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業績録(オクタビヤヌス)

あうぐすとぅすのぎょうせきろく

初代ローマ皇帝アウグストゥスが遺言にて作成を指示した自身の業績をまとめた文章

「初代ローマ皇帝アウグストゥス自身が編集し、自身の霊廟に書き記させた碑文。アウグストゥスの現存する唯一の肉声的文章である。


この文章はラテン語で青銅版2枚に刻印されている。生前からアウグストゥス(オクタウィアヌス)は自身の霊廟の前に設置することを希望していたという(スエトニウス『ローマ皇帝伝』「アウグストゥス伝」101)。アウグストゥス没年のAD14年に次代のローマ皇帝ティベリウスにより製作されたとされている。


イタリアローマに現存する「アウグストゥス廟」の前からは青銅版のオリジナル(2枚)はすでに消失したがこれを写した青銅柱が古代より各地に作られ、このうちの「アンキュラ碑文」から16世紀以降テクストが転写され発表されていた。「アンキュラ碑文」のテクストも完全なものではなかったが、その後それを補う形で「アポロニア碑文」「アンティオキア碑文」が発見され、ほぼ全内容が復元された。


碑文は前文と本文35章と付記4章からなり、「元老院から自分(アウグストゥス)が受けた称号」「国家や市民に対してなされた自身からの支出」「全軍司令官としての征服活動」「共和国(ローマ帝国)における自身の地位についての記述」に四分することができる。


記述内容に関してはアウグストゥスが自身の事績について己が口で語っており貴重かつ重要な証言ではあるのだが、嘘は語っていないものの自身にとって不都合となるようなことは語られていない。例えば独裁官カエサル死後の内乱は複雑な展開をたどった末にアウグストゥスが最終的な勝者となるのだが、『業績録』の記述のみからその正確な推移を読み取ることは不可能である。


全文邦訳は

『西洋法制史料選I古代編』(創文社、1981年、pp103-128)

国原吉之助スエトニウス『ローマ皇帝伝』(岩波文庫、1986年)付録「神君アウグストゥスの業績録」(pp206-225)

部分邦訳は

『西洋古代資料集』(東京大学出版会、1987年、pp180-182)


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