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甲種輸送

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こうしゅゆそう

鉄道車両を貨物列車として機関車の牽引で輸送すること。新車の輸送などで用いられる。

概要

鉄道車両の輸送方法のひとつ。

正式名称は『甲種鉄道車両輸送』で、略して『甲種輸送』と呼ばれる。

鉄道車両を、JR貨物臨海鉄道など貨物鉄道事業者の機関車の牽引(=貨物列車)で輸送する方法である。

以下の時に用いられる。

①車両メーカーで完成した新車を、国内の鉄道事業者へ発送するため、その鉄道会社線への連絡線がある駅や、車両基地最寄りの貨物駅へ輸送する場合。修理や改造などで車両メーカーへ戻す場合もある。(例:日立製作所川崎車両の新車輸送。)

②車両メーカーで完成した新車を、海外の鉄道事業者へ発送するため、輸出する港の最寄り貨物駅まで、輸送する場合。(例:日本車輌の台湾向け新車輸送。)

③退役した車両を、別の鉄道事業者へ譲渡するため、別の鉄道会社線を利用して輸送する場合。(例:東京メトロ03系長野電鉄へ譲渡輸送。)

④退役した車両を、海外の鉄道事業者へ譲渡するため、輸出する港の最寄り貨物駅まで、別の鉄道会社線を利用して輸送する場合。(例:JR東日本205系インドネシアへ輸出するため、新潟港まで輸送。)

⑤路線が繋がっていない会社線の車両を、JR線などの鉄道会社線を経由して輸送する場合。(例:伊豆箱根鉄道大雄山線の車両を検査のため、JR線を経由して駿豆線まで輸送)

⑥別の鉄道会社へ車両を貸し出す時に、JR線などの鉄道会社線を経由して輸送する場合。(伊豆急行2100系をJR北海道に貸出すため、JR線を経由して輸送)

⑦別の鉄道会社線を経由する返却回送(後述)

⑧私有貨車の返却回送(後述)

⑨博物館やイベントなどへ他社の車両を鉄道を使って運搬する場合(後述)

①の例

左:日立製作所製相鉄新車輸送、右:総合車両製作所製静鉄新車輸送

③の例

左:西武2000系の近江鉄道譲渡、右:西武10000系の富山地方鉄道譲渡

⑥の場合

伊豆急行THE_ROYAL_EXPRESSJR北海道へ貸し出すための輸送

定義

運搬される車両が、他の貨車などに乗せられず、自車の車輪でそのまま機関車に牽引される方式。

基本的にJRの在来線などの狭軌(1,067mm)の鉄道を利用して運搬されるため、線路幅(軌間)が異なる鉄道会社の車両は、『仮台車』と呼ばれる狭軌の車輪を履かせて輸送する。(その場合、本来の台車はトラックなどで輸送する。)

前述の通り、車両の輸送であるため、輸送される車両はあくまで『貨物』であり、鉄道会社に受け渡す前(車両メーカーの所有物)の場合が多い。

このため、『貨物列車』に分類される列車である。

なお、車体のみを貨車に搭載して輸送する方法を「乙種輸送」という。(路面電車の車両などでかつて用いられていた。)

似ているが違うもの

自社の車両を自社の機関車で牽引し、輸送することは甲種輸送ではない。

これらは『配給輸送』などと呼ばれる。

総合車両製作所新津事業所で製造されたJR東日本の新型車両を、JR東日本所属の機関車(EF64形、EF81形など)を使い、JR東日本の車両基地へ輸送するケース。E235系等が該当。

②退役したJR東日本の車両を、長野総合車両センターや秋田総合車両センターなどへJR東日本の機関車で廃車回送するケース。

③検査が必要な車両を、車両工場まで自社の機関車で輸送するケース。

特殊な事例

  • 東武鉄道東上線伊勢崎線間の車両移動の際に秩父鉄道を介して行うが、その際は電車【秩父鉄道のATSを搭載した車両】が電車を牽引する珍しい組み合わせで行われている。
  • JR貨物機関車貨車を、車両メーカーから車両基地まで、JR貨物の機関車で牽引して輸送されるものは甲種輸送。(前述の通り、まだJR貨物に受け渡す前なため。受け渡した後の車両は、回送列車扱いとなる。)
  • 私有貨車による片荷の輸送品目(例えば石油)の帰りは、空車の貨車そのものが貨物となる甲種輸送である。
  • トワイライトエクスプレスの最終列車に使用した車両など、整備新幹線建設に伴う平行在来線第三セクター化により、一部区間で回送運転が出来なくなった車両の回送に、甲種輸送が用いられる場合がある。
  • 京都鉄道博物館近江鉄道の車両を展示する(2024年)、JR東日本大宮工場にJR九州885系を展示する(2000年)など、保安装置や電化方式の違いなどにより、展示車両が展示場所まで自走出来ない場合、甲種輸送を用いて展示車両を運ぶ場合がある。

新幹線の甲種輸送

E3系E6系などのいわゆる『ミニ新幹線車両』などは、甲種輸送で山形や秋田の車両基地へ輸送された実績がある。

線路幅が違うため、仮台車を使用し、全周幌は未装着の状態で輸送された。また、連結器も機関車と連結出来るもの(自動連結器)に交換された。

平成初期に行われた400系E3系試作車などは、連結器を交換せず、前後で連結器が異なる特殊な貨車(シム)を機関車と新幹線車両の間にを連結し、編成単位ではなくぶつ切り(中間車のみの輸送や中間車同士との間に先頭車が組み込まれるなど)状態で輸送された

(ちなみに、秋田新幹線向けE3系は甲種輸送中に、在来線のホームに車体が接触するトラブルが発生したことがある。)

なお、E8系は全て海上輸送(船)されており、甲種輸送の実績はない。

かつては、日本車両で製造された東海道・山陽新幹線で使用するフル企画の新幹線車両を、同工場から飯田線東海道本線経由で浜松工場に向けて輸送していた。

この際、大型な新幹線車両と在来線のホームなどが接触しないように、かさ上げされた特殊な仮台車と、かさ上げされた車両の連結器に対応する特殊な貨車(シム)を使用していた。

ただし100系の2階建て車両については在来線経由での甲種輸送ができないため、トレーラー輸送となった。

この日本車両からの新幹線車両の輸送は当初は日中に行われていたが、後年は終電以降の深夜での輸送となり、2004年に舞阪駅のホームがバリアフリー対応工事でかさ上げされて以降はトレーラーによる道路輸送に変更された。

近年の甲種輸送

基本的に甲種輸送のダイヤは非公開だが、SNSの普及により、以前と比べると簡単に甲種輸送の情報が手に入るようになった。

普段は走らない区間を新型車両が走行するため、当然鉄道ファンの注目を集め、駅や沿線には多くの現物客が集まる。

これを逆手に取り、新型車両をPRするヘッドマークやラッピングをしたり、車両の最後部に自社のマスコットキャラクターのぬいぐるみを置くなどのサプライズが行われることもある。

また、ごく稀に牽引する機関車に鉄道ファンに人気がある車両を指定する鉄道会社や、お披露目イベントを盛り上げるために、先頭部やロゴマークをマスキングで隠して輸送されるケースもある。

主な車両メーカーと甲種輸送始発駅

下松駅日立製作所で製造された車両

徳庵駅近畿車輛で製造された車両

兵庫駅川崎車両で製造された車両

豊川駅日本車輌で製造された車両

逗子駅総合車両製作所横浜事業所で製造された車両(※金沢文庫駅より搬出)

新津駅…総合車両製作所新津事業所で製造された車両

黒山駅新潟トランシスで製造された車両(※旧藤寄駅より搬入)

関連タグ

JR貨物 貨物列車 貨物 機関車

甲種回送(誤った呼ばれかた)

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