概要
貨車ではあるが、貨物を載せるのではなく、貨物列車の車掌が乗って、非常時の際の対処に備えていた。というのは、古い貨車にはブレーキがなく、機関車のブレーキだけでは心許ない貨物列車のブレーキを補助するためであり、また、連結器が故障して列車が切り離されてしまった場合に、停止させたり後から来る別の列車が衝突しないように連絡したりするためでもある。
前述の通り貨物ではなく人を乗せるものであるため、軸バネは柔らかいものが用いられる。
貨物も積載するものは「緩急車(記号:フ)」と言ったが、こちらは多少なりとも貨物を積むのが目的の1つであるため、純粋に車掌車の車に比べ硬いバネを用いており、乗り心地は良くない(ただし10000系高速貨車に関しては100km/hでの運転を行うべく空気バネ台車であったが、やはり貨車ゆえに乗り心地はよくなかったらしい)。
国鉄式記号では「ヨ」が割り当てられている(満鉄ではカブースに由来する「カ」が割り当てられていた)。
役割上、列車最後尾に連結される。ただし運転区間の関係であちこち折返しがある場合だと、機関車のすぐ後ろにも予め連結されていたケースもある。
――のだが、機関車のブレーキ能力の向上、貨物列車の貫通ブレーキの整備、無線装置の搭載などにより、貨物列車への連結は日本では廃止、外国でも大幅に減少している。
ドイツ語圏(旧西ドイツなど)では蒸気機関車の時代に(第二次大戦後)、貨物用蒸気機関車の炭水車(炭庫と給水口の境目付近)に車掌室を設けた「カビネンテンダ」があった。すでに自動ブレーキが完備されており、車掌の職責からブレーキ手業務が事実上外れた状態であったためである。勿論、電気機関車などでは使っていない反対側の運転台がこの小部屋の代わりをすることになる。
勿論後部標識は必須なので、反射板なり電池式のランプなり所定のものが最後尾の車両に掛けてある。
現在では甲種輸送列車(一応これも貨物列車だが)や大物車を使用した貨物列車など、荷物の状態監視が必要な列車に併結されていたり、保存車両の為に必要な機器を外部提供するためのプラットフォーム(例えば直流600V給電前提で製造された保存車両(ED42)を直流1500V送電下で動態保存するために、降圧する抵抗器を載せるなど)として使われたりする。
旅客会社へ継承されたり私鉄へ譲渡されたりした車両の中には、展望車の代用であったり(JR北海道、JR東日本、長良川鉄道)、非電化区間に電車編成が乗り入れるための電源車兼ブレーキ読み替え指令車(JR九州)、ATSを載せる(東武鉄道のSL大樹)など、多彩な使われ方をしたものも存在する。
主な形式
国鉄・JR
私鉄
東武鉄道ヨ101・ヨ201
秩父鉄道ヨ10
関連イラスト
関連タグ
貨車 貨物列車 車掌 緩急車(乗客・貨物の取扱もするブレーキ搭載車)
カブース(北米の車掌車。編成監視のために上部や側面が突き出している物もある)