概要
一般的に車掌車に採用される2軸車はボギー車と比べると様々な理由で高速化が難しい車両である。
1959年から運行を開始したコンテナ専用貨物列車「たから号」は最高速度85km/hの列車で、これには2段リンク式のヨ5000が充てられたが、これより高速な貨物列車には、対応できる車掌車がないため、車体の一端に車掌室を据え付けた緩急車が使用されてた。
しかしながら、例えばコキフ10000が不足した際にはやむなく同じ走行性能のレムフ10000を充てたりといった場合に、他の低速な列車と違って制約が多く、これを解消するために広汎に使える高速走行が可能な車掌車が開発されることとなった。
川崎車輛と汽車製造で夫々1両づつ、合計2両(9000,9001)が製造された。
構造
高速走行を狙って新規開発された走行装置が採用された。
これは、ミンデンドイツ式と同様に軸箱の支持を軸箱の左右側部に緊結された板バネで行うもので、軸バネは軸箱真上に1本、軸箱の両側部に案内筒が置かれた。また、国鉄の車掌車としては(おそらく)唯一コロ軸受が採用された。
ブレーキには応荷重装置も電磁弁も使用されていないものの、10000系貨車用のCLE方式のブレーキに必要なジャンパ栓と元空気ダメ管の引き通しは設置されている。
車体は従来車と大きな違いはないものの、車内は運転停車が少ない高速貨物列車であるためかトイレが設置され、その反面で途中の増解結の作業が少ない(=車掌の仕事が減る)と見積もられたため、執務用の机や椅子などが削減されている。
車体は登場時は黒で、後にコキ10000と同様青15号に塗られた。
試験
製造後、何度か試運転に供されたものの、思うようにはいかなかったようである。
このうち、ヨ9000号は改良の結果110km/h運転が可能と結論付けられたものの、その後量産されなかったため、残念ながら結果は推して知るべしである。
- ヨ9000号は台車を2度変更している。いずれも旋回機能がある一軸台車で、前後それぞれの台車はZ型のリンクで結合され、片方の台車が旋回すると逆側の台車を旋回させる操向台車である。改造は多度津工場。
- TR903:軸箱の両側部にコイルばねがあるウイングバネ式で、摺動部がウイングバネの更に外側にある変則的なペデスタル式。蛇行道が激しく再改造された。
- TR903A:381系電車に似た、高さの違う2枚の板バネで軸箱を支持する国鉄独自のタイプで、原理はアルストムリンク式と同様。ウイングバネ式と同じく軸箱両側にバネがあるが、取り付け高さはそれぞれで異なる。
ヨ9001は試験運転が終了すると、最高速度65km/h以下の指定を受けて車体に黄色の帯が巻かれ、九州島内の石炭輸送列車を中心に使用された。
貨物列車への車掌乗務が廃止されるとともに除籍され、このうちヨ9001が福岡県の『源じいの森』で保存されている。