概要
ここでは自衛隊の軍用携行食である「戦闘糧食」について解説する。
一般的な軍隊で言うコンバット・レーションと呼ばれる携帯食糧。
缶詰が主体のⅠ型と、レトルトパウチが主体のⅡ型の二種類がある。
全体がオリーブドラブに内容物を示した黒い文字だけという簡素な見た目をしている。
味付けは隊員向けに少々濃い目になっているが、一般の食品メーカーによる製造なので、味には定評がある。自衛隊の中では基本食の中の非常食に分類されている。
演習・任務中に食されることを前提としているため、一食あたり1,000kcalほどとカロリーは高め。
菓子類など嗜好品は適さないとして戦闘糧食へは入れられていないが、乾パン等の付属品は栄養の調整等もあってか例外となっている。
戦闘糧食Ⅰ型
缶詰に入れられた戦闘糧食である。通称「カンメシ」。
容器が頑丈なので、空輸したのち落下傘投下が可能で、賞味期限が長い(保存期間3年)という特色がある。
一方で、重く持ち運びにかさばるというデメリットがあるが、長所を理由として後述のⅡ型と併用されていた。
缶
缶は強度を重視してイージーオープンエンドではない為に、開缶するには缶切りが必要である。
金属板をプレスしたごく簡単な缶切りが付属しているが小さい為に使い辛く、別に缶切りを用意している隊員は多い。
現在のものは形状が改良され、主菜と副菜の缶の直径が同一となることで積み重ねをしやすくしている。また、主食と副菜の缶の形状が異なるので文字の読めない環境であっても判別しやすくなっている。
主食の缶は上側の接合部だけでなく下側のふちも塗装されない仕様に変更されている。
また、主食の缶は直径の変更はないが高さが減らされて小型化しており、主菜と副菜の缶は3ピース構造から2ピース構造にすることで軽量化されている。
メニュー
主食
主食は白飯のほか、五目飯、赤飯、しいたけ飯等の米飯である。缶には、喫食前に25分以上湯せんするよう但し書きがある。
東日本大震災を契機に赤飯が廃止された。
アッ…
主菜・副菜
主菜と副菜は味付けハンバーグ、牛肉味付け、コンビーフベジタブルなど様々。Ⅰ型の中でも最も好評だったたくあん漬は製造メーカーの倒産により一時消滅していたが、別の会社が生産を引き継ぎ復活した。
普通に売られている多くのたくあん漬は薄く切られた半月場となっているが、それらとは違い、専用に栽培された細い大根を用いて長めに輪切りにしたものが唐辛子及び昆布と共に缶に入っており、食感が少し異なる。
乾パンは袋入りだがセットとなるウインナーソーセージが缶入りの為、こちらに分類されている。乾パンが主菜扱いのようで、ウインナーソーセージが主食の缶となっている。
保存期間の内、最初の1年目は全国の補給所に、2年目は各駐屯地に備蓄され、3年目に訓練や演習などで消費されるシステムを取っている。
来歴
自衛隊創設時から存在する戦闘糧食である。
創設時から、缶は長らく銀色無塗装であったが、1980年代には国防色に塗られるようになった。
後述の戦闘糧食Ⅱ型が開発されてからも、レトルトパウチの耐久性などが課題であったためにそれぞれの短所をカバーする形で並行して使用され続けた。
しかしながら、運用方法の工夫やレトルトパウチの製造技術の進歩などによって戦闘糧食Ⅱ型でもⅠ型とほぼ同様に扱え得るとして平成28年度をもって陸上自衛隊向けの「カンメシ」の製造は打ち切られた。
戦闘糧食Ⅱ型
レトルトパウチの戦闘糧食Ⅱ型は比較的軽く、携行性にすぐれているものの、保存性や耐久面ではⅠ型にやや劣る。
通称「パック飯」と呼ばれている。
内容物・メニュー
一食分が国防色のパウチに収められており、内容は米飯食の場合は「米飯(市販のレトルトご飯に似たもの)が2パック、主菜1パックと副菜1パック」が基本である。
通常は樹脂製のスプーンないしフォークが付属し、加熱済の物を受領すれば何も準備せずに喫食できる。
バリエーションがⅠ型に比べて格段に増えており、中華丼(現在休止中)や筑前煮、カレー、ハム・ステーキ、サンマや鮭の塩焼き、鯖の生姜煮、まぐろステーキなどがある。
こちらにもたくあん漬があるが、薄切りの大根を用いたはりはり漬となっている。
一時期大型乾パンあったものの一時期のみで姿を消したが、Ⅰ型の製造打ち切りに合わせてか、乾パンは主食のソーセージがレトルトパウチに変更されてⅡ型に再び追加されている。
Ⅰ型と比べると…
体積が嵩張らない為にポケット等に入れる事もでき、重量も軽く、後処理も楽な上にご飯パックに関しては歩きながら食べる事も出来る、
缶のご飯の場合は冷え切っていると割り箸が折れる、ステンレススプーンが曲がるほどに硬くなり食べにくいが、パックの場合は薄い上に袋ごと力を加える事で小さく割る事が出来るため、味で上回る(といわれている)カンメシよりこちらを好む隊員も多いと言う。
保存期間は1年で、半年備蓄してから保存期間が過ぎる前に訓練などで消費する。
簡易加熱剤
2000年より使い捨て懐炉型と加水型の簡易加熱剤が用意されている。
使い捨て懐炉型は一食分すべてを暖める為に一つでは不足、乾いたタオルで包むなど熱を逃がさない工夫が必要と、使う際には注意が必要なものとなっている。
加水型はMREや市販品のヒートパックと同様だが、MREの加水型ヒーターと比べて高い熱を発するものとなっている。
後に加水型は更に熱量のある新型が採用され、主食パックだけでなく主菜パックも同時に暖める事が可能となった。
これらの採用により主食パックを事前に温めておく必要がなくなった。
カンボジアにおけるPKO活動の際、軍隊同士のレーション食べ比べコンテストでこのパックメシが見事1位になった。最下位はほとんどの人の想像通り、MRE。
その他
演習や夜間特別勤務等には増加食と呼ばれるものが支給されることもある。
増加食にはカロリーメイトなどの栄養補助食品やカップラーメン、ゼリー飲料、果物に加え、戦闘糧食にはないチョコレートなどの菓子が用意されている。
他にはナトリウム欠乏症を防ぐための塩分補給を目的とした梅干を固めたタブレットや、緊急時に脱出した戦闘機パイロットや艦船の乗組員向けの食糧などもある。
緊急脱出用食糧には、遭難者を励ます一文(『がんばれ!元気を出せ!救助は必ずやってくる!』)が入った説明文と数日分の食糧が入っており、隊員等からは『がんばれ食』の通称で呼ばれている。
注意点
演習の際には加熱してアルファ化しないと消化し辛いご飯のみが暖めて渡され(実際に食べる際は冷めている事が殆どだが、一日程度であれば消化には問題ない)、それ以外は常温のままが多い。
そのため、誰も食べずに持ち帰られて再度保管され、次の演習の際にまた暖められるご飯もある。何度も暖めなおされたものは中身のもち米部分の食感が酷くなっており、非常に食べづらい。
透明な主食パックとなっているII型の場合は中身がわかるので避ける事もできるが、缶のI型の場合はまず判らない為、このようなはずれご飯に当たり酷い目にあう事がある。
これらは税金によって購入された官給品であるため本来の目的以外の使用は横領に当たり、演習で出されたが未開封のものを持ち帰ったりすること、基地内での隠匿(隠さず机等に放り込んでおく程度でも禁止)、転売、譲渡、自宅への持ち帰りが禁止されている。
よって一般人は基地や駐屯地のイベントでの試食会以外では、災害時の緊急援助などでないと口にすることはない。
ただし、製造元の食品メーカーが同じものを味付けとパッケージを変え、カロリー(700~800kcal程)を抑えて一般販売していることが多い。
艦隊これくしょんの戦闘糧食
2015/08/10アップデートにて実装された消費型アイテム。
※pixivではこちらの投稿数が圧倒的に多い。
戦闘開始時にランダム発動、装備した艦娘及びその隣接する艦娘の戦意高揚効果を持つ。メニューの内訳は俵型のにぎりめし3個とたくあん3切れ(しかし、装備の種別アイコンは三角形のにぎりめし(海苔付き)となっている)。
実装当初、「「戦闘糧食」を護衛退避中に食す(運営談)」という、ほほえましいバグが見られた。退避するにも腹が減る(護衛退避した艦と護衛の駆逐艦は、疲労度が最大値になる)から、我慢できなかったのだろうか。現在は修正済。
護衛退避中の銀蠅行為を捉えた一枚。
なお、夏イベ後に追加されたマンスリー演習任務でも1個入手することができるが、消費アイテム故の使いどころの難しさもあって貧乏性の提督の装備アイテム欄を圧迫する悩みのタネでもある。2015年夏イベでは大量に手に入ったため「またおにぎりかよ!」という声が多数聞かれた。
2016年4月のアップデートで、残っていればボス戦前に任意で発動できる機能が実装された。これで「ボス戦に備えて装備させたのに使ってくれなかった」ということが防げるようになった。
ちなみに装備廃棄すると燃料が1手に入る。バイオマス燃料か何か?
2017年7月のアップデートで改修と上位兵装(こと、特別なおにぎり)への改装が可能となった。
別の戦闘糧食を1個消費するが☆+6まではネジこと改修資材を消耗しないという特徴があり、余りに余った戦闘糧食をデイリー任務でネジに変換する提督もいたとか(ちなみに、コストパフォーマンス的には戦闘糧食が1個100円、改修資材が1個70円なので、金銭的には30円分損である)。
運営は戦闘糧食の改修を「炒める」と表現している。どうやら改修に使う燃料は光熱費であるらしい…。