飛行甲板とは、軍艦において航空機(艦載機)が離発着(発進・発艦/着艦)するために設けられた甲板のこと、特に空母のものを指して言うことが多い。英語では"Flight deck"という。航空甲板とも言う。
空母では、陸上の飛行場でいうところの滑走路や駐機場の役目を果たさせるため、最上甲板を全長にわたるほど広くとり、艦橋や煙突など本当に必要な一部の構造物を除いて一平面になるように作っており、これが空母というフネの特徴となっている。そのため、空母のイラストは多いが、それに「飛行甲板」タグがついていることはほとんどない。
しかし、長さ2~300メートル程度では飛行機の離発着にはやはり不足するところが多く、空母自体が高速を出すことでアシストするほか、発艦補助のためのカタパルトや、着艦補助のためのアレスティングワイヤーが飛行甲板には設置されている。
面積が大きいため、初期の空母では防御が施されていなかったが、空母にとって存在意義そのものと言える飛行甲板を装甲化するのは当然の発想である。装甲化した飛行甲板を持つ空母を装甲空母と言う。
変わった飛行甲板としては、イギリスや日本の黎明期の空母では飛行甲板を二段や三段にしたものがある(→三段空母)。また、第二次大戦後の空母では、アングルドデッキと言って、艦載機の離発着方向を、艦の前後方向とはいくぶん傾けることで、「滑走路」と待機場所を分離し、運用の合理化を図っている。
空母以外の艦艇でも、水上機やヘリコプターの作業や発着を行う甲板をこう呼ぶ時がある。航空機運用能力を高めた航空巡洋艦など(利根型重巡洋艦やはるな型護衛艦ほか)では、艦体後半がこれに充てられている。