解説
レーション(ration)という言葉は本来は(食料品などの)配給品を示すが、一般的には軍が作戦行動中に使用する工場で作られパッキングされたコンバットレーション、戦闘糧食を指す事が多い。
なお、基地などの食堂で支給される食事(ギャリソンレーション)や厨房を持たないもしくは未稼働状態の駐屯地へ調理後に輸送されてきた食糧、調理設備を持たない大型航空機や艦船に積み込まれた食料もレーションである。
自衛隊のものの詳細は→戦闘糧食にて。
軍隊という体力勝負な職種で用いられるために、総じて一日分で3,000~4,000kcalと非常に高カロリーで、寒冷地用やサバイバル用に至っては一日分で7,000kcalを超えるものも存在している。
前線では食事は大きな楽しみであるので、栄養面や保存性だけでなく嗜好面への配慮がなされ、コーヒーや紅茶、菓子のような嗜好品が付属していることが多い。
かつてはタバコも付属していることがあった。
基本的には本格的な調理を行えない前線で使用される事が多く、後方の基地等では使われることは少ない(食堂などで一般的な料理を提供できるため)。
軍用を元にした災害支援用のものも存在している。
各国のレーション
保存性のみを追求した結果不味かったり、市販品をパッケージすら変えることなく詰め込んだだけのものであったり、量は少ないが十分な満足感を得られるメニューだったり、充実したメニューと空中からの投下に耐えられる耐久性の両立を図った結果1日分が2.5kgと大変に重かったり、朝食用のメニューにお酒が入っていたり、戒律に添った為にカロリー量が心配になるメニューであったり、妙に茶菓子類に力が入っていたり、一日用に三食に加えて間食も入っていたり、大量のコンデンスミルクが入っていたり、使い切れないくらい砂糖の袋が入っていたり、果ては携帯コンロやら歯ブラシが付いていたりと、内容にお国柄が見えてくる代物でもある。
以下は詳細。
アメリカ
- Cレーション: 第二次世界大戦開始と同時期に配布が始まった記念すべきアメリカ軍最初のレーション。6つの缶詰からなり、1日3食分で合わせて1.9kgもあった。肉と野菜や豆を混ぜたメインディッシュが3缶と、ビスケット、コーヒー、スープ等の副食が3缶。特に挽肉と野菜の缶の不味さに定評があった。
- Kレーション: 空挺部隊用に小型軽量化されたレーション。缶詰を一食一缶に減らし、残りはビスケットと嗜好品等の紙包で構成されている。軽便さゆえに一般用として広く支給されてしまい、栄養不足と食味の単調さで多くの将兵を苦しめた。
- Dレーション: 緊急時の栄養補給用として量産されたチョコバー。つまみ食いを防ぐため意図的に不味く作られており、少量のケロシンが添加されていたという説もある。また、保存性を高めた影響で非常に硬く食べづらいほか、高栄養価過ぎて短時間で一気に食べると消化不良を起こす。
- MCIレーション: ベトナム戦争の頃に用いられたCレーション、区別する為にMCIなどと呼ぶ。やはり缶詰でクラッカーとジャムやピーナッツバター、牛肉やハム・ターキーなど12種類の主食など。付属品にインスタントコーヒーや携帯コンロがあった。
- MRE: 現在のアメリカ軍が採用しているレーションである。詳細はMREの記事を参照
ロシア
- IRP: 現在のロシア軍で使用されているレーションとして、一定程度流通している。3食分で4000kcalに達し、重量も1.8kgもある。透明袋入りのクラッカー、缶詰入りのシチューや煮込み肉料理、クリームチーズ、コーヒーと紅茶、粉末ジュースなど。火力が強い固形燃料付き。最大の特徴は上記記事にもあるが大量の砂糖が添えられている事。溶けないほどお茶に入れるのだろうか?
日本
戦闘糧食の記事を参照。
関連動画
塹壕メシ、19世紀~WW1で食べられていたレーション
第二次大戦時の米軍で食べられていたレーション
明治初期~日清戦争までの日本帝国陸軍で食べられていたレーション