概要
封建時代の日本を舞台にした作品。監督のトラヴィス・ナイトは、『クボ』の製作にあたり衣服の“生地の折り重ね”などの日本文化を徹底してリサーチするのはもちろん、熟練の日本人アーティストを招いて監修してもらう等、細部に至るまで妥協のない作品づくりをした。
ゆえに、日本文化が緻密に描かれており、いわゆる勘違い日本的な描写はない。
あらすじ
魔法の三味線と折り紙を操る片目の少年クボは、母と2人で静かに暮らしていた。
一族から命をねらわれていたクボは、ある時、邪悪な叔母たちに見つかってしまうが、母親が最後の力を振り絞って放った魔法によって助けられる。たった1人残されたクボは、母の力によって命を吹き込まれたサルとともに、母が最後に言い残した「3つの武具」を探し、自身の出自の秘密に迫る旅に出る。旅の途中で記憶を失ったクワガタの侍も仲間に加わり、一行は数々の困難を乗り越えて武具を見つけていくが……。
登場人物
クボ
三味線の音色で折り紙を自在に操ることができる独眼の少年。心に傷を負った母親と2人で村の外れに住んでいる。
村では折り紙細工を三味線で動かしてハンゾウをモデルにした劇を披露しているが、母が劇の展開を思い出せないため、村人たちに物語を最後まで見せることが出来ないでいる。
母上/サリアツ
クボの母。クボ同様、三味線で折り紙等を操る能力を持つ。
大嵐の中で赤ん坊のクボを連れて何処からかやって来たが、津波に呑まれて海底に頭を打ち付け、そのショックで後遺症が残ってしまった。
日に日に心が壊れていくような様子からクボに心配されている。
ハンゾウ(折り紙人形)
クボの能力により動く折り紙人形。モデルはクボの父ハンゾウ。
サル
もとは木彫りのサルだったが、クボの母親によって命を吹き込まれた。木彫りの時はサルおじさんと呼ばれていたのにメス。厳しい言葉を交えつつもクボの世話を焼く。
クワガタ
何者かに呪いをかけられ、今の姿になった侍。記憶を失っているが、紙細工のハンゾウを見て、自分はハンゾウに仕えていたのではと考えるように。ノリは軽いが、弓の名手。
闇の姉妹/カラスとワシ
クボを狙う姉妹。クボの母の妹達で、クボの叔母。鎖鎌使いがカラスという名で、二刀流がワシという名。
月の帝
クボの祖父。理由は不明だが、クボの目を狙っている。
反響
この映画を作るにあたって使われたストップモーションという技法は、人形を1コマずつカメラで写真撮影していくという、気の遠くなる作業を必要とする。本作は、ライカ作品の中では現時点で上映時間が最長となっているが、平均すると1週間に約3秒ほどのペースで本編の映像を撮りあげていったという。
そういった驚異的な創意工夫により滑らかな動きを実現しており、実際制作過程を知るまで3DCGアニメだと思い込む来場者が続出した。
詳しい解説はこちらの特集にて。
日本では本国公開から一年ほど後に公開され、序盤は宣伝や上映館が小規模であったが前述のように、そういった驚異的な過程で紡がれる美しい映像と日本の伝統文化や芸術を徹底分析し、わびさびや未完成の美学を取り入れたストーリーに魅入られた日本人来場者が続出し、Twitter上にてファンの手によって「#一生のお願いだからクボを見て」といったハッシュタグが作られ、多くの絶賛のコメントが寄せられるなどといったようにSNSなどにおける口コミで徐々に広められていった。
更に、このヒットはLaika側にとっても想定外であることを受け、同スタジオの日本未公開作品であった「ボックストロール(The Boxtrolls)」が日本版でブルーレイとDVDが発売され、日本上陸する運びとなった。
ファンにとってもスタジオにとっても報われる展開であった。
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