概要
上橋菜穂子のファンタジー小説『獣の奏者』及びそれを元にしたアニメ『獣の奏者エリン』に登場するに登場する架空の生物。
神々が天界から真王に遣わした獣にして聖なる獣であるとされており、決して人に馴れず、また馴らしてはいけないとされている。
外見
オオカミのような精悍な顔、巨大な翼、爪の生えた二本の大きな脚を持ち、大空を飛翔することができる。
体毛は白銀で、作者曰く「もふもふ」である。
生態
食性は肉食だが、作中では「カザルムに予算が回ってこなかった時期、餌に芋を混ぜてかさましした」という記述があることから、ある程度は植物性の餌も食べることができると思われる。
この世で唯一闘蛇を喰らうことが出来る獣として知られており、大公の闘蛇軍をも従える真王の権威の象徴として崇められている。但し、逆に幼獣が闘蛇に襲われる場合もある。
闘蛇以外の餌もあるはずであるが、作中での言及はない。
繁殖期を迎えると胸元の体毛が真紅(アニメでは全身がピンク)になり、天を舞いながら交合する。
「ロン、ロン、ロン…」と竪琴のような音色で鳴くほか、幼獣は赤ん坊のような「エェ~」という声、成獣はうなり声を発することがある。
また、「探求編」以降では、飛行中に超音波を出していると思しき描写もあり、コウモリやイルカのようなエコーロケーションが使えると思われる。
飼育
大公の闘蛇軍をも従える真王の権威の象徴として、飼育がおこなわれている。
王都近郊にあるラザル王獣保護場、傷や病気を持った王獣を死ぬまで世話する場所としてカザルム王獣保護場があり、この二つで飼育されている。
飼育下での餌は主にヤギ肉。カザルムなどの貧乏な場所では芋を混ぜてかさまししたこともあった模様。
人工繁殖が許されていないため、死んだ王獣の代替や新しく増やす王獣は、幼獣の頃に王獣捕獲者と呼ばれる一族によって捕らえられ真王に献上される。
王獣は頭がよく、山奥に生息するため、王獣捕獲者は頭と体力がよくなければ務まらない仕事だという。
王獣規範
王獣の飼育には「王獣規範」と呼ばれる法が定められており、餌から寝藁に至るまで厳しく規定されている。
特滋水や音無し笛の使用が義務付けられており、王獣の人工繁殖や飛行を抑制する意図があると思われる。
人の保護下にある王獣は王獣規範に則って飼育されており、野生のものに比べて毛色がくすんでいる。
また、飛行能力も失われている。
この一部能力の喪失については、次のように解釈できる。
- 毛色がくすむ
- 特滋水は生物の生殖能力に大きく影響を及ぼす(探求編での闘蛇の解剖結果より)ため、王獣などに対しても不妊化の効能があると思われる。
- 王獣の繁殖では、体毛の色が重要な意味を持つため、繁殖能力を失うとともに、繁殖に必要な毛の輝きが無くなったと思われる。
- 飛行能力の喪失
- 王獣も他の動物と同じように、生まれてすぐは飛べず、親などから教えられて飛ぶことを覚えると思われる。
- 飼育されている王獣の場合、親から飛行などを教わることがないまま捕獲され、その後は飛行する王獣のいない環境で育つため、飛行することを教わらないまま成獣になるからだと思われる。
- 王獣は飛翔しながら交合する。飛翔能力の喪失は不妊化の一環である可能性もある。
関連イラスト
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