航空戦艦
こうくうせんかん
概要
航空戦艦とは、空母のような航空機運用能力を付加された戦艦のこと。
と、書くと万能艦のようであり、架空戦記では大人気である。
それどころか、実際に列強諸国の多くで計画されたが、以下に挙げるような問題点が解決されなかったため、実現に至ったのは日本の伊勢型戦艦の伊勢・日向の改装のみである。
問題点
伊勢型の改装
上記のように航空戦艦は問題点ばかりであるが、伊勢型の改装に当たっては、空母並みに航空機を搭載し攻撃に当たる軍艦を短期間に入手することが優先された。
このため、主砲は三分の二に減らされ、防御については目をつむり(対空火器は強化された)、搭載機の発進はカタパルトに任せて、回収は他艦や基地に任すということになった。
これで得られた2隻合わせて44機と言う搭載機数をどう見るかである。
実戦では航空機が転用されたり生産が遅れたりと員数が揃わず、航空機運用能力が発揮されることはなかった。もっとも、改装が全て無駄になったわけではなく、格納庫を物資の輸送用に転用したほか、後部の飛行甲板には機銃や12cm28装噴進砲を針山の如く装備し、重武装の護衛艦兼輸送艦として威力を発揮した。
第二次世界大戦後
戦後、航空機の発達に伴い、ヘリコプターやS/VTOL機などが実用化されたためアイオワ級戦艦の航空戦艦改装プランが検討されたが、机上プランに終始し実現することはなかった。
戦艦としての復活は結局なされなかったものの、戦後に甲板を備えたヘリコプター塔載護衛艦として「いせ」、「ひゅうが」がそれぞれ襲名されている。
航空戦艦「ミズーリ」
冷戦末期、戦艦という艦種はすでに過去の遺物となっていた。しかしそれでも『戦艦』へのロマンを諦めきれない派閥が中心になって提案されたのが、ハリアー(AV-8A)やヘリコプターを搭載する「航空戦艦化改造」だった。「攻撃機発着に使えるからいいよね?」という訳である。
これにより航空戦力にも対応し、ミズーリは再び海軍の看板役へと祭り上げられるはずだったのだが、航空戦艦の欠点は上記のとおり(=中途半端)であり、だいいちそこまで金をかけて改修するほどの事でもないとされ、結局ミズーリは最後まで戦艦であり続けたのだった。
なお、改修の際は後部の第三主砲塔を取り外し、そのスペースを飛行甲板にあてるつもりだった模様。もちろん「艦載機の収容スペースは?」とか「主砲使うときは発着できないよね?」やら「そも攻撃機使えるなら主砲いらなくね?」などと言ってはいけない。そこはロマンの問題である。
SF作品
近代SF(アニメ)作品などではガンダムなどロボットものにおける登場が有名である。
正確には航空機を運用するものではないが、ガンダムの母艦であるホワイトベースなどは作中の戦艦として十分な火砲を装備しつつ、MS運用母艦としての機能を両立していた。これはMSを航空機などに置き換えて考えると、上記の航空戦艦のコンセプトと同じものだと分かるだろう。
(ちなみにホワイトベースの作中での分類は強襲揚陸艦である。その後のTVシリーズの母艦アーガマは強襲巡洋艦、逆襲のシャアでの母艦ラー・カイラムは戦艦であるが、いずれの艦も性質としては航空戦艦のそれに近い)
SF航空戦艦は「爆風が無く火薬も要らないビーム兵器」「飛行甲板の要らない人型兵器(爆風程度ではよろめもしない超兵器でもある)」「補給用燃料を用意する必要がない半永久機関」等で前述の問題点がなくなっている。
(実質的には航空戦艦である)宇宙戦艦ヤマトも宇宙艦上攻撃機なのを良い事に飛行甲板無しで数十機の航空機を運用している(地球側の他の艦も飛行甲板を持たずに運用している。逆に敵であるガミラス側は飛行甲板を使用しているが)。