概要
上海アリス幻樂団の楽曲の1つで、「蓮台野夜行(れんだいのやこう) 〜 Ghostly Field Club」トラック1に収録。
ZUN氏のコメント
不気味な曲から、徐々に勇ましい曲へと、そういったイメージで書いた曲。真夜中の墓場に肝試しに行くイメージなんですよね。ただその肝試しは只の肝試しではない。冥界との交流を本気で考える者の肝試しなんです。言うなればイタコのように……。
この曲を聴くと、勇ましい割には可愛らしいサビが印象的で、墓石が無い墓場で踊っている不思議な少女を幻覚する。そう考えると、イントロの幽霊音(勝手に命名)も可愛く聞こえてくる。
ヒュードロドロで有名な幽霊音ですが、私のイメージではこんな感じですね。幽霊の音は頭の中に直截響く感じ。
『東方文花帖』の「幻想の音覚」より。
曲名解説
デンデラ野
岩手県の土地で柳田國男著「遠野物語拾遺 266-268」に地名が出ている。別名をデンデェラ野。
所在は岩手県遠野郷で、嘗てこの土地は齢六十を超えた老人を口減らしの為に追い遣られた姥捨て山の伝説の有る土地であった。似た様な伝説を持つ土地として、山形県の「じゃがらもがら」がある。
尤も、デンデラ野に追い遣られた老人はそのまま野垂れ死ぬのではなくこの地に借小屋を作り、日中は里の実家で農作業を手伝い、報酬として食糧を余生を過ごした。その名残として、現在でも遠野市近辺には仕事に行く事を「ハカダチ(墓を発つ)」、仕事を終えて帰宅する事を「ハカアガリ(墓から上がる)」と言う風習が残っている。
つまり、デンデラ野に送られた時点で老人達は生きていても死人=墓に入った者と同じ扱いであり、そうした意味で言えばデンデラ野は墓場と言う事に他ならない。実質的には集落に隣接した老人の終の棲家でも、その土地は死人の住む異界と位置付けられていたのである。
地元において、人家から数百メートルも離れていない高台にデンデラ野が存在しているのがそれを物語っている。
尚、現在はこのデンデラ野跡には仮小屋が再現されており、観光地として訪れる人が後を絶たない。
因みに遠野物語には青笹村や土淵村のデンデラ野の記述が有り、前者では夜更けに何者が歌を歌いながらこの家の前を通った時、近い内に誰かが死ぬと伝えられている。
逝く
「死ぬ」事の意。
ジャケットで秘封倶楽部の2人がデンデラ野を歩いている事から、「行く」のダブルミーニングだろう。上記のデンデラ野を通ると誰かが死ぬという話と関わっているのは言うまでも無い。