の上の踊り子』後、ダラムのモリアーティ邸に滞在し、「酒がなくなったぞルイス!」と客人のつもりで酒を要求するモランと「当家では働かない居候は人として扱わない決まり」と冷たく両断するルイスが描かれた。
これ以降大仕事のない間はルイスを手伝う=モリアーティ家の使用人の立場になったらしいモランだが、使用人の仕事をさぼる、屋敷を汚すなどの行為でたびたびルイスの怒りを買っているようである。
2巻5話『ノアティック号事件 第一幕』以降、物語の主要な舞台は首都ロンドンへと移る。この前話『伯爵子弟誘拐事件』中にダラムからロンドンへ移動したモランも、その所在をロンドンへ移した模様。話中に一か月後の表記があるため、少なくとも一か月以上をダラムでおそらくルイスと共に過ごしている。
2巻6話『ノアティック号事件 第二幕』にてロンドンのモリアーティ邸に帰宅したモランに対しルイスが「お帰りなさい」と声を掛けていることから、モランの生活のベースはロンドンモリアーティ邸にあると推測される。
このシーンでは
「モランさん お帰りなさい」
「おう」「酒くれ」
「そこにご用意してます」「市内の様子はいかがでしたか?」
と会話が続く。市内の様子を確認しに出掛けたモランが帰宅後に酒を所望するであろうことを見越していたルイスが、あらかじめ酒とグラスを用意していた模様。
3巻10話『バスカヴィル家の狩り 第一幕』ではフレッドがウィリアムと距離を感じていたということを聞き、フレッドの気持ちが少しわかると言うルイスが描かれた。この際表情は隠れているもののわずかに口角が上がっており、これを見たモランは「…あのなルイス お前はお前で自分を押し殺し過ぎなんだよ!」とやや呆れたように告げた。
兄の立てる犯罪計画からさりげなく外されていたルイスは兄を徐々に遠い存在に感じるようになっていたが、モランより
「心を隠す必要がどこにある?」「言いたい事ははっきり伝えた方が良い」
と諭され、心動かされた様子で「そう…ですね…」と返事をした。
その後仕事へ向かうモランは「んじゃ後でな!」と別れの挨拶をしており、ウィリアムへ談判したルイスが計画に参加することを見越していたようだ。
続く3巻11話『バスカヴィル家の狩り 第二幕』では計画に参加し作戦遂行を第一に考えるルイスと、子どもを救いたいフレッドが言い争うシーンで、それぞれの頭を手で押さえつけるという雑だが親しげな仕草で仲裁するモランが描かれた。
「俺とルイスが付いてりゃ何とかなる よな?」とルイスに促し、ルイスも「……仕方ありませんね」と応じていることから、モランと(ほぼ実戦未投入のはずの)ルイスは互いの実力をよく知っている様子。
その後モランは素直に従うルイスに向かい「さっきはあんなにフレッドにキツかったのに感心だな」と褒めるような言葉を口にしている。またフレッドについて「俺たちの中で唯一ウィリアムに似ているところがある」とも語っており、それに対しルイスが「分かっています」と応じている。この会話は、モランとルイスは互いに似ている部分がある(と、思っている)とも取れる。
またモランはルイスの性格を鑑みてか単独行動を取る際「無茶すんなよ」と釘を刺している。(ちなみにルイスは「無茶くらいします これは兄さんの命令ですから」と返答した)
『バスカヴィル家の狩り』全体を通し、年下組の兄貴分としてのモランと、兄以外には無表情気味で物静かなルイスの内心が描かれている。
以降作戦に参加できるようになったからか、やや表情豊かになったルイスが描かれるようになる。
7巻24話『モリアーティ家の使用人たち』では週の半分をウィリアムと共にダラムで過ごすルイスから、「モランさんが直ぐに汚してしまうので困っていて…」と名指しで屋敷を汚す犯人としてモランが批判された。
その後「ミケランジェロのダビデか俺かだろ!!!」と自身の裸体について自信満々に披露したモランだが、ジェームズ・ボンドから「試してみるかい」と迫られた(?)際には全裸のままでルイスの背後に逃げ込みルイスの肩を掴んで盾にした。
同日には簡単なお遣いのような任務をさぼろうとしたモランの肩をルイスがガッと掴むシーンもあり、互いに気安い関係であることが窺える。
原作第一部中期(ネタバレ注意)
ここでは便宜上コミックス9~14巻を中期とする
モリアーティプランが進み、ウィリアムによる計画の変更とそれに伴うルイスとモランの考え方の違い、対立、別離が描かれた。
共にウィリアムへ強い忠誠心を抱くふたりではあるが、ウィリアムが自分一人が罪を被って死ぬというふうに計画を変更した際、
・ルイスは兄に生きて欲しい、もしくは一緒に死にたいと考え
・モランはウィリアムが望むままにさせてやりたいと考えている。
このため、計画の変更に強い抵抗感をあらわにしたルイスに対し、モランは
「ルイス」「ウィリアムの計画・命令が絶対だ それ以上話を蒸し返すんじゃねぇ」
とやや冷酷ともとれる言葉で遮った。
その後、ルイスと共に現れたフレッドから、ウィリアムの計画を崩さずにウィリアムを救いたいと告げられたモランは、これに対し「本気で言ってんのか?」「ルイスはともかく」と威嚇気味に言う。
モランの反応に驚くフレッドとは対照的にルイスの表情はこの会話中冷静そのものであり、フレッドと違いモランの説得が不可能であると最初から理解していたようであった。(自分に共感してくれるのはフレッドしかいないと思っていた、とも語っている)
結局ルイスは計画の幕引きをモランと共に見守った。
この際ルイスは自身の胸の内をモランに語っており、その中で
「生きていても意味がないと思っていた」「僕自身が僕自身に価値なんて無いと思っていた」と述懐している。
またウィリアムだけが自分の存在を肯定していてくれたとも吐露しており、それを聞いたモランは意味深な沈黙を浮かべている。
この直後ウィリアムの(おそらく)合図により、モランはウィリアムとシャーロックのいるタワーブリッジを狙撃、オイル缶を打ち抜き爆発を起こしたことでウィリアムはテムズ川へ落ちた。(シャーロックにより一度は助けられかけたが、結局その手を振り払う形で落下する)
モランの持ち場にルイスが現れた際の会話から、ルイスはモランが狙撃を担うことを知っており、さらにモランと共に兄たちの行く末を見届けるとあらかじめ告げていたようである。
ウィリアムとシャーロックがテムズ川に落ち、行方不明になってから三か月後、ルイスは幽閉された長兄アルバートの後任としてMI6の長『M』となった。
この際、遺された仲間たちの中で唯一モランのみがあの日から行方知れずであることが語られた。
原作第一部後期(ネタバレ注意)
ここでは便宜上コミックス15~19巻を後期とする
いわゆる『三年後』
当初は『主人の弟』『兄の腹心』といった関係で、比較的気安い同志であった様子のふたりだが、モリアーティプランの終幕に際し結果的に道を違った。
その後、双方の考え方の違いにより対立することとなる。
『M』として仲間たちを束ねる立場となったルイスは、とある事件において獲物である男を何者かから狙撃されてしまう。狙撃されたという報告の段階で予想していたようだが、特殊な銃と弾丸が使われたことから、ルイスはこの狙撃手は三年もの間行方知れずとなっている「セバスチャン・モランだ」と断言する。
ウィリアムの死に囚われウィリアムそのものとなり、悪人たちを一方的に裁いているであろうモランについてルイスは「モランさんを止めなければ」と表面上は静かに語っている。
その後ルイスは仲間と共にモランを説得するための罠を張り、単独モランを待ち受け、両者は戦闘となった。
この戦闘の際、モランは持っていた銃(リボルバー)に銃剣を装着している。読み手により見解の分かれるシーンではあるだろうが、基本的に至近距離の戦闘においては銃よりナイフの方が実用的である。(戦闘開始時点でルイスとモランの距離は21フィートを切っていると思われる)手を抜くためではなくルイスを本気で排除するため、もしくは銃声によりルイスの背後に匿われているであろうターゲットを取り逃がすことを危惧して銃剣をつけたと考えるのが(モランとルイス双方の表情を鑑みても)自然である。
ただ、戦闘中にターゲットを狙った銃の射線にルイスが飛び込んできた際には蹴りで撃退しており、モランにルイスを殺す覚悟まではないことを示唆している。
この戦闘は義手のメンテナンス不足等からモランの戦闘力が全盛期より半減していたということもあり、ルイスが食い止めシャーロックが捕縛するという形で決着がついた。
モランは戦闘中のルイスからの必死の説得を契機、生存していたウィリアムからの伝言を決定打として再びMI6に所属することとなる。
この際ルイスからは「これで一生分の休暇は終わりですよ」とやや怒り口調で言われている。
いまだ原作で明確に描かれてはいないものの、復帰後のモランの立場はおそらくルイスの部下であろうと推定されるが、現在のところ「モランさん」呼びと敬語は続行中。
ルイスはモラン以外の部下に対しては(師でもある最年長のジャック・レンフィールドに対しても)呼び捨て、命令口調で接するようになっているため、今後の変化も予想される。
小説版のコミカライズ
原作漫画の作者である三好氏により、小説版を原作としてコミカライズ。
現在本誌にて連載中。
ルイスの手記から過去を振り返るという流れで、ルイスの『お気に入り』の事件の記録が描かれる。
一話目はモランがカードのイカサマを暴かれ窮地に立たされる話。
小説版
JUMP j BOOKSより3冊の小説版が発行されている。
原作のノベライズではなくオリジナルエピソードからなる。
原作初期のエピソードが多いこともあってか、作中においてモランはやや道化的でお調子者の面が際立って描かれており、ルイスは冷静にツッコミを入れる役割にあることが多い。
酒に酔ったルイスがモランの隣で眠る、ふたりが共闘するなどのシーンも描かれている。
ミュージカル(円盤)
多少の改変やエピソードの取捨選択はあるものの概ね原作に沿って作られている。
Op.2ではモランとルイスのデュエット、ふたりで任務に赴くシーンがある。
Op.3の日替わりではモランが脱いだ外套を当たり前のように預かろうとするルイス、モランに詰め寄る際ナイフを落とし、モランを震撼させるルイス等さまざまなふたりを見ることができる。
「皆さん。モランさんにも出来る事はたくさんありますよ たとえば たとえば…いっぱい食べる」
ストレートプレイ(舞台円盤)
原作にはない要素として、
・ボンドが女性に投げキスをするのを見たモランが、ルイスに向かって投げキスをする。(ただしルイスはそれに気付いていない)
・モランがルイスの顎に指を掛け自分の方に顔を向かせる。(顎クイ)
などのシーンがある。
「ルイス、もっと融通をきかせなさい」
アニメ
原作と比べ、モランを駅まで迎えに行った際に微笑んでいるなど、初期からルイスの表情や言動がやや柔和。
橋落ちシーンでモランによる狙撃がなく、ウィリアムは自ら身を投げる。
その後ルイスは新設されたMI6の長に任命される。
モランが出奔したかは不明だが、マイクロフトのセリフより、生死不明で行方をくらましているわけではないと考えられる。