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MRE

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みーるれでぃとぅいーと

Meal, Ready-to-Eat の略語。アメリカ軍が採用している個人向けの戦闘糧食。

レーションは不味いという先入観を作った戦犯

米陸軍ネーティック兵士センター主導の下、1975年にレーションとして正式採用され、1980年代から配備されているアメリカ軍の個人用レーション

様々な環境や過酷な運用に耐える野戦食として保存性を最優先に開発された結果、優れた保存・耐久性と引き換えに食べ物として大事なもの――つまるところおいしさが欠落した代物になってしまった。

実際に1983年に行われた34日間のフィールドテストでは「総合的に可」という結果こそ残したものの、4割の残飯を出すという結果になっている。

保存性に加えて携帯性(米軍以外では兵士の個人携行を前提としていないレーションも多い)も追求して食味を二の次にした結果、“ Meal, Ready-to-Eat ”(すぐに食べられる)の略称「MRE」を皮肉った言葉遊びが大量に生まれ、

  • Mr.E (ミステリー)
  • Meals, Rarely Edible (とても食べられたものじゃない食物)
  • Meals Rejected by the Enemy (敵から拒否された食べ物)
  • Meals Rejected by Everyone (誰もが拒否した食べ物)
  • Materials Resembling Edibles (食べ物に似た何か)
  • Meals Rejected by Ethiopians (エチオピア人すら拒否した食べ物)
    • ※ 1980年代のエチオピアは100万人の死者を出す大飢饉に見舞われていた。

といった具合にさまざまな蔑称で呼ばれることになる(これらはそれら蔑称の一部)。

ちなみにこのレーション、「2週間以上の常食を控えるべき」となっている。

被験者を募集しての実験が時折行われているが、軍のみならず企業が実施する事もあり、インディペンデント・ジャーナル・レビューが独自に行った実験では1日2回の食事をすべてMREにしたところ、「1週間程度で精神的にも肉体的にも辛くなった」との事。

現在の米軍の野戦食配給ドクトリンでは、1日3食の内、1食をMRE、2食をUGR(Unitized Group Ration=グループ配給食)で構成しており、前線でも2食は温かい食事にありつけることになっている。つまり、MREは「お昼のお弁当」のようなポジションなのだ(他国ではレーション1パックで1日分ということも少なくない)。

しかしながら戦地ではドクトリン通りにいくとは限らず、前線基地などにUGRが届かないケースもあった。そうなると保存食としての側面も持つMREが連食され、評判を落とす一因となった。

余談ながらこのように酷い味と評価された初期のMREではあるが、捕虜になった敵兵や保護した難民等には好評であったとの事。理由の一つは菓子類が入っている事だと思われる。

飯のおいしさは軍の士気に直結する

世界最大規模の軍隊で採用されたMREの突出した酷さは、他の軍が運用するレーションの味、戦闘糧食全般に対するネガティブな先入観すら植え付けてしまうほどのインパクトだったものの、実際のところは味にかなり力を入れている軍隊のほうが多い。

そもそもレーションに限らず、軍隊において食事は重要な要素である。過酷な戦場における唯一と言ってもいい楽しみであり、食事の質は士気の維持に直結する。また、特に貧しい時代には、食い扶持を求めて軍隊に入る人も多く、美味い食事は兵士募集時の重要なアピールポイントであった。

1905年のロシア帝国海軍・ポチョムキン号で起こった反乱では、きっかけが「食事の肉が腐っていた」トラブルに端を発する水兵と士官の対立にあったと伝えられる。

さんざんに扱き下ろされたMREについても、現在は湾岸戦争時の教訓を元にそれなりに改善されているものの、相変わらず不味いという悪評は付いたままである。ミリメシとしてレーションのプチブームが到来し、一般人がレーションを手に入れやすくなった現在ですら不味いと言われ続けているが、これはMREが単一の製品ではなく、多くの製造メーカーがそれぞれに複数のメニューを手掛けており、ものによって当たり外れがあるためでもある。

比較的短いサイクルで改良が繰り返されているため、“同じメーカーの同じメニュー”であっても“製造時期”によって評価が変わるということもあり、「最近のものは良かったから」と油断して食べた前のロットのものが不味かった、逆に前のロットはおいしかったが最新ロットは不味いというケースもある。「どれだけ不味いのかと思ったら普通においしくて(=当たりロットを引いて)期待はずれだった」という実食者の感想も少なくない。

単純に日本人向けではない味付けが舌に合わずにまずいと感じてしまう場合もあるが、これはレーションに限らず、輸入食料品全般に言える事だろう。また、高ストレス環境下での味覚の変化を前提とした味付けのものを平時に食べれば過剰に感じてしまうのも仕方のない事である。

ベジタリアンメニューだけは擁護できないが。

余談ながら、不味い不味いと言われるイギリス料理のイメージから「MRE並みに不味いのでは」と想像される英軍のレーションだが、こちらは普通に美味しいものが殆どとの事。前線では紅茶を飲む余裕があっても調味料で味の調整は出来ないからであろうか?

メニュー

多民族・多宗教・多文化を抱える国家の軍隊とあってメニューは24種類前後(製造時期によって増減する)が用意され、クラッカー、肉や豆料理、ゼリーやケーキといったデザート、水で溶く粉末ジュースなどで構成されており、緊急脱出用の救難食、寒冷地向けの高カロリー食、ベジタリアンや宗教的な食のタブーに対応したものもある。

どのメニューにも、ティッシュやマッチ、調味料にコーヒーなどが封入された「アクセサリーパック」が必ず付属している。調味料に含まれる親指サイズの瓶タバスコなどは有名で、「これを掛ければどんなに不味いメニューも何とか食える」と信頼を寄せられている(近年ではタバスコの代わりにレッドペッパーパウダーが入っていることもある)。

また、少量の水を使って発熱する簡易ヒーター(最近のものは発熱材用の水も付属)でいつでも温かい食事が取れるようになっているが、有毒ガスが発生するという問題がある。

MREと同じコンバットレーションであるグループ向けのUGR-Eでは、ヒーターとレーションが同じパッケージに入っており、あらかじめスプーンや菓子等を取り出し、ヒーターの紐を引くだけで加熱されるジェットボックスシウマイのようなものもある。

現在、米陸軍ネイティック兵士研究開発技術センターでは、水を使用しないヒーターの開発も進められている。

既存の技術では酸化や変色、腐敗しやすい等の理由で除外されていたメニュー(サンドイッチやピザなど)が、技術開発により新たにメニューへ加えられる事例もある。

更に疲労骨折等を防ぐ為に、栄養補助のエナジーバー等も別に用意されている。

グッズとして

軍放出品として、時期によっては比較的手に入りやすいミリタリーグッズという側面もあり、専門に収集している人もいる。

基本的に放出品は消費期限切れのコレクション用だが、保存性を突き詰めただけあって食べられないこともないため、好奇心や探究心から開封・実食される例も多い(※ 健康被害が出ても自己責任)。

過去には「傷みやすい」として“廃棄”されたはずのツナヌードルが放出品として出回ってしまったケースもあり、これをきっかけに備品管理の一環としてコレクション用が販売されるようになった。

実際に食べてみたレビューサイトも多いので参考にするとよい。

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