余談
キルト
- スコットランドの伝統的な衣装であるキルトはノーパンで着用して「スポーラン」と呼ばれるポーチを体の前に配して不意に捲れないようにする形態である。
- 近代で軍服として使用された頃でもパンツは未支給で段差があるところに行くと見えてしまうので苦心したという兵士のエピソードが残されている。
「和服の女性(または戦前の女性)はノーパン」というデマ
- 腰巻はスカートのように筒状であるのでパンツと異なるから確かにノーパンとも言えるが「下着を身に着けていなかった」という理解では全く不正確である。
- また後述のように戦前~第二次世界大戦後までは和装から洋装に切り替わっていく過渡期であるため「洋装の場合はズロース、和装は腰巻」「洋装も和装も腰巻」と個人差があったり女学生には「洋装の場合はズロース」と学校が指導する場合があり「戦前の女性下着=腰巻」という訳ではなかった。
- 腰巻自体も「都腰巻」というタイトスカートのように体にフィットするものが登場して洋装(つまりスカート)で不意に裾が捲れても見えないように進化している。
「腰巻が原因で逃げ遅れて死亡」というデマ
- 1932年に発生した、白木屋百貨店火災事故において「ズロースではなく腰巻を着けていた女性たちが、飛び降りれば助かったのに、野次馬に陰部を覗かれるのを恥らったため死亡した」という俗説がまことしやかに囁かれ、あたかも事実であるかのように語られている。
- しかし実は、そのような理由で亡くなった女性は一人もいない。
- この火災事故の死者数は14人、うち8人が女性だったが、その理由は煙に巻かれて追い詰められた挙句に転落、あるいは帯やロープ、雨樋を利用して脱出しようとしたが失敗して転落と、いずれも果敢に脱出を試みたものの、力尽きた結果である。
- そもそも、この事故は日本史上初の高層ビル火災(白木屋は当時としては珍しい8階建てだった)であり、飛び降りていたらむしろそれが原因で亡くなっていた可能性が高い。
- ただ、和装の女性店員が脱出の途中で野次馬の存在に気付いて羞恥を覚え、思わず裾を抑えた結果、ロープから手が離れてしまい転落、負傷したという事実はあった。これを受けて当時の白木屋専務が「これからはズロースを着用するよう指導する」と発言し、マスコミがこれをこぞって報道、「いざという時のために」とズロースの普及を呼び掛けた。
- その結果、女性の死者と腰巻が結びついたデマが誕生。女性の恥じらいが死亡事故に結び付くという、ある意味ロマンチシズムを感じさせる物語はウケが良いため、現在まで語り継がれる伝説となってしまったのである。
- フランスでも「パリのボン・マルシェ百貨店が第一次世界大戦頃の火災で従来の生活様式を守りパンツを穿いていない女性店員が逃げ遅れた」という都市伝説があると言われており女性の恥じらいにロマンチシズムを見出すのは万国共通の心理なのかもしれない。