概要
メキシコの伝承に伝わる白いドレスを身に纏った女性の亡霊。「嘆き悲しむ女の幽霊」の別名を持つ。
その名はスペイン語で“泣く女”で意味しており、ラ・ジョローナ、ウェイラー、あるいは“裸の女”という意味のシグアナーバという名で呼ばれる事もある。
昔、子供を亡くしてしまい、川辺で泣きながら子供を探してさ迷い歩いているとされ、その泣き声を聞いた者には不幸が訪れ、最悪の場合は死んでしまうとされる。
時にはその泣き声だけが聞こえる事もあり、真夜中に路地や森、海岸に出没して啜り泣きながら後ろを振り返る事を繰り返すともいわれるほか、時には出会った人に自分の息子を知らないかと尋ねる事もあれば、男を誘き寄せて夜の営みを行った挙句の果てに、食い殺してしまうという説も存在する。
また子供が彼女に出会うと、自身の子供と勘違いし、溺死させようとするといわれており、もしも彼女の泣き叫ぶ声が聞こえたらすぐに川と反対側に逃げなければならないとされる。
一見すると美しい女性の姿をしているが、後頭部に穴が開いており、よく観察すれば目の中には灰が溜まっているので、それで見分ける事が可能とされる。
また一説によれば後頭部の穴に火の付いたタバコを押し込めば正体を現して逃げていくともされている。
なお、彼女の誕生経緯には様々なバージョンが伝わるが、よく知られるものでは次のような物が有る。
とある村で暮していた貧しいながらも幸せに暮らしていたマリアという名の女性が、ある日御曹司のランチェロという名の男性に一目惚れされ、交際の末に結婚した。
幸せな日々が続くかと思われたが、彼女に男の子と女の子の双子を出産してから運命は狂い始める。
子供が生まれて以降、夫のランチェロは次第に実家に戻る事が多くなり、ある日を境に家に帰ってくることは無かった。
それでもマリアは子供たちと仲睦まじく暮らしていたが、それから数年後、ある日マリアが川辺を散歩していると見覚えのある馬車を見かけた。
その馬車にかつての夫と若い女の2人が乗車していたのを目撃し、激しい憎悪と嫉妬に怒り狂い、思わず愛しいはすの2人の我が子を川へと投げ込んでしまう。
ふと我に返り、溺死した我が子を見て自身が仕出かした事の重大さに気付いたマリアは、激しい後悔と罪悪感から自身も川に身を投げ自殺するが、その魂は天に召される事なく、永遠に泣きながら子供を探してその川辺を彷徨い歩くようになったという。
またこんな言い伝えもある。
かつて母親からスペイン人とは絶体に結婚してはいけないと強く誡められていた先住民の娘が、白人=スペイン人と恋仲となり、密かに子供を授かるも、その白人が故郷に戻る事となり、娘を捨ててスペインへと戻ってしまった。
残された娘は嘆き悲しみ、かつて母親から言われた言いつけも手伝って、実家に帰るにも帰れない彼女は、子供を川に投げ捨て殺してしまうが、その時に子供の上げた「お母さぁ~ん」という泣き叫ぶ声が何時までも耳に残り、強い罪悪感から精神を病んだ彼女は自ら命を絶ち、「お母さぁ~ん」と泣き叫ぶ幽霊となり、現世を彷徨う様になったという。
余談
彼女を題材にした『ラ・ヨローナ~泣く女~』という題名のホラー映画が2019年に公開された。