狼の口~ヴォルフスムント~
気鋭の作家:久慈光久が「Fellows!」→「ハルタ」にて連載していた作品。
ハプスブルク家に支配され、圧政をしかれた13世紀末のスイスを舞台にした反攻の物語である。
全編にわたって容赦の無い残酷描写や鬱々とした人の暗黒面が描かれているが、それらをも上回る人間の闘志と、自由を求める飽くなき戦いを描ききった快作である。
全8巻。
2023年から復刻版が刊行されている。
ストーリー
現在のスイスに相当するウーリ、シュヴァイツ、ウンターヴァルデンからなる森林同盟三邦は、アルプス山脈にある交易の要所:ザンクト・ゴットハルト峠の恩恵を得ていた。
しかし、峠の利権を狙うオーストリア公ハプスブルク家によって同盟三邦は占領されてしまい、三邦の民衆を内部に閉じ込める難攻不落の要塞関所「狼の口(ヴォルフスムント)」が睨みをきかせる圧政が敷かれてしまった。
しかし、三邦内部でのハプスブルク家からの叛乱独立の気勢は日増しに高まっていた。
何とか独立を勝ち取るため、三邦が結成した盟約者同盟は「狼の口」を突破しようとあの手この手で密行しようとした。
だが、関所の非情なる番人:ヴォルフラムは情け容赦無く密行者を発見・処刑してゆく・・・。
登場人物
ヴォルフラム
ハプスブルク家に仕えている「狼の口」の代官。
薄笑いを浮かべた優男だが、密行者に対しては苛烈な制裁を加える冷酷非情の番人である。
代官として辣腕を振るい、情け容赦のない取り調べや処刑を行うことから悪魔のように恐れられている。
グレーテ
「狼の口」の近所で宿屋を切り盛りしている美人の女将。密行者や盟約者同盟の送り出す闘士達に宿を貸す支援者である。
物語前半部での盟約者同盟側の主人公であったが・・・・。
ヴァルター
物語後半での盟約者同盟側の主人公。三邦の英雄ヴィルヘルム・テルの息子であり、父から受け継いだ高度な登山技術の持ち主。その技を活かして「狼の口」によって分断された同盟の橋渡しを勤め上げ、盟約者同盟の中心人物の一人に成長してゆく。
しかし、ヴォルフラムの追撃によって家族を次々と失う悲劇に見舞われることになった。
ヒルデ
”シュヴァイツァの切り裂きヒルデ”と恐れられる女闘士。土地の有力者であった夫をハプスブルクとの抗争で失い、復讐鬼となった女傑である。
作戦の指揮を取るヴァルターとともに戦うことが多い。
レオポルド
オーストリア公フリードリヒの弟にしてスイスの実質的支配者。ヴォルフラムの上司であり、森林三邦に苛烈な圧政を敷いている。為政者・指揮官としては有能だが、性格は冷酷非情であり、自らに逆らう者には情け容赦が無い。