概要
埼玉県に住んでいる夫婦6人姉妹の8人大家族の竹下家が、北の大地でもある北海道に移住し、再び埼玉に戻るまでの9年間の生活を描いたドキュメンタリーである。
都会での生活に息苦しさを感じた父親が、当時"都会から田舎へ移り住んで自然の中で生活する“という山村留学ブームに乗じて北海道の浜頓別町に家族全員で移住を決意。だが、そこで待ち受けていた重い現実と自然の脅威によって、家族は窮地に追い詰められていく。
また一家の大黒柱である父親のくだらないプライドや意地、さらに夫婦揃って計画性のない行動が無関係の子どもたちを振り回し、家庭が壊れていく姿も世間からの注目を集めた。
内容
前編
北海道の浜頓別町に移住した竹下家は、町から無料で提供された住居で生活を始める。山村留学は無料で住居に住む条件として3年以内に一戸建てを建てるシステムであり、その間に建築費用の2000万円という貯蓄を強いられるシビアなものだった
当初は自然の中で楽しく生活できると思っていた竹下家だったが現実はそう甘くない。何より過疎化が原因で働き口が見つからず、ようやく見つけた職は正社員ではなく短期雇用だった。おまけに浜頓別町はオホーツク海に面し、冬になればー20°にまで低下する極寒の地。やむなく移動用の車や暖房ヒーター、さらには娯楽用(外出できず遊べないため)のテレビやパソコン、CDコンボ等を購入する羽目になり、あっという間に貯金は底をついてしまう。
そのうえ食費に至っては、本州からの輸送費がかさみ通常の2〜3割り増しと、更なる困窮を極めていく。
何とか地元での生活にも慣れ、移住から3年が経過したころ父親は産業廃棄物処理会社の現場監督、母親はその事務員として共に正社員として働いていた。子供たちは長女・次女が中学生へと成長。しかし家計は相変わらず火の車が続く。子供たちの成長に伴い、養育費がかさむことで全く貯金ができない状態が続いた。
気が付けば町との約束の日が迫り、それまでに一戸建てを建てなければ今住んでいる家から追い出されてしまう。この時点で竹下家の貯金は建築費用の2000万円には程遠く、父親は期間延長を役場に直訴する。しかし役場からは、3年以内が絶対条件であり例外は一切認めないという返事が帰ってきた。山村留学の目的はボランティアや慈善事業ではない。あくまで過疎化に苦しむ地元の活性化に起因する町への協力である。厳守できなければ隣村か賃貸物件への移住を迫られるのだ。
困り果てた竹下家は、唯一懇意にしていた地主に住宅ローンの保証人になれないかと相談を持ち掛けた。地主は、浜頓別町の活性化に繋がると信じて承諾する。
こうして念願の一戸建てを建てることができた竹下家だが、この行動が彼らを更に苦しめることになる。実はこの頃から父親は、経営方針などで勤務する会社と対立、たびたびトラブルを起こし完全に居場所を失っていた。当時の月収は夫婦合わせて手取り36万円、そのうちの半分が家と車のローンに消え、実質18万円で家族8人が生活しなければならなかった。この時点で、父親の頭には離職もよぎっていたが、辞めてしまえば収入減は確実となり家族に苦労するため我慢せざるを得なかった。
やがて、やり場のない憤りとストレスを家族へ向けるようになり、昔のような家族の姿が失われていく。
我慢の限界を越えた父親は妻とともに辞表提出し、東京へ出稼ぎに行くと決意する。だがこの行動に地主は大激怒しもっと現実を見ろと叱責。
すると妻がある衝撃的事実を地主に告白する。
竹下家は埼玉で生活していたマンションの家賃が払えず実は追い出されていた。そのため次の移住先を模索するなか浜頓別町の山村留学の話を目にし、0円住宅に移り住んだのだ。
つまり山村留学という口実は単なる建前。夜逃げ同然に移住してきたというのが実情である。
真実を知った地主は、「手に入れたマイホームを守りたいなら逃げないで闘え」と激励する。これに夫婦は再奮起し、辞表を撤回されたことで改めて働くこととなった。
それから4年が経過し、長女・次女は共に就職して一人暮らしを始めていた。
だがこのころには浜頓別町の過疎化が更に進み、父親の仕事が激減。そのうえ父親は再び会社上層部とトラブルを起こし、またしても夫婦揃って辞表を提出。今度ばかりは首を縦に振らず、そのまま退職してしまう。
父親は独立していた長女・次女を連れ戻し、家族全員で埼玉に戻り仕事をすると決意する。それに対し高校へ進学直後の三女たちは困惑するものの、父親から決定事項だと強制されやむなく従わざるを得なかった。
地主は以前のように怒る気になれず、むしろ過疎化が進んでいる現状に鑑み、いずれ仕事が無くなることを見越していた。そのため埼玉へ戻ることを認め、必ずローンを支払い戻ってくることを約束し当面の間は彼らの家を地主が管理することとなった。
8人家族を乗せた車は北海道を後にし埼玉に向かって走り去った。
後編
関連タグ
ビックダディ…竹下家と同じく大家族を描いたドキュメンタリー番組。ただし、こちらの父親は親としての責任感を抱く堅実な人間である。